ドクターヘリは、救急医療を迅速に提供するために重要な役割を果たしています。しかし、その特殊な運用方法により、利用者や周囲の人々が注意すべき点もいくつかあります。以下では、特にヘリコプターのメインローターやテールローター、ダウンウォッシュに関する注意事項を解説します。
ドクターヘリの安全注意事項
1. メインローターとテールローターに関する注意
ヘリコプターの飛行中、メインローターとテールローターは非常に高速で回転しているため、視認が難しいです。特にテールローターは機体の後方にあり、地上の頭の高さ付近で回転しているため、接近すると非常に危険です。ローターの回転中は、絶対に機体の後方に近づいてはいけません。
もし、ドクターやナースに連絡が必要な場合や物品の受け渡しを行う際は、ヘリの周囲にいる整備士に声をかけ、安全な対応を依頼してください。整備士は、周囲の安全を確認しながら適切な指示を出してくれるため、彼らのサポートを受けることが最も安全です。
2. ダウンウォッシュによる強風の影響
ヘリコプターが離着陸する際に発生する「ダウンウォッシュ」とは、ローターが作り出す強風のことです。この風は非常に強く、地面の砂や小さな物体を巻き上げて飛散させることがあります。例えば、グラウンドに置かれたブルーシートや学校のネットなどが吹き飛ばされるほどの風圧です。
そのため、ドクターヘリがランデブーポイント(指定の着陸地点)に着陸・離陸する際は、周囲にある飛散しやすい物体をあらかじめ撤去しておく必要があります。ダウンウォッシュの影響範囲は、メインローターの直径の約3倍、つまり約30メートルにも及ぶため、広範囲にわたっての対策が求められます。
ランデブーポイントでの安全管理
ドクターヘリが安全に離着陸できるようにするためには、地上支援隊が重要な役割を担っています。ランデブーポイントにおける安全管理は、飛散物の撤去、立入制限、散水など多岐にわたります。これらの対策を講じることで、ドクターヘリのスムーズな運用が可能となります。
1. 飛散物の撤去
前述のように、ダウンウォッシュによる強風で飛散物が周囲に飛び散る可能性があるため、ランデブーポイント周辺の飛散物はすべて事前に撤去しておく必要があります。これは人員や車両に損傷を与える恐れがあるため、特に注意が必要です。
2. 立入制限
ランデブーポイントは、学校や公園など、地域住民が集う場所に設定されることが多いため、住民には事前に事情を説明し、ヘリの離着陸時にはその場を離れてもらうことが必要です。また、関係者以外の立入を制限し、無関係な人々がランデブーポイントに接近しないように配慮しましょう。
3. 散水
着陸場所が乾いた砂地の場合、ヘリの離着陸時に砂が巻き上げられることがあります。これを防ぐため、事前に散水を行い、砂の飛散を抑える必要があります。目安としては、着陸予定地の約30メートル四方に散水を行います。
4. 冬季運航時の注意点
冬季には積雪がある地域では、ダウンウォッシュによって雪が巻き上げられ、視界不良や操縦困難が発生する可能性があります。これを防ぐため、積雪地域ではあらかじめ除雪や圧雪を行い、安全な着陸場所を確保しておくことが大切です。
例えば、着陸予定地の中心部分(約10メートル四方)を圧雪し、その周囲の積雪を均一に整えることで、ヘリの安全な着陸をサポートします。また、新雪が5センチ以上積もった場合は、ランデブーポイントの除雪を追加で行うことが推奨されます。
着陸場所の目印の描き方
- 中央に円を描く:
- 着陸場所の中心に、直径1メートル以上の円を描きます。
- この円は水性の赤色スプレーや、緑系の入浴剤などを使って描きます。
- 円を描くことで、着陸する場所の中心がはっきりとわかるようにします。
- 四隅をマーキングする:
- 圧雪部分や重要なエリアの識別を助けるために、着陸場所の四隅に目印をつけます。
- スプレーや他の手段を使って、四角の形で場所を明確にします。
- 時間がない場合:
- もし時間がない場合は、円を描く代わりに、中央に「+」マークを描くだけでも構いません。
- この「+」マークは中心がわかりやすくする簡易的な目印になります。
車両待機の注意事項
ドクターヘリが着陸する際、救急車やその他の車両は、着陸地点から少なくとも30メートル以上離れた場所で待機する必要があります。これは、ダウンウォッシュの影響を避けるためであり、ドアや窓も閉めておくことが推奨されます。
また、着陸後もエンジンが完全に停止するまで、何人もヘリに近づいてはいけません。整備士の指示を待ち、その合図で医療活動を開始するようにしましょう。
無線通信の要領
ドクターヘリと地上の救急隊や支援隊との連絡は、無線通信を通じて行われます。例えば、ドクターヘリがランデブーポイントに近づく際には、着陸予定時間や患者情報を無線で伝達します。
無線通信は、的確で迅速な情報交換を可能にし、現場の状況や患者の状態を確認する重要な手段です。これにより、地上と空中のチームがスムーズに連携し、迅速な対応が可能となります。
ヘリコプター手信号
種類 | 動作 | 説明 |
---|---|---|
進入 (この位置に) | 風を背にして立ち、両腕を広げ上にあげて、手のひらを機体に示す。 | |
まっすぐ前進 | 両腕を前方水平にあげ、ひじから先を垂直になるように上にまげ、手のひらを体に向け、ひじから先のみを前後に振る。 | |
後退 | 両腕は、手のひらを下に向け、体側方水平にあげ交互に上下に振る。 | |
右横進 | 左腕は、手のひらを下に向け、体側方水平にのばす。右腕は、体側方水平に上げ、手のひらを上に向け、肩から先を垂直になるように上まであげる。 | |
左横進 | 右腕は、手のひらを下に向け、体側方水平にのばす。左腕は、体側方水平に上げ、手のひらを上に向け、肩から先を垂直になるように上まであげる。 | |
右旋回 | 左腕は、手のひらを下に向け、体側おおむね45度下方にのばす。右腕は、手のひらを上に向け、前方水平にあげ、ひじから先を垂直になるように上にまげ、ひじから先のみを前後に振る。 | |
左旋回 | 右腕は、手のひらを下に向け、体側おおむね45度下方にのばす。左腕は、手のひらを上に向け、前方水平にあげ、ひじから先を垂直になるように上にまげ、ひじから先のみを前後に振る。 | |
停止 | 両腕を体側方水平にあげ、ひじから先を垂直になるように上にまげ、手のひらを機体にむけ静止させる。 | |
ホバリング (空中静止) | 両腕を体側方水平にあげ、両拳を握ったまま動かさない。 | |
上昇 | 両腕を体側方水平にあげ、手のひらを上に向け、この位置から両腕一緒に上方45度くらいまで振る。 | |
降下 | 両腕を体側方水平にあげ、手のひらを下に向け、この位置から両腕一緒に下方45度くらいまで振る。 |
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