ベランダや鉄橋など、高所で発生する首吊り事案では、地上からの接近が不可能であり、上方からのアプローチが唯一の救助手段となるケースがあります。
本記事では、実践的な救助手順と、安全確保のポイントをわかりやすく解説します。
✅ 事前準備:可能であればレスキューマットを持参
上方からの接近が可能な場合でも、要救助者が地上に落下した際のダメージを軽減するために、レスキューマットや緩衝材を事前に持参し、要救助者の真下に展開しておくと安全性が高まります。

🔍 アンカーの確保と降下準備
まず最初に行うのは、要救助者の真上にある、垂直に近い位置のアンカー確保です。
構造物の強度を確認した上で、信頼できるアンカーポイントを選定し、ロープを2本(メイン+バックアップ)垂らします。

手すり(鉄製またはアルミ製)
- ✅ 利点:位置的にちょうどよく、設置しやすい
- ⚠ 注意点:溶接部・固定部の強度確認が必須。飾りやデザイン重視のものはNG
柱・梁(鉄筋コンクリート構造)
- ✅ 利点:RC構造の梁や柱は非常に高い耐荷重
- ⚠ 注意点:コンクリート内部の鉄筋を痛めないように、耐火クッションやスリングで保護
室内ドアの蝶番部や建具フレーム
- ✅ 利点:選択肢がない場合の「仮設アンカー」
- ⚠ 注意点:基本的には人体の荷重には不向き。補助としてのみ使用
⛑ 救助者の降下と一次確保の実施
ロープを使用して、救助者が慎重に降下します。
到達後、上方から渡された安全帯やウエビングを使い、要救助者の体を一次確保します。
この一次確保に十分な荷重が移行したことを確認した上で、首吊りに使用されたロープを切断します。

👆安全帯の腰ベルト
あくまで一次確保なのでスピード重視です。早急に首からの荷重を取りましょう。
⬇ 要救助者の降下:可能ならそのまま降ろす
一次確保によって、要救助者をロープで直接降下させることが可能であれば、そのまま下降誘導を行います。
もしロワーダウンが困難な状況であれば、ピタゴールなどの簡易ハーネスや追加ロープを上方から降ろし、要救助者に装着させた上で降下させます。

🧰 アズテックを使ったピックオフ救助の応用
狭所や救助スペースに制限がある現場では、Aztekキット(アズテック)を使ったピックオフ救助が非常に有効です。
軽量かつ迅速にセットアップ可能なため、短時間での荷重移行と要救助者の引き上げが行えます。
ピックオフの際は、テンション調整と確実な確保が重要になります。
注意点と安全管理
- 構造物の強度確認:アンカーはコンクリートや梁など、安全確保可能な場所に
- 救助者自身の安全管理:2点確保、バックアップ確保を徹底する
まとめ:上からの首吊り救助は迅速・確実・安全に
ベランダや橋などからの首吊り事案は、一刻を争う救助行動が求められます。
構造物の特性や現場状況を的確に判断し、上方からの救助方法を選択・実行する力が必要です。
Aztekやピタゴールなどの器具を活用し、**「救助者自身の安全」と「要救助者の迅速確保」**を両立させた行動を心がけましょう。
※この内容は、救助技術に精通した隊員向けに書かれた実務的なガイドです。訓練や装備の選定は、所属組織の指針や技術基準に従ってください。
📝 上からの首吊り救助チェックリスト
- □ レスキューマットや緩衝材を持参したか
- □ 要救助者の真上で使用可能なアンカーを確認したか
- □ アンカーの強度(手すり・梁・柱など)を安全に評価したか
- □ ロープ2本(メイン+バックアップ)を垂下したか
- □ 救助者の降下前に装備・確保を確認したか
- □ 救助者は安全帯やウエビングで要救助者を一次確保したか
- □ 一次確保に荷重が完全に移行しているか確認したか
- □ 首吊りのロープを安全に切断したか
- □ 要救助者をそのまま降ろせるか評価したか
- □ 降下が困難な場合、ピタゴールや追加装備を活用したか
- □ 救助者自身のバックアップ確保を維持したか
- □ 構造物の損傷や破断の兆候がないか定期確認したか
- □ 連携・声かけ・通信が常に維持されていたか








