出産の際の手順とチェックリスト
1. 最初の準備
- 現場が安全であることを確認。
- BSI(身体保護具)の予防策を取る。
- 適切なPPE(個人防護具)を装着する。
2. 患者とのコミュニケーション
- 患者に近づき、「こんにちは、救急隊です。お名前は何ですか?」と尋ねる。
- 出産予定日と出産する子供の数を確認(例:明日出産予定で、1人)。
- 収縮の頻度と持続時間を確認(例:2分ごとに30〜60秒)。
- 破水したかどうかを確認し、色や匂いも尋ねる(例:1時間半前に破れ、透明で無臭)。
- 妊娠歴や出産歴を確認(例:3回目の妊娠で、前回の2回は経膣分娩)。
- 現在の妊娠中の合併症の有無を確認。
- 診察を受けている産科医の有無を確認。
- 既往症や妊娠前に服用していた薬、現在服用中の薬を確認。
- 出血の有無や収縮以外の腹部痛の有無を確認。
3. バイタルサインの取得
- 母親の血圧、脈拍、呼吸数、体温を測定。
4. 出産の兆候の確認
- 陣痛の頻度と持続時間を再確認。
- 「クラウニング」(赤ちゃんの頭頂部が見えること)を確認。
- 母親に排便したいかどうか尋ねる。
5. 出産準備
- OBキットを開ける。
- 母親の腰の下にパッドを敷く。
- 赤ちゃんを拭くためのタオルと毛布を用意。
- 赤ちゃんの頭にかぶせるビーニーを用意。
- 出産後の出血を抑えるためのパッドを用意。
- コードクランプ、滅菌ハサミ、バルブシリンジを準備。
6. 出産支援
- 左手は母親の会陰に軽い圧力をかけ、右手は常に赤ちゃんの頭を支えます。
- 収縮時に母親にいきむよう指示。
- 赤ちゃんの頭と首が出たら、羊膜が破れているか、胎便汚染があるか、臍帯が首に巻きついているか確認。
- 臍帯が巻きついていた場合、クランプを使用して切断。
7. 赤ちゃんのケア
- 気道の評価と吸引:
- 気道の評価:赤ちゃんが産まれた直後、まず気道の確認を行います。赤ちゃんの口や鼻に液体がないかを確認します。
- 吸引:
- バルブシリンジを使用します。シリンジのプランジャーを押し込み、シリンジの先端を赤ちゃんの口に優しく挿入します。
- プランジャーをゆっくりと解放して口の中の液体を吸引します。次に同じ手順で鼻を吸引します。
- 吸引は必要に応じて行いますが、赤ちゃんが自主的に泣き始め、呼吸が正常であれば吸引の必要はありません。
- 赤ちゃんの乾燥と保温:
- 乾燥:
- 乾いた清潔なタオルを使用して、赤ちゃんの全身をしっかりと乾かします。特に髪や首の周りの水分を拭き取ります。
- 乾燥中に軽くタオルで赤ちゃんを刺激し、呼吸を促進します。
- 保温:
- 赤ちゃんが乾いた後、すぐにビーニーを赤ちゃんの頭にかぶせます。頭部の保温は特に重要です。
- その後、毛布で赤ちゃんを包み、体温の低下を防ぎます。毛布は赤ちゃんの全身を覆うようにし、しっかりと保温します。
- 乾燥:
- 臍帯クランプと切断:
- クランプの設置:
- 母親と赤ちゃんの間の臍帯に約6インチ(約15センチメートル)のスペースを空けます。
- 2つのクランプを約2インチ(約5センチメートル)の間隔で臍帯に装着します。
- 臍帯の切断:
- 滅菌されたハサミを使用して、クランプの間を切断します。切断後、臍帯の切断面を確認し、出血がないことを確認します。
- クランプの設置:
- 初期の授乳サポート:
- 赤ちゃんが安定している場合、母親に赤ちゃんを抱かせます。母親の胸に赤ちゃんを置き、皮膚と皮膚の接触を促します。
- 母乳育児を希望する場合、初期の授乳をサポートします。赤ちゃんが母乳を吸うことで、母親の子宮収縮を促進し、出血を抑える効果もあります。
- 継続的なモニタリング:
- 赤ちゃんのバイタルサイン(心拍数、呼吸、体温)の継続的なモニタリングを行います。
- 赤ちゃんの体温が低下しないよう、定期的に毛布や保温具を調整します。
- 赤ちゃんの呼吸状態や皮膚色の変化に注意し、異常があれば速やかに対応します。
8. 赤ちゃんのバイタルサインとApgarスコアの評価
- 心拍数、呼吸努力、筋緊張、反応性、皮膚の色を評価し、それぞれ0〜2点のスコアを付ける。
- 総合計を算出し、状態を評価。
バイタルサインとApgarスコアの評価表
バイタルサイン評価
バイタルサイン | 測定値 |
---|---|
血圧 | 測定値を記入 |
脈拍 | 測定値を記入 |
呼吸数 | 測定値を記入 |
体温 | 測定値を記入 |
Apgarスコア評価
項目 | 0点 | 1点 | 2点 | スコア |
---|---|---|---|---|
外見(Appearance) | 全身青紫(中枢性チアノーゼ) | 四肢青紫(末梢性チアノーゼ) | 全身ピンク色 | |
脈拍(Pulse) | 脈拍なし | 100未満の脈拍 | 100以上の脈拍 | |
反射(Grimace) | 反射なし | 反射あり(顔をしかめる) | 咳やくしゃみをする | |
活動(Activity) | 活動なし | 弱い活動または軽い屈曲 | 活発な活動または強い屈曲 | |
呼吸(Respiration) | 呼吸なし | 弱い泣き声 | 強い泣き声 |
合計スコア:
- 7〜10点: 赤ちゃんの状態は良好。
- 4〜6点: 注意が必要。
- 0〜3点: 緊急の処置が必要。
評価タイミング
- 1分後:
- 5分後:
この表を用いて、バイタルサインとApgarスコアの評価を行い、適切な対応をしてください。
9. 母親のケア
- 子宮底マッサージで出産後の出血を抑える。
- 出血量を評価し、必要に応じてガーゼやパッドを使用。
- 母親のバイタルサインを再度確認。
重要ポイント
- 臍帯のクランプと切断位置、タイミング。
- 赤ちゃんのApgarスコアの評価タイミング(1分後と5分後)。
- 緊急時の対応(心肺蘇生法など)。
このチェックリストを基に、出産の際の手順を確認し対応してください。
緊急時の赤ちゃんの対応手順
1. 初期評価
- 心拍数が100未満、喘ぐ、または呼吸停止の場合
- バッグバルブマスク(BVM)を使用して、陽圧換気を開始
- 換気速度: 室内空気で40〜60回/分の呼吸を行う
2. 30秒後の再評価
- 心拍数が100未満の場合
- 酸素を追加して陽圧換気を継続
3. 心拍数が60未満に低下した場合
- 心肺蘇生法(CPR)を開始
- 圧迫と呼吸の比率: 15圧迫対1呼吸
- CPRの手順
- 胸部圧迫: 指2本を使って、胸骨の下半分を押します。
- 呼吸: BVMを使用して1回の呼吸を行います。
- リズム: 3回の圧迫(1、2、3‥‥)後、1回の呼吸を行います。このサイクルを繰り返します。
手順の流れ図
初期評価
└──> 心拍数が100未満、喘ぐ、または呼吸停止
└──> BVMで陽圧換気(40〜60回/分)
└──> 30秒後の再評価
└──> 心拍数が100未満
└──> 酸素を追加して陽圧換気継続
└──> 心拍数が60未満
└──> 心肺蘇生法(CPR)
└──> 3圧迫対1呼吸
CPRの詳細手順
- 赤ちゃんの胸骨の下半分に指を配置: 指2本を使います。
- 3回の圧迫: 圧迫の深さは約1/3〜1/2の胸の厚さ。
- 1回の呼吸: BVMを使用して軽く吹き込みます。
- このサイクルを繰り返す: 圧迫3回、呼吸1回。
注意点
- 各手順を正確に行うためにタイマーを使うと良いでしょう。
- 酸素供給を確実に行い、赤ちゃんの状態を継続的にモニタリングします。
- 必要に応じて、速やかに専門医のサポートを受ける手配を行います。
この手順を理解し、緊急時に適切な対応を行うことが重要です。
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