バックアップ消防士のホースハンドリング完全解説

ホースマネジメント

― ノズルを生かす「縁の下の力持ち」の本当の役割 ―

建物火災における消火活動では、ノズル消防士に注目が集まりがちです。
しかし、実際の消火効率と安全性を大きく左右しているのがバックアップ消防士のホースハンドリングです。

バックアップは単なる補助役ではありません。
正しい位置取りと動きができていなければ、ノズル操作は不安定になり、消火スピードも大きく低下します。
本記事では、現場で即使えるバックアップ消防士の基本思想と実践テクニックを、理論と動作に分けて解説します。


なぜ「密着バックアップ」はNGなのか

かつて主流だったのは、ノズル消防士に密着し、ホースを持ち上げて反力を抑える方法です。
しかし、この方法には大きな問題があります。

  • ノズル反力を一人で抱え込むことになる
  • ホースが地面から浮き、反力が逃げなくなる
  • ノズル消防士の自由な動きを妨げる

結果として、バックアップ自身の負担が増えるだけでなく、チーム全体の消火効率を下げてしまいます。


理想のポジションは「10〜15フィート後方」

バックアップ消防士の理想的な位置は、ノズル消防士から約10〜15フィート(3〜4.5m)後方です。

この距離を取ることで、次のメリットが生まれます。

  • ノズル消防士に十分な操作スペースができる
  • ホースが地面に接し、反力が地面に逃げる
  • 2人で反力を均等に分担できる

特に重要なのが、2人の間に作る**ホースのディップ(たるみ)**です。
このディップがあることで、ノズル反力は早い段階で地面に吸収され、無駄な力を使わずに前進できます。


バックアップ消防士が担う3つの重要要素

消火隊としてノズルを成功させるための要素は、次の3つです。

  1. 適切なノズル反力の攻撃パッケージ
  2. ノズル後方でホースを一直線に保つ
  3. 2人の間にホースのディップを残す

このうち、②と③はバックアップ消防士が直接コントロールします。
つまり、バックアップの質がそのままノズル操作の質に直結するのです。

ホースのディップ(hose dip)とは
ノズル消防士とバックアップ消防士の間で、ホースをあえて地面にたるませて作る“自然な下がり”のことです。

一直線にピンと張るのではなく、地面に接したU字状の余裕を意図的に残します。


正しい基本姿勢と手の使い方

膝と脚のポジション

  • ノズル側の膝を地面につける
  • 反対側の脚を立てて前進の動きを作る基礎にする

後ろ手(バックハンド)

  • ホースを下から握る
  • 前腕の強い筋群を使える
  • 腕は立てた脚の内側に入れて固定

※ ホースを引き寄せて曲げるのはNGです。
常に直線を保つことが効率的な動作につながります。

前手(フロントハンド)

  • 身体を支える
  • 体幹の強い筋肉で支える三角形を作る

手がホースの後ろに流れると、ホースが浮き、安定性が一気に低下します。


ホースを「つま先に乗せる」理由

ホースをつま先に軽く乗せることには、明確な意味があります。

  • 放水時の振動を足で感じ取れる(非言語コミュニケーション)
  • 煙中でも後ろ手の位置を素早く再現できる

視界が悪い室内では、非常に有効なテクニックです。


前進動作の基本|小刻みが最強

バックアップ消防士の前進は、短いステップが基本です。

  • 後ろ足で大きく踏み出さない
  • 後ろ膝はできるだけ垂直を保つ
  • ブーツのトレッドを常に地面に効かせる

水で濡れた床は、氷や雪がなくても簡単に滑ります。
大きな動作は転倒リスクを高めるだけです。


正しい前進シーケンス

  1. 前手を前に出す
  2. 前手とつま先に体重を移す
  3. 地面についていた膝を前方へ移動
  4. 後ろ足をリセット
  5. 同じ動作を繰り返す

この動きにより、ノズル消防士のペースが自然に優先されます。
バックアップは決してノズルを押してはいけません。


曲がり角・ピンチポイントでの考え方

進行方向が変わる前には、ノズル消防士から明確な指示があります。

例:「左に1m」

この一言で、

  • 移動距離
  • 進行方向
    を同時に把握できます。

曲がる際は、まず外側の壁にホースを送ることが重要です。
「下ろしている膝は常にノズル側」という原則を守れば、自然と良いポジションを維持できます。

その後、手繰り動作でピンチポイントを処理し、次の展開に備えます。


まとめ|バックアップは“戦力”である

バックアップ消防士は、単なる補助役ではありません。
正しい位置取りと動作ができれば、

  • ノズル操作は安定する
  • 消火速度は向上する
  • チーム全体の安全性が高まる

ホースを「持ち上げる人」ではなく、
ホースを地面と連携させる人

それが、これからのバックアップ消防士に求められる本当の役割です。

参考動画

参考資料

バックアップ消防士の動き・技術解説

Fire Engineering – Training Minutes: The Backup Firefighter Position
バックアップ消防士のホースライン前進における動き・技術について重要なポイントを紹介しています。実際の訓練映像付きの解説で、正しい位置や前進時の体の使い方を学べます。
👉 https://www.fireengineering.com/firefighter-training/training-minutes-the-backup-firefighter-position/

Fire Rescue Expert – Hose Extension / Backup Techniques
バックアップ消防士がホースラインを支える際の位置取りや肩の使い方など、実戦に即した具体的なテクニックが紹介されています。
👉 https://fire-rescue-expert.com/hose-extension/

バックアップ消防士の役割と連携技術

FireRescue1 – Two techniques to be a great backup firefighter
バックアップ消防士の重要性と、ノズル消防士の負担を減らすための2つの基本的なテクニックが紹介されています。
作業効率と安全性の両方に配慮した訓練方法として参考になります。
👉 https://www.firerescue1.com/fire-products/tools/hoses/articles/two-techniques-to-be-a-great-backup-firefighter-V3DjQm81vl2hyLa3/

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