車両事故において、傷病者の安全な救出を行うためには正確な手順と適切な器材が必要です。ここでは、バックボードを使った救出プロセスを詳細に解説します。
1. 身体保護具(PPE)の装着
救出活動を始める前に、すべての救助隊員が適切な身体保護具を装着しているかを確認します。この装備にはヘルメット、手袋、耐切創性のある服が含まれます。これにより、隊員自身の安全を確保しつつ、救助作業を効果的に行うことができます。
2. 車内での初期対応
隊員が車内に入ると、最初に行うのは脊椎の安定化です。これは、患者の脊椎を中立の位置で保持し、二次的な怪我を防ぐための措置です。必要に応じて、気道の確保や調整を行います。これには、顎先挙上法が用いられることが一般的です。

3. 感覚、循環、運動のチェック
次に、他の隊員が患者の感覚、循環、運動の状態を確認します。これにより、患者の状態を把握し、適切な医療対応を計画する基礎情報を得ることができます。
4. ネックカラーの装着
傷病者にネックカラーを装着することで、首の安定を図ります。カラーのサイズは、患者の顎の下から肩までの長さを測定し、適切なものを選びます。カラーは患者の胸部に沿って滑らせ、背部から首の後ろに位置づけるようにします。

5. バックボードへの移動(例)
救出作業の中で最も重要な部分の一つが、患者をバックボードに移動させるプロセスです。ここでは、具体的な手順を詳しく説明します。
1.まず、後部の隊員1号が引き続き脊椎の安定化を維持します。この間に、隊員2号は患者の腰を支えるために車内に入り、準備を整えます。隊員4号はバックボードの頭部を持ち、隊員3号はボードの下部を患者の横に置きます。

2.次に、隊員1号が合図を出し、患者を車両のドア方向に一度に動かします。この時、隊員1号は患者の脊椎を中立位置に保ちながら、慎重に動かすよう指示します。隊員3号が脊椎安定化を引き継ぐ際、患者の動きが過剰にならないよう細心の注意を払います。

3.その後、隊員1号と2号が患者を持ち上げ、バックボードの上に慎重に移動させます。バックボードはあらかじめ患者の下に滑り込ませておくことで、スムーズな移動が可能です。患者がバックボードの中央に正確に配置されるように調整します。この際、患者の脊椎が常に中立位置に保たれるようにすることが重要です。

4.患者に意識があれば、手を胸元でクロスに交差してもらうよう指導する。

6. スパイダーストラップによる固定
患者をバックボードに移動した後、ストラップを使用して固定します。これは胸部から始まり、骨盤、大腿部、脚部へと進みます。最終的には、ヘッドブロックとストラップを使用して頭部を固定し、患者の安全を確保します。

7. 最終チェックと輸送準備
全ての固定が完了したら、再度患者の循環、感覚、運動を評価し、状態に変化がないかを確認します。これにより、患者を安全に病院へ輸送する準備が整います。
注意点として
このような救出活動では、患者の安全だけでなく、救助隊員の安全も極めて重要です。適切な身体保護具の使用、正確な手順の実行が求められます。また、患者の状態に応じて、対応を柔軟に変更する必要があります。
バックボードを使った救出は、車両事故において重要な役割を果たしますが、適切な訓練と知識が不可欠です。救助隊員は定期的なトレーニングを受け、最新の救出技術を身につけることが推奨されます。
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