Aztekキットでノットを安全に通過させる方法|ロアリング&ホーリング編

ロープレスキュー

現場で長いロープを使用する場合、途中にノット(結び目)が入ることは珍しくありません。
たとえばロープの延長時、損傷箇所のバイパス時など、現場ではさまざまな理由でノットが現れます。

ではそのノットが、下降や引き上げの途中に差しかかったらどうするか?
その答えが「Aztek(アズテック)キットの活用」です。

ここでは、下降中(ロアリング)および引き上げ中(ホーリング)におけるノット通過方法を、安全かつ確実に行う手順として、詳しく解説します。


🔽 前半:ロアリング中のノット通過(下降中)

【1】Clutchで荷重を保持しつつ、下降を開始

  • 通常どおりClutchを使って荷重(人や資機材)を降ろします。
  • あらかじめノットが存在する場所を把握しておくと、操作に余裕が持てます。

【2】ノットがClutchの約30cm手前に到達したら停止し、Clutchをロック

  • Clutchのハンドルを「ロック位置」に固定します。
  • ノットが直接デバイスに入ってしまうと通過不可となるため、手前で必ず止めましょう。

【3】Aztekキットの設置

  • Aztekのロープグラブ(またはプルージック)を主索(メインロープ)に装着
  • Aztekの先端(カラビナ)を荷重側に接続
  • テンションを調整しながら、Aztekがしっかりテンションを保持している状態を作ります

⚠ Aztekは必要以上に伸ばさず、適度な余裕を持ってテンションをかけられる範囲で延長しましょう。


【4】荷重をClutchからAztekへ移動

  • ゆっくりテンションをかけて、Clutch側のロープが緩むのを確認
  • Clutchのハンドルをオフにして、荷重がAztek側に完全に移ったことを確認

【5】Aztekを仮止め(ドッグオフ)

  • スリップハーフヒッチを作り、続けてもう一つハーフヒッチで保持します
  • これによりAztekの負荷が安定し、両手を使って次の操作ができます

【6】Clutchから主索を外し、ノットを通過させる

  • Clutchにかかっていたロープを外し、ノットを手で通過させます
  • ロープにキンクやねじれがないことを確認しながら作業を行います

荷重の移行は“完全に移った”ことを確認してから作業することを忘れないで!
Aztekにテンションを移した後も、主索に荷重が残っていないかを必ず目視・触感で確認してください。
Clutchや他のデバイスがまだ部分的に荷重を支えていると、ノット通過中に急激な荷重移動が発生する危険があります。


【7】Clutchに再びロープをセットし、ロック

  • ノットが通過したら、Clutchにロープを再挿入して安全にロック
  • ロック後、再びClutch側にテンションを戻して荷重を移動

【8】Aztekの解除と回収

  • Aztekの仮止めを解除し、カラビナを外して回収
  • ロックも完全に解除して、下降作業を再開

🔼 後半:ホーリング中のノット通過(引き上げ中)

【1】3:1倍力システムを構築して引き上げ開始

  • 基本の3:1メカニカルアドバンテージを用意(Aztekや他のプーリーを使用)
  • ノットが途中で通過できない位置まで来ることを想定

【2】ノットが近づいたら主索をロック

  • プルージックやClutchで主索を固定し、荷重が動かないようにする

⚠️ 注意点:ノットがプーリーに接触する前に必ず停止・ロックする
・ノットが**倍力システムのプーリーに接触した状態(ブロック・トゥ・ブロック)**になると、それ以上引き上げができなくなります。
・強引に操作を続けると、ノットがプーリーに噛み込み、ロープ損傷やプーリー破損の危険があります。
ノットまで10〜20cm程度の余裕がある段階で主索をロックしてください。


【3】Aztekを最大まで延長し、必要な長さを確保

  • Aztekを使い、ノットが通過できる分のテンションと距離を作る
  • 荷重をさらにAztek側に引き、ノットが操作可能な位置にくるよう調整

ノットがAztekのロープグラブから約30〜40cm手前にある状態が、ノット通過を安全かつスムーズに行うための最適なポジションです。


【4】Aztekを仮止め(スリップハーフヒッチ×2)

  • 引いた状態を保持し、ロープを動かさずに作業できる状態にする

【5】Clutchまたはプーリーを開放してノットを通過させる

  • ノットを手動で操作し、システム内を通過させます
  • 必要に応じてAztekをもう一段階延ばして調整

【6】Aztekを保管し、ロープのたるみを調整

  • ノット通過後は、Aztekに残ったテンションを緩めて保持
  • 新たな倍力システムを組み直す前に、主索を整えます

【7】再度3:1システムを構築し、ホーリング継続

  • ノットがプーリーのすぐ後ろに来るよう再配置
  • 必要であればAztekを再利用して次の引き上げへ

この手順のポイントと応用性

使用技術活用シーン解説
Aztekによる荷重保持緊急時のテンション確保コンパクトで即応性が高い
スリップハーフヒッチ仮止め、安全確保ロープの緩み防止に効果的
Clutchのロック操作降下・固定・操作の切り替え正確なタイミングが安全確保のカギ
倍力システム(3:1)重量物の引き上げエネルギー効率の向上、負荷軽減

まとめ|Aztekはノット通過対応の最適ツール!

ノット通過は、高所作業やレスキュー活動において避けて通れない課題です。
Aztekキットは、軽量・高強度でありながら、多彩な応用が可能な信頼性の高い装備として、ロープシステムの中核を担えます。

Clutchやプルージック、仮止め操作と組み合わせることで、下降・引き上げのいずれのシチュエーションでも安全にノットを通過させることが可能です。

現場での訓練や安全マニュアルに、ぜひこの手順を取り入れてください。

参考文献・資料


参考動画

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