カラビナとプルージックだけで行うロープレスキュー

ロープレスキュー

ロープレスキューといえば、近年は高性能なデバイス(ID、MPD、Clutch、Maestroなど)を活用した高効率なシステムが主流です。しかし、「すべてのチームがそれらの高価な道具を持っているわけではない」「最小限の装備でもできる技術を習得しておきたい」と考える現場の声もあります。

この記事では、カラビナとプルージック(Prusik)だけでロープレスキューを完遂する方法について、現場目線で丁寧に解説します。限られた装備でもしっかりと救助活動を行うためのヒントを得たい方は、ぜひ最後までご覧ください。


【基本方針】最小装備でも「安全・確実」に行う

使用するのは以下の3つだけ:

  • 静的ロープ(11mm)
  • カラビナ(安全環付き)
  • プルージックコード(5〜7mm)

この3つで構成するロープシステムのポイントは、以下のとおりです:

  • ブレーキ装置の代わりに”スーパーモンター”ヒッチを使用
  • バックアップにプルージックを配置
  • ノットパスにはラジウムロードリリースヒッチを構築

最新ギアを使わない分、細かい知識と操作精度が要求されます。


【降下:スーパーモンターとプルージックの組み合わせ】

200kg(約450ポンド)の荷重を支えるため、標準のモンターではなく”スーパーモンター”ヒッチを構築します。

セットアップ手順:

  1. ロードディストリビューティング(荷重分散)型アンカーを構築
  2. スーパーモンターで摩擦制御装置を作成
  3. ブレーキ側にプルージックを設置し、ハンズフリー対応

この構成により、自動ロック機能のない環境でも、安全な制御が可能です。

【アンカーと降下システムのセットアップ】

アンカーは、シングルポイントの荷重分散アンカーを構築。スリング1本では足りなかったので、2本をガースヒッチで結合。

  • BLE(バックアップライフラインエンディング)には、通常のタンデムプルージックを使用。
  • メインロープ側も同じようなアンカーを使用。

【ノット通過:ラジウムロードリリースヒッチで対応】

ロープ途中にある結び目(ノット)を通過させるには、”ラジウムロードリリースヒッチ”を構築します。

手順概要:

  1. メインデバイスの前にプルージックでテンションを保持
  2. 別のカラビナで3:1構成のラジウムヒッチを作成
  3. モンターでテンションを徐々に移動させ、ノットを通過させる

ノット通過後は再びスーパーモンターを構築し、降下を再開します。


【引き上げ:カラビナだけで構築する3:1システム】

滑車を使わずにメカニカルアドバンテージ(3:1)を構築する際は、摩擦の影響に特に注意が必要です。

ポイント:

  • カラビナの摩擦率は高く、50%程度の効率しか出ません
  • 実際には3:1が理論通りに機能せず、2:1やそれ以下になることも
  • 複数人によるホールチームの協力が不可欠

カラビナ連結で5:1や7:1にすることも可能だか摩擦力が大きすぎる


【ノットパス中のSlam & Jamテクニック】

Slam & Jamは、ノット通過を迅速に行うためのテクニック。

  1. ノットの手前にプルージックでテンションを保持
  2. セカンダリープルージックをアンカーに接続
  3. 一時的に2:1へ切り替えてノットを通過

この操作中はプルージックが滑車代わりになるため、吸い込まれ防止のために”プルージックマイン”(付き添いでテンション管理)を徹底します。


【まとめ:最小装備でのロープレスキューは可能か?】

結論:可能。ただし難易度は高く、人的リソースが必要。

  • 装備が限定される状況下では、こうした技術の習得は生命線となる
  • 効率と安全を重視するなら、やはり適切な専用ギアの導入がおすすめ

カラビナとプルージックだけでも、ここまでできる。でも、もしもの時のために、両方の知識とスキルを持っておくことが、本当の意味での「現場力」と言えるでしょう。

📚 参考リンク


🎥 参考YouTube動画

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