車両破壊(窓 ドア)

交通救助

交通事故の際、ドアの施錠や変形によってドアが開かないことがあります。そういった場合、救助隊は要救助者への接触や救出のために破壊活動をしなければなりません。ここでは車両破壊活動について記載します。
ただし、隊員や要救助者のリスク低下のため必要のない破壊活動はしないようにしてください。

ガラスの破壊

ドアの施錠や変形によってドアが開かない時は優先的にガラスを破壊し、進入及び鍵の解錠を行ってください。

参考ページ:救助活動において、車両から被害者を救出する際、ドアの操作やロック解除ができない場合には、ガラスを破壊または取り外して車内にアクセスする必要があります。事故での車両のガラスの除去方法について詳細を解説します

強化ガラス(サイドガラス)

車のサイドガラスは、強化ガラスでできており一点に衝撃を加えるとガラスが粉々に割れるようになっています。
破壊する際は、ガラスの飛散防止のためテープで養生します。

ガラス テープ養生 に対する画像結果


割る箇所は要救助者がいない場所を優先してください。
使用資器材は、ウインドウポンチやガラスマスターで行います。

ウインドウポンチ


ガラスマスターツール


割れたガラスは、極力車外に出すようにしてください。

合わせガラス(フロントガラス)

フロントガラスは 2枚のガラスとその間にあるビニールフィルムで構成される合わせガラスとなっています。
強化ガラスのように粉砕することはないので、レシプロソーやガラスマスターで切断する必要があります。
フロントガラスを切断時、ガラスの粉塵が大量飛ぶので、要救助者には毛布等で保護してから切断してください。


もしドアが開かない時は、サイドガラスをテープで保護してから割るのがいいよ。フロントガラスはそのまま割れないから、レシプロソーとかで切ると安全だね。

参考ページ:交通事故現場では、車両のガラスを効率的かつ安全に取り外すことが求められます。特に、ガラスの取り扱いは非常にデリケートであり、救助作業中の安全対策が不可欠です。ここでは、ジェネシス・レスキューによるフロントガラスの取り外し方法や作業中の注意点について説明します。

参考ページ:「GLAS-EX TURBO」は、ガラスを効率的かつ安全に取り外すために設計されたツールです。ここでは詳細を記載します

ドアの破壊

車両の損傷が激しく、要救助者に挟まれ等があり救出できないときは、車両やドアの破壊を行います。

参考ページ:車両からの救出活動において、ガラスの取り外し後も車内の人にアクセスできない場合、救助隊はさらなる手段を講じる必要があります。特に、ドアが施錠されていて開かない状況に直面したときの対応策を記載します

ドアヒンジ

ドアヒンジはドアの前方にあり、2か所のヒンジでドアが取り付けられています。
使用資器材は、取り外しの速度や資器材強度を考慮してスプレッターを優先的に使用してください。

まず初めに、車両のフェンダー部分をスプレッターで押しつぶし、ヒンジを露出させる。
※事故車両のヒンジ部分が変形により露出している場合は必要なし。

ソース画像を表示

事故車両がワンボックスタイプの車でフェンダーがない場合や事故の衝撃でフェンダー部分の変形が激しいときは、サイドドアの窓枠をスプレッターで押し広げる。

ヒンジが確認出来たら、ヒンジ2カ所、電気コード、チェックリンクを上から順にスプレッターで取り外す。※ドアが突然外れ落下する場合があるため、手で押さえながら作業をする。
スプレッターのみでの取り外しが困難な場合は、カッターやクリッパーを使用し切断する。

ヒンジに変形がない場合は、工具での取り外しも考慮する

取り外したドアは、活動の邪魔にならない場所に移動させるか、車両の下に置いておく。

1:20 フェンダー押しつぶし
1:35 ヒンジ押し広げ

ドアラッチ

ソース画像を表示

車のドアは、ドアのラッチとストライカと呼ばれる部品が噛みあうことで各部がロックされる仕組みになっています。
使用資器材は、取り外しの速度や資器材強度を考慮してスプレッターを優先的に使用してください。

まずは、ドアの上部にバールやハリガンツールを使用しスペースを開ける。

バール に対する画像結果
バール

※サイドドアの窓枠をスプレッターで押し広げてラッチを露出させることも可能

開けたスペースから上から徐々にラッチ部分まで開けていく
スプレッターで押し広げ、ラッチからストライカーを取り外す。

スプレッターのみでの取り外しが困難な場合は、カッターやクリッパーを使用し切断する。

2:30 ハリガンを使用し、ドアの上部にスペースを作る
6:05 スプレッターで押し広げ、ラッチからストライカーを取り外す。
6:25 カッターでストライカーを切断

1:30 窓枠を押し広げヒンジを露出
2:20 ヒンジ押し広げ
2:40 ヒンジをカッターで切断
4:50 窓枠を押し広げラッチを露出
5:10  スプレッターで押し広げ、ラッチからストライカーを取り外す。
6:10 フロントガラスをレシプロソーで切断
7:20 レシプロソーでピラーを切断(高圧ガス注意の説明)
8:20 ルーフ取り外し

参考ページ:ここでは、ジェネシス・レスキューによる垂直ドアクラッチ(ドアの取り外し方法)を記載します



参考動画:ドア2枚抜き

スライドドア

最近の車は、パワースライドドアを多く採用しています。スライドドアは3カ所のローラーにより開閉を行えます。

①リアローラー
②アッパーローラー
③ロアローラー

スライドドアの開放もスプレッターのみで可能です。
まずは、リアローラーを優先的に押し広げます。その後上から順に、アッパーローラー、ヒンジ、ロアローラーの順で押し広げていきます。

車のドアを壊すときのコツだけど、まずヒンジ部分をスプレッターで押し広げるのが基本なんだ。でも、事故でヒンジがもう見えてるなら、そのまま進められるから楽だよね。作業してるとドアが急に外れたりするから、必ず片手で支えながらやると安心。取り外したドアも足元に置くと邪魔にならないし。ラッチを外すときは、バールとかハリガンツールでドアの上に少し隙間を作って、スプレッターで広げていくとやりやすいよ。スプレッターだけで難しいときは、カッターやクリッパーも使えるから試してみて。

参考ページ:ミニバンのスライドドアを迅速かつ安全に取り外す方法を解説。救助活動で重要な基本構造、使用ツール、実践的な手順、注意点を詳しく説明します。効率的な救助技術を学び、現場で活用しましょう。

ルーフ(屋根)の撤去

事故車両の破損や変形が激しい場合、車内での活動スぺースが確保できないため、ルーフを取り外す必要があります。

まず、フロントガラス上部を切断し、全ピラーの上部をレシプロソーや油圧カッター切断します。


ピラー等の切断の際は、サイドカーテンバック(エアバック)に注意してください。バック自体の切断は可能ですが、高圧ガスの入ったシリンダーを切断すると破裂してしまいます。

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エアバッグの種類

  • 後席センターエアバッグ同乗者やセンターコンソールとの衝突によるダメージから乗員を保護します。
エアバッグの種類

ボタンを押すと、確認ができます。

ピラーの切断がすべて完了したら、手でルーフを持ち上げ、活動障害にならないよう移動させます。

事故でルーフを外すときのポイントだけど、まずフロントガラスの上部を切ってから、全てのピラーをレシプロソーや油圧カッターで切断するんだ。その際、サイドカーテンエアバッグには気をつけてね。エアバッグ自体を切るのは大丈夫なんだけど、中に高圧ガスが入ったシリンダーがあるから、そこを切っちゃうと破裂しちゃう危険があるんだ。

エアバッグ作動後の車両破壊の注意点

エアバッグが作動した後の車両破壊は、さらなる技術的な課題を伴います。エアバッグが展開すると、ピラー内の構造が圧力によって変形している可能性があり、これが救助作業の障害となることがあります。特に、サイドカーテンエアバッグが展開した場合、ピラーを切断する際に内部に残されたガスシリンダーの位置を把握する必要があります。

また、エアバッグの展開によって金属部分に微細な亀裂や圧力点が生じていることがあり、これらの部分は予想以上に脆くなっていることがあります。このため、救助作業中に予想外の破断が起こる可能性があるため、切断や破壊作業を行う際には、事前に専用のセンサーを使って金属疲労の状態を確認することが推奨されます。

カーボンファイバーフレームへの対応

近年の車両では、軽量化と強度の向上を目的にカーボンファイバー素材が多く使用されるようになっています。これに伴い、従来のスプレッターやカッターでは切断や破壊が難しいケースが増加しています。カーボンファイバーは非常に強固でありながら、急激な力を加えると脆性破壊を起こすという特性があります。

このため、カーボンファイバーを使用した車両では、超高圧水ジェットカッターが有効です。この技術は、水の細いジェット流を超高圧で噴射し、カーボンファイバーを分子レベルで破壊することができます。また、火花や高温を発生させず、ガスシリンダーや電池を搭載した車両でも安全に使用できる点が利点です。

車のヒンジの種類

  1. ピラー・ヒンジ (Aピラー・ヒンジ)
    • これは車のドアを開閉する際に使われる最も一般的なヒンジです。車のフロントドアでは、Aピラーに取り付けられるため「Aピラー・ヒンジ」とも呼ばれます。耐久性が高く、定期的なメンテナンスが不要で、滑らかな動作を提供します。
  2. ボンネット・ヒンジ
    • ボンネットを開閉するためのヒンジで、特に高級車ではボンネットをしっかりと固定し、走行中の振動を抑えるために設計されています。現代の車では、軽量化を図るためアルミニウム製のヒンジが使われることが多く、車両の燃費向上にも寄与しています。
  3. ガルウィング・ヒンジ
    • スーパーカーなどでよく見られる、車のドアが上に開く形式のドアヒンジです。伝統的なヒンジと比べて、開口部が大きくなり、車の乗り降りがしやすい利点があります。このタイプのヒンジは、特別なメカニズムを持っており、車のデザイン性を強く意識した結果生まれました。
  4. スーサイド・ドア・ヒンジ
    • このヒンジは、車の後方に向かって開くドアに使用されるため、スーサイド・ドアとも呼ばれています。レトロな車両に多く見られますが、近年ではロールスロイスなどの高級車で再び採用されています。安全性の観点からは、ドアの位置が通常と異なるため特別な施錠機構が求められます。

ヒンジ素材と技術

ヒンジの素材は車の設計やパフォーマンスに直接影響を与えます。一般的に、鉄やスチールが使われますが、アルミニウムやカーボンファイバーなどの軽量素材も使われることがあります。

  • アルミニウム製ヒンジは、軽量でありながら強度が高いため、特にスポーツカーや高級車に多く使用されています。燃費の向上や車両全体の軽量化に貢献しますが、コストが高いというデメリットもあります。
  • プレス技術と鍛造技術
    ヒンジの製造において、精密なプレス技術や鍛造技術が使用され、強度と耐久性が確保されています。特にドアヒンジでは、ヒンジの回転部に使用されるベアリングやブッシュの精度が重要です。これにより、滑らかな開閉が実現し、長期間の使用においても摩耗を防ぎます。

車のラッチとは?

車のラッチとは、主にドアのロックや開閉に使用される機構のことを指します。ラッチは、単なる金属部品の集合体ではなく、車の安全性、快適性、そして使用感に大きな影響を与えます。ドアラッチの役割は、ドアが確実に閉まるようにしつつ、必要なときに簡単に開けられるようにすることです。そのため、耐久性や動作精度が極めて重要です。

ラッチの種類と動作原理

ラッチにはいくつかの種類が存在します。それぞれが異なる技術的特徴を持っており、以下のように分類されます。

  1. メカニカルラッチ:
    • 一番古典的なラッチの種類です。ばねとレバーの組み合わせで物理的にドアをロックします。このラッチは、ドアが閉じるときに「カチッ」と音がしてロックされる感覚をユーザーに伝えます。機械的なラッチは比較的信頼性が高く、構造がシンプルなため、安価で製造が可能です。
  2. パワーラッチ(電動ラッチ):
    • 現代の多くの車には、パワーラッチが使われています。これは、電動モーターを使用してラッチの開閉をアシストするもので、リモートコントロールや車内のボタンでドアを開けることができます。電動ラッチは利便性が高く、特にミニバンやSUVにおいて、後部ドアのパワーリリース機能に使われています。
  3. ソフトクローズラッチ:
    • 高級車には、ソフトクローズラッチというシステムがよく採用されています。これは、ドアを軽く閉じると、電動でゆっくりと完全にラッチがかかる仕組みです。これにより、ドアを強く押し込む必要がなくなり、車両の高級感と快適性が向上します。

ラッチの構造と素材

ラッチの構造には、複数の小さなギア、ばね、カム、レバーが含まれます。これらが組み合わさることで、正確でスムーズな動作が実現されています。また、素材としては、耐久性と軽量化を両立するために、特殊な合金や高強度のプラスチックが用いられています。

例えば、ドアラッチの主要部品には「デュラルミン」や「ステンレススチール」が使われることが一般的です。デュラルミンは高い強度と耐久性を持ちながらも比較的軽量であるため、車の総重量を抑えつつも安全性を確保するのに適しています。

ラッチの耐久テスト

車のラッチは、日々何千回、何万回もの使用に耐える必要があるため、設計段階で厳しい耐久テストが行われます。具体的には、以下のようなテストが実施されます。

  • 開閉テスト: 通常、数十万回の開閉操作を模倣する機械でテストが行われます。これにより、ラッチが長期間使用後もスムーズに動作するか確認されます。
  • 振動テスト: 車は道路の不規則な振動にさらされるため、ラッチもその影響を受けます。このため、振動試験機を使用して、ラッチが振動によって故障しないかをチェックします。
  • 温度サイクルテスト: 車のラッチは、-40℃から+85℃の厳しい温度環境にも耐えなければならないため、温度サイクルテストで極端な温度変化に対する耐性を試験します。

安全機能と最新技術

現代の車には、より高度な安全機能が求められています。ラッチも例外ではなく、以下のような技術が組み込まれています。

  1. クラッシュセンサー連動ラッチ:
    • 事故時にドアが自動的にアンロックされるように設計されているものです。これは、エアバッグが展開すると同時にラッチが解放され、乗員が速やかに避難できるようにするためのものです。
  2. チャイルドロック機構:
    • チャイルドロック付きのラッチは、後部座席のドアが内側から開けられないようにする機能です。これは、特に子供が車内から誤ってドアを開けてしまうリスクを回避するために設けられています。
  3. アクティブラッチ:
    • 一部の自動車メーカーは、事故発生時にドアをより強力に固定する「アクティブラッチ」システムを導入しています。これは、衝突時のドアの解放を防ぎ、乗員の安全を確保するための技術です。

将来のラッチ技術

将来的には、さらなる電動化やスマート技術の進化に伴い、ラッチもより高度なものになると予測されています。例えば、「スマートラッチ」技術は、スマートフォンと連動して車のドアを開閉することができるようになる可能性があります。また、AI技術を活用したラッチの自己診断機能により、故障の兆候を早期に検知することができるようなシステムも研究されています。

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