ラダーヒンジ

ロープレスキュー

ラダーヒンジを使って上階や屋根から患者を安全に救出する方法について、詳しく説明します。この方法は、梯子車の設置が難しい建物や、火災などで避難が必要な場合に有効です。今回は、建物屋根からの救助を想定しています。

必要な装備の詳細

  1. ストークスバスケット
    患者を固定して安全に運搬するためのバスケット。耐久性が高く、安定性があるため高所からの降下にも適しています。
  2. ハーネス
    救助隊員が安全に作業を行うために装着するもので、身体を固定し、ロープなどと接続することで安全を確保します。
  3. ロープバッグ2つ
    長さの異なるロープが入っており、患者を降ろす際や固定に使用します。通常、耐荷重が十分なロープを選択します。
  4. プルジックノット2つ
    ロープ上に取り付けることで滑りを防ぐ結び目。ラダーヒンジに必要なテンションを確保する役割も持ちます。
  5. カラビナ複数
    各種装備を迅速に接続できるため、梯子やハーネス、バスケットなどの装備を確実に固定するのに使用します。
  6. ディセンダー用のエイトプレート
    ロープを滑らかにコントロールして降下するための装備で、降下速度を調整しながら安全に操作することができます。

手順

1. 準備

まず、救助隊員はハーネスを装着し、全ての装備が揃っているか確認します。ハーネスのバックルやカラビナがしっかりロックされていること、また各装備が正しく取り付けられているかをチェックすることが重要です。

次に、他の救助隊員が建物に対して梯子を垂直に立てかけます。この段階では、梯子が屋根のどの位置に達しているかを確認し、最適な段数を設定します。これは、降下時に安全かつスムーズに運搬するために不可欠です。

2. 梯子の位置決め

梯子の最適な位置は屋根の縁から3か4段下に設定します。この位置が基準となり、救助隊員がバスケットを屋根の縁から持ち上げ、降下する際の安定性が確保されます。この位置決めが不十分だと、バスケットが不安定になりやすく、救助作業が困難になります。

3. 上部の固定

次に、梯子を降ろし、プルジックノットを使用して梯子の上部をしっかりと固定します。プルジックノット2つを梯子の段に巻き付け、バスケットが滑り落ちないようにするために2つのカラビナで結び付けます。この固定は、救助中にバスケットが急に動かないようにするため、慎重に行います。

4. 装備の設置

バスケットに必要な装備を載せ、屋根へ持ち上げてから降ろす準備をします。この際、バスケットの底部にはエイトノットとバックアップの結び目を結び、全体の安全を確保します。また、各カラビナがしっかりとロックされていることも確認し、万が一の滑りや外れを防止します。

5. バスケットの持ち上げ

屋根にいる救助隊員がバスケットを持ち上げ、梯子を上げて屋根の縁を越えさせます。この作業では、救助隊員がバスケットを持ち上げる位置が重要です。屋根の縁近くでバスケットをしっかりと持ち上げることで、降下の際のバランスが取りやすくなります。

6. 屋根での固定

屋根での固定作業は、救助隊員を安全に保つためのバックアップとして行われます。屋根上で固定物にラインを結び付け、全体の安定性を確保します。固定物がない場合、別のロープを使用して他の救助隊員にバックアップとして確保しててもらいます。

7. 降下の準備

患者をバスケットにしっかりと固定します。患者が動かないようにストラップを調整し、ディセンダー用のエイトプレートを救助隊員のハーネスに取り付けます。降下準備が整ったら、地上にいる救助隊員とコミュニケーションを取り、確認を行います。

8. 降下

降下開始時には、梯子の底部が建物にしっかり設置されていることが重要です。これにより、梯子の滑りを防止し、バスケットがスムーズに降りていきます。救助者はエイトプレートを用いて降下速度を調整しながら、ゆっくりと降りていきます。

注意点と重要ポイント

梯子基底部の設置
梯子の基底部がしっかりと建物の壁に設置されていることを確認すること。これにより、梯子が滑るリスクが低減され、降下の際の安全性が向上します。
装備の確認とバックアップ
各装備がしっかりと取り付けられているか、またバックアップとして別のロープや固定物があることを確認します。これにより、万が一のトラブルに対処できる体制を整えます。
コミュニケーション
隊員同士でのコミュニケーションがスムーズであること。特に降下時には地上の隊員との連携が重要です。

実際の使用例と効果

この方法では、200ポンド(約90キログラム)の患者も効率的に降ろすことができます。練習を重ねることで、複数の患者を迅速に避難させることが可能です。アクティブシューター事件や火災現場では、時間が限られているため、このようなラダーヒンジ技術が迅速な対応に貢献します。

ラダーヒンジを利用することで、梯子が支える荷重が地面に集中するため、救助者にかかる負荷が軽減されます。このため、90kgの患者でも隊員は負担をそれほど感じず、複数の患者を安全かつ効率的に降ろすことができます。

まず、梯子の下がしっかり壁に設置されているか確認してね。これで梯子が滑らないようにして、安全に降下できるんだ。

追加の装備と準備

アンカーポイントの追加設定

屋根や高所の状況に応じて、予備のアンカーポイントを設置することを推奨します。アンカーポイントとは、ロープを固定するための強度ある固定物であり、梯子が万が一動いた場合でも安全を確保する役割を果たします。適切なアンカーポイントを設定することで、救助隊員と患者の双方が安心して降下作業を行えます。

クッションパッド

降下中に梯子や建物の角がバスケットや患者に当たらないよう、クッションパッドを使用するとより安全です。バスケット底部や梯子の各段にクッションパッドを設置することで、降下時の振動や衝撃を吸収し、患者への負担を軽減します。

救助作業の改善ポイント

効率的なコミュニケーションの確立

救助活動では、地上のサポートチームと屋根上の隊員の連携が非常に重要です。無線や手信号をあらかじめ決めておき、特に緊急時にすぐに対応できるように訓練しておくことが不可欠です。また、使用する用語や合図を簡潔に統一することで、混乱を防ぎ、迅速な対応が可能になります。

ダブルチェックの徹底

全ての装備(カラビナ、ハーネス、ロープなど)は、使用前にダブルチェックする体制を整えます。特にバックアップの装備に問題がないか、もう一人の隊員が確認することが推奨されます。これにより、装備の不備による事故のリスクを低減できます。

降下速度の調整

ディセンダー用のエイトプレートを使用している場合、降下速度が一定に保たれるように調整します。特に風が強い場所や、降下中に障害物が多い場合は速度をゆっくりとし、患者が安心して降下できるよう配慮します。速度の変化は患者にも伝わるため、必要な際は地上のサポート隊員とコミュニケーションを取りながら慎重に調整します。

注意すべき課題と対策

風の影響

強風時の救助活動では、梯子やバスケットが風に煽られて不安定になるリスクが高まります。風が強い場合、救助隊員は風向きに注意しながら、ロープを使用してバスケットを安定させる必要があります。また、降下のタイミングを見計らい、風が一時的に弱まる瞬間に降下を行うなどの工夫が重要です。

確実なバックアップの維持

降下中のトラブルに備え、バックアップ用のロープを常に確認しておきます。バックアップロープは、メインロープが破損した場合でも安全が確保されるよう配置されているため、これが確実に機能するように調整し、固定することが必須です。

参考動画

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