RITによる検索活動の基本と進入手順

検索救助

火災現場での「検索(サーチ)」活動は、被害者の早期発見と迅速な救助のために欠かせない非常に重要な任務です。

この記事では、消防士が実際の火災現場で行う検索活動の基本的な進め方や、進入時の注意点、ロープ検索の正しい使い方などを、具体的かつ専門的に解説します。

検索活動の基本|進入前に必ず行うべき確認事項

検索活動を開始する前に、最も大切なのは「基本動作を徹底すること」です。

慣れた現場であっても、焦らず一つひとつの工程を丁寧に行うことで、被害の拡大を防ぎ、隊員の安全も確保できます。

まず、建物に入る前には必ず以下の操作を行います。

ドアの熱感や煙の有無を確認する「ドアアセスメント」 ドアを不用意に開け放たずに動きを制御する「ドアコントロール」 室内の状態を読み取る「煙の観察」や「火の兆候の確認」

このような基本的操作をしっかり行うことが、次の動作を安全かつ効率的に進める土台になります。

特に、煙の色や動きから火災の位置や規模を読み取る能力は、訓練と経験が必要な技術です。

進入チームの配置と動き方|隊長の役割とは

建物に進入する際は、チームが連携して段階的に行動します。

先頭にはリード隊員、そのすぐ後ろに隊長が付き、全体の動きを管理します。

ドアを開けたら、隊長はまず左右と上部を含む「360度スキャン」を行い、火の位置や安全状況を判断します。

その上で、リード隊員を前進させ、室内の検索を開始します。

途中で分岐があれば、隊長は煙の流れや部屋の構造を確認しながら、最も被害者がいる可能性の高い場所を選定します。

このような「指示と判断」の積み重ねが、検索活動の成否を大きく左右します。

廊下・部屋での検索方法|ドアの扱いとTICの活用

廊下を進むときは、左右の部屋に対して必ず「ドアを開けて確認する」操作を繰り返します。

ここで重要なのは、リード隊員が「ドアの前で止まらず、しっかり中に入る」ことです。

部屋に入ったら、TIC(熱画像カメラ)を使って四隅を確認し、被害者や火災の有無を調べます。

TICは煙の中でも視界が確保できる優れた道具ですが、操作に慣れていないと正確な判断が難しくなります。

また、複数の内部ドアがある部屋では、ひとつのTIC操作だけでは不十分です。

このような場合は、入口に隊員を待機させ、隊長自身が他の部屋をチェックするなどの工夫が必要です。

ロープ検索の正しい使い方と注意点

ロープ検索は、視界がゼロに近い状態での検索において、非常に有効な方法です。

しかし、誤った使い方をすると、かえって動きが制限される危険もあります。

特に注意したいのは、ロープバッグを内部の部屋に持ち込まないことです。

行き止まりや個室にバッグごと持ち込むと、撤退時にロープがだぶついて絡まりやすくなります。

原則として、ロープバッグは進入口やメインの通路に置き、そこに「オリエンテッドマン(位置管理役)」を配置するのが理想です。

進行方向が複雑な場合には、その都度ロープを伸ばすのではなく、段階的に次の隊員へバトンタッチしていく方法が安全です。

隊長の位置取りと動き方|スポーツに学ぶ配置戦術

検索活動中の隊長の動きは、スポーツでいう「ディフェンス」の動きに非常によく似ています。

例えばバスケットボールでは、「自分・相手選手・ボール」の三角配置を維持するのが基本です。

これを検索活動に応用すると、「隊長・リード隊員・その他の検索隊員」の三者を常に視野に入れて動く必要があります。

この配置を保てば、どちらかの隊員がトラブルに遭ってもすぐに対応できます。

また、声が届く距離にいることも非常に重要です。

煙で視界が遮られていても、声で状況を確認し合えることが、チームの安全を大きく左右します。

まとめ|安全な検索活動のために意識すべきこと

検索活動は、火災現場における最も緊張感の高い任務の一つです。

成功の鍵は「基本動作の徹底」と「的確な判断力」にあります。

特に以下の点を常に意識しましょう。

ドアや煙の情報から状況を正確に読み取る TICやロープなどの装備を正しく使う チーム全体の配置と動きを把握しておく オリエンテッドマンの役割を明確にする 連携と声掛けを忘れない

どんなに訓練を積んでも、現場は常に想定外の連続です。

だからこそ、「基本を丁寧に」こなす力が、最終的には命を救う技術となるのです。

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