放水テクニック

消防

放水の歴史

消防は火を消す仕事です。それは、大昔から長い間、絶対に変わらないことでした。消防署ができる前は民間人が消火活動をしていました。川や池と火元の間に長い列を作り バケツに入った水で、その列を伝って、火に水を投げつけられていました。
バケツで水をくんで、できるだけ火にあてる。しかし、これは効率的な消火方法とはいえません。

やがて、圧力で水を一定方向に流すポンプが発明されました。
この最初のポンプは、水の入った容器の中に設置されていました。ポンプは固定されたノズルに水を流します。ノズルから出る水の到達距離は、圧力によって決まります。つまりポンプは火元の近くにある必要がありました。
そして常に容器に水を入れておかなければならず、ノズルは45°の角度でポンプに固定されていました。

1672年、オランダ人のヤン・ファン・デル・ヘイデンが「消防ポンプ」を発明しました。
ヘイデンは、はじめてポンプとホースを組み合わせて、ホースには、吸水管と吐水管の2種類がありました。吸水管は、ポンプは水源に近い場所に設置し、ホースで水を火の方へと運ぶ。放水ラインの先端にあるノズルを移動させることができ、ノズルから放水する。この頃バケツでの消火はほとんどなくなりました。
ノズルを移動させることができるようになった消火方法。これが、最初の放水消火の始まりです。
過去数世紀の間に、消防ポンプは大幅に改良され、ノズルも改良されてきました。

最初のノズルは、固定のジェットストリームを形成することができるのみで、これから数世紀、ノズルのデザインはほとんど同じままでした。当初は、水流を止めるバルブもなかった。その後、ボールバルブが追加され、ノズルの操作者が水流を開閉できるようになりました。
その結果、日本では40mmのノズルが「標準化」されました。このノズルは
先端を外すことができるようになっており、先端を外すと、ノズルの出口径が大きくなり、流量が2倍になりました。
2000年代初頭の日本では、このノズルがまだ広く使われていました。
米国では、設計が近代化されたとはいえ、このタイプのノズルは依然として今日も人気で、スムースボアノズルと呼ばれています。

過去数十年の間に、より多くの近代的なノズルが開発されました。
固定ジェットストリームだけでなく、スプレーや霧のパターンも形成できるようになり、スプレーやフォグを形成するノズルが登場し、このようなノズルはコンビネーションノズル、フォグノズルと呼ばれています。

なぜ放水テクニックが必要なのか?

なぜノズルの使い分けが必要なのか?なぜ消防士は放水技術があるのか?
なぜ消防士は様々な形状の水を必要とするのでしょうか?

主な形状は以下の通りです。

ストレート

噴霧

ウォーターシールド


これらの形状には、それぞれ用途があります。
ストレートストリームの主な利点はリーチがあることです。そして、水滴がぎっしりと詰まっているので一箇所に大量の水を放つことができます。これは、火のついた固形物を消火しなければならないときには有利です。しかし、煙を冷やさなければならない場合は、これが不利になります。

煙を冷やすには、水滴を大量に撒きたいので、大量の水滴が必要です。
フォグ(噴霧)は、煙を冷やすのに適しています。ここで重要なことは、水円錐の角度です。
この角度が大きくなると、水霧の幅は広がりますが、前方への水の流れは弱くなり水が前方に流れる距離は短くなります。

ウォーターシールドは、建物火災のほかにガス火災の消防活動でよく使用されています。
燃え盛るガス漏れしたボンベに向かい、ウォーターシールド放水しながらバルブを閉じます。

消防士は状況に応じて水を使い分けられるよう、いくつかのノズルの使い分けとノズルの技術を持っています。
現在ではバケツの時代とは異なり、少ない水でより多くの使用方法ができるようになりました。
これによって、より効率的な活動ができるようになったのです。

放水術名

近代的なノズル技術が導入されたとき、いくつかの名称が考え出されました。
なぜ名前が必要だったのかというと、良いネーミングは定着すると、内容が覚えやすく学習効果を高めるからです。

パルス

ガス冷却放水では、ヨーロッパで3D放水という言葉が最初に使われました。これは現在、ショートパルスと呼ばれています。
3D放水は、ヨーロッパでガス冷却の先駆けとなり、その後、ロングパルスが追加されました。
日本では消防士が3D放水技術を理解することができず、噴霧は直流に代わるものではないことに気づくのに数年かかりました。
「ガス冷却放水は消火には使えない。」
このメッセージは、当初十分に重要視されませんでした。
その結果、消防士が完全に燃え上がった火災に直接パルスを当てようとすると、火が消えることはなく延焼拡大するという結果になることが多くありました。

ショートパルス

ショートパルスの目的は、可燃性ガスを冷却および希釈し、それによって火災ガスが自動発火温度に達するのを防ぐことです。図に示すように、短いパルスは、煙が消防隊の上または周囲に出るとすぐに使用します。また、煙の発火リスクをもたらす可能性のある煙を希釈して冷却するためにも使用されます。

放水方法

  • 効果的な液滴サイズを形成するために十分な流量と圧力を使用する
  • 30°から60°の円錐角を使用する
  • ノズルを完全に開いてから閉じ、すべてを1回の素早い動きで行う
  • ノズルの真上と正面、上層を狙う

すべての火災は可燃性の火災ガスを生成するため、すべての内部消火活動(捜索救助を含む)にはある程度の煙冷却が必要です。煙の冷却の頻度と期間は、火災の強度と高温の火災ガス(煙)の量によって決まります。

ウォーターハンマーは問題ではありません。
パルスの持続時間が短く、水の量も少ないので、ウォーターハンマーは問題にならない。

ロングパルス

ロングパルスを使用する目的は、可燃性ガスを冷却および希釈して、火災ガスが自動発火温度に達するのを防ぐことです。図に示すように、大量の煙がある場合や燃焼物のサイズでより大きな浸透が必要な場合は、常にロングパルスを積極的に使用する必要があります。

放水方法

  • 効果的な液滴サイズを形成するために十分な流量と圧力を使用する
  • 30°から45°のコーン角度(短パルスよりも狭い)を使用する
  • ノズルを約1〜2秒間開く
  • 消防士の前方上層を狙う

ほとんどの火災では、長時間の煙冷却が重要です。室内の火からの熱い煙で満たされた廊下は、狙いを定めた長いパルスによって迅速に対処できます。

ロングパルスは、ウォーターハンマー防止のため素早く開き、ゆっくり閉じる必要があります。

ペンシリング

ペンシリングとは欧米の広域に導入されている技術です。
ペンシリングは、火災の発生箇所に向かって直線的に水を流す技術で、ノズルを素早く開閉し、少量の水の塊を火に放りこみます。
ペンシリングの技術は、火災訓練用の容器では非常によく活躍します。そしてノズル操作での火の制御を学ぶのに役立ち、火をコントロールすることができるようになります。しかし、このテクニックの欠点は実火災では、「非常に小さな火にしか使えない」ということです。小さな火災、初期火災、小さくて孤立した物体(机の椅子や棚など)。

そのため、消防士は大きな火災をペンシリングで鎮火しようとしたのです。しかし、火は燃え続け、消防士は「なぜ、火災訓練と同じように火が消えないのか?なぜ、訓練用の容器の中と同じようにならないのか?」となってしまいました。

放水方法

  • 火災の発生箇所から十分に距離をとる
  • ノズルはストレートストリームを選択する
  • ノズルのシャットオフを素早く行い、水の塊を火に放りこむ

ショートパルスと同じくウォーターハンマーは問題ではありません。

ペインティング

ペインティングは、最終消火と残骸清掃に使われる技術です。非常に短い直進水流(1m)を使って鎮火させる。そして火元の残骸を流し出します。
また、4〜5mの距離からノズルを全開にせず、直進水流で消火することも「ペインティング」と呼ばれています。

高温の表面に薄い水膜を形成します。薄い水膜を形成するには穏やかに放水する必要があります。
そのためには、水が目標のターゲットに届く程度にノズルを開きます。
あまりに激しく放水すると、水が跳ね返って目標の表面を冷やせなくなる。

1:10 ペインティング


コンビネーションアタック

次に流行した技術が、ヨーロッパのフランダース地方で知られるマッシブアタックという技術です。フランスではZOT-メソッドとして知られています。北米ではコンビネーションアタックと呼ばれています。

この技術の主な適用範囲は、火が完全に発達した最盛期等の火災です。

この方法では、非常に大量の水を水滴の形で、高温の煙の中に混ぜることができ、ノズルを移動させることで通常の広さの部屋であれば火を抑制できます。
上から下へ、煙と炎を押し込みます。
通常は“I”や”O”の文字の形で放水しますが、他の文字“T “や “Z”、”∞”などの文字が使われることもあります。
効果は一瞬で、非常に強力な技術であり、急速にエスカレートする状況をコントロールすることができます。
この方法は、火災がバックドラフトの兆候を示しているときに、ドア開放の手順の一部として使用することもできます。

トランディショナルアタック

トランディショナルアタックは現場に到着し、すぐに通気口の窓またはドアから火を見つけ、部屋の天井に向かって水を放水します。(噴霧は巻き込まれた空気が火を押すので、ストレート放水でなければなりません。同様に、放水は渦巻いたり動かしたりしてはいけません。)
部屋の内にスプリンクラーを作成します。
放水は、火の真上の天井に向けて、約10〜20秒間静止します。
火が小さくなると、完全な消火のため屋内進入を開始します。

この技術で得られる温度低下は重要であり、出火室はもちろん、近くの廊下、他の部屋、別の階の居室は約50%以上の温度低下することが確認されています。この温度の低下は、被害者の救助や、屋内進入する消防隊が残りの火を抑えるために侵入するのに役立ちます。

1:50 トランディショナルアタック

水圧換気

水圧換気とは、建物内を換気するために屋内から開口部に向けられた霧パターンまたは「O」パターンでのストレートストリームの使用によって生成される圧力差により、室内の汚染空気を新鮮な外気と交換することです。


以上が、いま世界中で指導されている放水技術です。この他にも、ここでは記載していない技がたくさんあり、それぞれに形と名前がついています。これらの技術はすべてに意味があるのですが、全体としては非常に複雑で分かりにくいものになっています。最近の問題は、放水テクニックが流行するに伴い、「木を見て森を見ず」になっている消防士は少なくありません。

結局のところ、消防士の訓練は、時間が限られており、指導者は、できるだけ効率的に知識を与える方法を探しているのが現状です。

ノズルの種類

消火活動において使用するノズルには様々な災害に対応できるよう多くの種類があり、その使用用途は様々です。

フォグネイル

酸素を供給せずに冷却

フォグネイルは、火に酸素を加えることなく、煙や高温の表面の冷却をします。酸素が限られているため、冷却に必要な水が少量で、冷却効果が長く持続します。フォグネイルからの小さな水滴は、煙を効果的に冷却します。

さらに、一部の液滴は、長期間使用すると、反対側の熱い煙と冷たい高温の表面に浸透する大きさでもあります。この火災の抑制により、他の優先事項を達成したりします。

ガンタイプノズルと適切なタイミングで実行された戦術を組み合わせることで、その後のより迅速で安全な消火活動も可能になります。

ガンタイプノズル ゼロトルク ターボ

定流量噴霧ノズルの「新世界標準」

アクロンターボジェットノズルは、パターン切替式ノズルと定流量弁を組み合せた、安全で信頼性の高い定流量噴霧ノズルのトップブランドです。

近年の消火戦術では、火勢や現場の状況に応じて、棒状から広角噴霧放水と、様々な放水パターンをその場の状況に応じて変化させる必要がありますが、放水パターンを変化させたり、分岐した他の筒先の開閉やポンプ元圧の変動などにより、水流の反動も大きく変化します。

ゼロトルクターボは、ターボジェットノズルの特長を生かしつつ、さらに保持し易く、反動力の変化を低減したの少ない理想的な定流量型噴霧ノズルです。従来のガンタイプノズルと比べ、放水時の反動力と支持点が直線上になることで、ノズル先端の跳ね上がりを防ぎ、長時間放水のストレスを軽減します。

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