バーチカルダーティーブリーチングの手順と指揮官が意識すべき安全対策を解説。迅速な救助を実現するためのポイントや適切なチームマネジメントを詳しく紹介します。
はじめに
災害現場におけるコンクリートの突破には、「クリーンブリーチング」と「ダーティーブリーチング」の2つの方法があります。
特にダーティーブリーチングは、時間短縮と迅速な救助が可能であるため、緊急時に頻繁に使用されます。
この記事では、縦方向のダーティーブリーチングの基本手順に加え、指揮官の視点からのチームマネジメント、安全対策について詳しく解説します。
ダーティーブリーチングとは?
特徴
✅ 大きなコンクリートの塊を小さく砕いて突破する方法
✅ クリーンブリーチングよりも時間がかからず、特殊な技術が不要
✅ 鉄筋が多く含まれている構造物でも対応可能
メリット
• 短時間で救助作業を進められる
• 厚いコンクリートでも比較的簡単に突破できる
• 特別なベベルカット(斜め切り)を必要としない
デメリット
• 大量の破片や粉塵が発生 → 視界不良・呼吸器系への影響あり
• 振動と騒音が大きい → 作業員と要救助者の負担増大
• 体力の消耗が激しい → 交代のタイミングが重要
ダーティーブリーチングの基本手順
1. 事前調査と計画
指揮官の視点:
まず、要救助者の位置、構造物の状態、安全なアプローチ方法を確認します。
事前調査を怠ると、余計な作業が発生し、救助の遅れにつながります。
• インスペクションホールを開ける
小さな穴を開けて、カメラやライトを使い内部を確認する。
• 要救助者の安全を確保
破砕作業中の振動や破片による影響を最小限にするため、可能であれば移動させる。
2. リリーフカットの実施

リリーフカットとは?
コンクリートの応力を緩和し、効率よく破砕するために事前に切れ込みを入れる作業。
• 使用工具:レスキューソー(ダイヤモンドブレード装着)
• 切れ込みの入れ方:
• X字または十字にカットを入れることで、力が分散しやすくなる。

• 刃を適切に湿らせる → “チョコレートミルク”のようなスラリー(泥状の水と粉塵)ができれば、切断がスムーズに進んでいる証拠。

✅ レスキューソーの水供給がない場合
通常、水を供給するホースを接続しますが、現場の状況によっては未設置及び破損していることもあります。
その場合、チームメンバーが適量の水を噴霧器等でスプレーして刃を湿らせることで対応可能です。

✅ 指揮官の視点
• 切断時に火花や粉塵が発生するため、適切な防護具(防塵マスク、ゴーグル)を着用させる。
• 刃の回転方向を確認し、正しく装着されているかチェックする。
3. ジャックハンマーでの破砕

リリーフカットが完了したら、ジャックハンマーを使用してコンクリートを砕いていきます。
• 使用工具:油圧式ジャックハンマー(スタンレーBR 87など)
破砕の進め方:
• インスペクションホール付近から削り始める。
• リリーフカットで作った切れ目に沿って、少しずつ破砕していく。
• 破片を取り除きながら進め、作業スペースを広げる。
✅ 指揮官の視点:作業員の交代
指揮官として、作業員の疲労を管理することが重要です。
しかし、チーム全体を丸ごと入れ替えるのではなく、“同じチーム内でポジションを交代しながら作業を続ける”ことが望ましい。
新しいチームが環境を把握するのに時間がかかると、事故のリスクが増加します。
✅ ペア作業を徹底

• 1人がジャックハンマーを操作し、もう1人がバールやスコップで破片を取り除く。
• 交代を適宜行い、疲労を分散する。
4. 鉄筋(リバースチール)の切断
コンクリートを破砕すると、中に鉄筋が入っていることが多いため、これを切断します。
• 使用工具:カットオフソー(金属切断用の回転ノコギリ)
切断時の注意点:
• 鉄筋が跳ね返らないように、クランプやバールで曲げて固定する。

• 火花が飛び散るため、防火対策を行う。
• 防護具(フェイスシールド、耐熱手袋)を着用し、安全確保を徹底する。
5. 開口部の最終調整と救助
指揮官の視点:
• 最低限「24インチ×24インチ(約60cm×60cm)」の開口部を確保する。

• 救助者が安全に出入りできる動線を確保する。
• 必要に応じて、追加の破砕や鉄筋カットを行う。
指揮官が意識すべきポイント
✅ 作業員の安全管理
• 防護具の着用を徹底(ヘルメット、ゴーグル、防塵マスク、手袋)
• 騒音対策(耳栓やイヤーマフを使用)
• 振動による疲労対策(定期的な休憩と交代)
✅ 要救助者の安全確保
• 振動や破片の影響を最小限にするための事前確認
• 粉塵対策としてマスクや湿らせた布を提供
• 心理的ケア → 作業中も要救助者に声をかけ続ける
✅ 適切なチームマネジメント
• チームを丸ごと交代せず、ポジションをローテーションする
• 状況判断のスムーズさを維持し、事故のリスクを低減
ダーティーブリーチングをやるときに大事なのは「安全第一」と「効率的なチームワーク」!指揮官としては、作業員の疲労管理、救助ルートの確保、そして要救助者の保護をしっかり意識して進めるのがポイントだね。
