消防士に求められる能力は以下になります。
火災性状の理解
サイズアップ能力
放水テクニック
ベンチレーション
メンタリティー(パニックコントロール)
基礎体力
現場活動経験
この中の3つを中心に記載していきます。
サイズアップ
サイズアップを確実におこなえ!
サイズアップを全員でおこなえ!
サイズアップのスキルを磨け!
サイズアップとは
現場に最初に到着した消防隊はまず状況把握(サイズアップ)をする。情報を集め、観察して、予想する。これが戦略を立てる基礎となる。消防指揮とはこの状況把握から次にあげる一連の作業を火災鎮圧まで何度も繰り返すこと。
すべての火災状況は、隊員やチームの安全を危険にさらすことなく、利用可能な力で火災を攻撃し、抑制するための最も効果的な方法を決定するためにサイズアップする必要があります。全体の火災が見ることができない場合は、特に火災の正面をサーチする必要があります。非常に小さな火災でさえ、サイズ、燃料の種類、行動、ラインの位置を決定するためサイズアップする必要があります。ほとんどの火災のサイズアップは特別なことがない限り、通常1〜2分しかかからない。
119番通報時(火災報告時)
通報時に聞くことです。これも立派なサイズアップです。通常は指令員の仕事です。
- 火はどのくらいの大きさですか?
- 何が燃えているか?
- 負傷者や逃げ遅れいるか?
現場到着まで
車内でのサイズアップも重要です。
・火は見えるか?
・煙の色は?
・風向きと強さは?
・天気は?
現場に到着
次の数分は、活動の成功に不可欠です。サイズアップを怠ると失敗に繋がります。
火をサイズアップする時間を取ります!
適切な放水と制御アクションは、火災の問題が完全に評価されている場合、またはサイズアップされている場合にのみ実行できます。
サイズアップの一部は、火災の報告、天気予報、煙柱の観測からすでに行われています。
できるだけ早く安全に火の周りを回るか、見晴らしの良い場所から検査してください。しかし、火災が急速に動いている場合、または正面とその行動を見晴らしの良い場所から判断できる場合は、火の頭の周りを回らないでください。
検索対象
- 火災の場所と大きさ
- 燃料燃焼の種類と量
- 煙の量と種類
- 火の経路における地形の種類
- 炎の長さと広がり率
- 火災の不規則な行動
- 気象条件とそれらが火災に与える影響
- 道路、河川、不毛な地面などの障壁
決定事項
- 火災を攻撃する場所(正面またはサイド)
- 放水(直接、間接)する方法
- 筒先の位置
- 制御ラインを構築し、それに必要な時間
- 必要なヘルプ(増援等)
火災現場では、まず状況を素早く把握するサイズアップが重要!火の大きさや煙、風向きなどを確認し、放水方法や必要な支援を判断するよ。安全第一で、急がず確実に対応しよう!
サイズアップ練習動画
実際に現場到着時のサイズアップを練習しましょう!!動画を見て戦略を決めるのです
【例題】
木造1階建ての家屋で火災が発生している。
【検索対象】
- 火災の場所と大きさ
右側居室内に2mの炎 - 燃料燃焼の種類と量
建物内の収容物 - 煙の量と種類
手前黄煙、奥黒煙 量は多い 不完全燃焼 - 火の経路における地形の種類
左のガレージに延焼危険あり - 炎の長さと広がり率
天井を突き抜ける炎のため拡大は早い - 火災の不規則な行動
今後の動きは予見が必要 - 気象条件とそれらが火災に与える影響
煙の動きは少ないため風はない - 道路、河川、不毛な地面などの障壁
大きな障害はないが正面の植木が放水障害になる危険あり
【例題】
雑草が約2㎡燃焼している
【検索対象】
- 火災の場所と大きさ
手前に約2㎡の炎 - 燃料燃焼の種類と量
雑草 - 煙の量と種類
白煙 完全燃焼 - 火の経路における地形の種類
右の林野と奥の雑草に延焼危険あり - 炎の長さと広がり率
広範囲に急速に広がる可能性あり - 火災の不規則な行動
今後の動きは予見が必要 - 気象条件とそれらが火災に与える影響
煙の動きは少ないため風はない - 道路、河川、不毛な地面などの障壁
大きな障害はないが斜面のため奥からの放水は危険
あくまでも訓練ですので正解はありません。※現場はケースバイケースです
色々な動画を見てサイズアップトレーニングをしてください。
以下の投稿でサイズアップの練習を繰り返してください。
参考ページ:ここでは消防士が必要な知識や火災性状についてを解説します。
高度なサイズアップ技術と戦略
風の影響とその予測
火災現場では風向きや強さが火災の進展に大きな影響を与えます。特に強風時には、炎が迅速に広がり、現場の隊員や周囲の建物を脅かす可能性があります。風速計やドローンによるリアルタイムの風速測定データを活用し、風の動きを瞬時に把握することが重要です。風の急な変化を予測するために、近隣の建物や地形の影響も考慮したサイズアップが求められます。
リモートセンシング技術の活用
サイズアップにおいて、近年ではリモートセンシング技術(熱赤外線カメラ、ドローンなど)の活用が注目されています。これにより、火災現場の温度変化を可視化し、炎の進行方向や建物内部の状況をリアルタイムで確認することが可能です。これらの技術を使うことで、視界不良の状況下でも正確な情報を得ることができます。
放水術
一昔前の火があれば大量放水をする時代は終わりを告げました。
次は実践的な放水スキルについて伝授します。
火災現場では、目的のある放水を実施しなければなりません。いくつかの代表的な放水技術を紹介します。
ストレート(棒状)放水
一般的に火点に放水する際や延焼防止に使用します。棒状で水が出るため勢いが強くでるため飛距離のある放水ができる。
放水方法は、火源にはストレート放水を2秒以下 水の塊を投げ込む感覚で
ストレート放水動画 13:00から見てください
パルス(噴霧)放水
タービンを回転させることによって、水を細かく分解するし噴霧にすることができる。水を細かくすることによって、視界をクリアにすることとガス温度を下げることができる。
※パルス注水は炎にエアーが入ること及び熱成層を破壊する可能性がありリスクが高い
火災性状参照
この動画では、ストレートとパルスの使い分けがきちんとされています。
パルスでは可燃性ガスを冷却する。ストレートで燃焼物を鎮火させる。
このようにノズル機能を適切に使用し、放水流量に留意してください。
この動画で噴霧(パルス)放水の危険性がわかると思います。
鎮圧まではストレート放水のみの選択でOK
基本的に、パルス注水はガス冷却とベンチレーションのみの使用。安易に使用しない!
低流量で放水する
ブロークンストリーム
建物火災で屋内進入する際、屋内温度が高く進入できないことがあります。
このような時屋外からストレート放水で燃焼室の開口部に壁や天井に当てると、約10秒ほどで室内温度を200℃程度まで下げることができます。この放水術をブロークンストリームといいます。
ブロークンストリームの効果がわかります。設定ボタンで日本語翻訳にしてください※1400℃が200℃まで下がっています。
ブロークンストリームを行い、空間冷却し屋内進入する。そして火源をストレート放水で鎮火させる、この一連の動作をトランディショナルアタックといいます。
ストレートストリームは、空気を含むことはほとんどありません。そのためプッシングファイヤーも防止することができます。
ストレートストリームを天井や壁に当て、部屋に入る水量を最大化し、空気の流入を抑えます。同時に窓は水流に覆われていないので、煙の排出圧力は継続して機能し続けます。
熱い煙と水蒸気は窓から排出し続けます。
火災現場では、ストレート放水やパルス放水など状況に応じた技術が大事!水の量と圧力も慎重に調整して、空間冷却や再燃防止をしっかり行おう!
設定ボタンで日本語翻訳にしてください
参考ページ:ここでは消防士の放水テクニックをわかりやすく解説します。
放水技術の進化と新たなアプローチ
CAF(圧縮空気泡)システムの詳細
CAFシステムは、圧縮空気と泡を混合して使用することで、火災現場での放水効率を大幅に向上させる技術です。泡は火元を包み込み、燃焼に必要な酸素を遮断するため、火災の抑制に非常に効果的です。また、水の蒸発に伴う冷却効果を高めることができ、通常の放水よりも少ない水量で火災を制圧できます。この技術は特に森林火災や大型施設火災で有効です。
放水パターンと水圧調整
ノズルからの放水パターンや水圧の調整は、火災の種類や状況によって変える必要があります。例えば、ストレートストリームは火源への直接的な放水に効果的ですが、広角噴霧は煙を押し出すために使用されます。水圧も重要な要素であり、過度な水圧は建物の構造を破壊したり、火炎を周囲に押し出すリスクがあります。そのため、適切な水圧を選定するスキルも必要です。
サーモグラフィーによる放水効果の確認
放水後の火災鎮圧の効果を確認するために、サーモグラフィー(熱画像カメラ)を使用する方法もあります。これにより、目に見えない熱源や再燃の可能性がある箇所を特定でき、再燃防止のための追加放水を行う判断が可能です。
加熱水蒸気
過熱水蒸気とは,飽和水蒸気をさらに加熱して得られる水蒸気ガスのことであり,100℃よりも高い蒸気を指します。火に放水することにより、 この過熱水蒸気 が大量に発生します。
不用意な注水により水蒸気が発生してしまえば受傷事故を招くことになります。水蒸気をさらに過熱すると200度を越え、紙なども燃やしてしまいます。調理家電の「スチームオーブン」はこの原理を応用し、300度以上の過熱水蒸気で食品を「焼いて」調理するもので、過熱水蒸気が充満すれば、もはやオーブンの中にいるのと同じ状況になります。この過熱水蒸気はランダムに襲い掛かってくるため、しころのみで防護することは不可能。そこで、諸外国では防火フードを必須アイテムとしているのです。
加熱水蒸気動画 5:00から見てください
水は放水方法を誤ると最大の敵になる!!
参考ページ:熱と蒸気の相互作用と、それが消火とどのように作用し、消防士に火傷を引き起こす可能性があるかについて詳しく説明します。
加熱水蒸気の特性
- 高い熱伝導性:加熱水蒸気は通常の水蒸気と比較して、周囲の物質に対して非常に高い熱を伝達する能力があります。これにより、火災現場での環境温度が急速に上昇することが多いです。
- 火災拡大のリスク:加熱水蒸気は、周囲の燃焼物に接触することで、さらなる火災拡大を引き起こすことがあります。特に、火災現場での不適切な放水やガス冷却が行われた場合、加熱水蒸気は火炎を助長し、火災が予想以上に拡大する原因となることがあります。
加熱水蒸気と消防士の安全
加熱水蒸気は、その高温と高エネルギー特性により、消防士にとって非常に危険な存在です。多くの火災現場で問題となるのは、この水蒸気が予測できない方向から襲いかかることです。一般的な防火装備では、これらの加熱水蒸気に十分な対応ができないため、しころやその他の防護具を適切に使用する必要がありますが、完全な防護は困難です。そのため、特に海外では、防火フードが義務付けられていることが多く、日本でもそのような装備の重要性が認識されています。
加熱水蒸気に対する対策
消防士が加熱水蒸気にさらされるリスクを最小限に抑えるための方法は以下の通りです:
- 適切な放水技術の使用:
- 直接的なストレート放水は、燃焼物に対して効果的に冷却作用を発揮する一方で、過剰な水蒸気の発生を抑えることができます。過熱水蒸気の生成を防ぐためにも、放水のタイミングと方法を正確にコントロールすることが重要です。
- ガス冷却の徹底:
- 火災現場では、可燃性ガスの温度が非常に高くなるため、パルス注水などの技術を活用し、事前にガスの温度を下げることが有効です。これにより、急激な加熱水蒸気の発生を抑えることができます。
- 防護具の適切な使用:
- 防火フードやその他の耐熱装備を適切に装着し、加熱水蒸気に対する防御を強化します。特に、頭部や首周りは最もリスクが高い部位であるため、しっかりと保護することが求められます。
加熱水蒸気は超高温で危険!無駄な注水は避けて、正確な放水とガス冷却を。防火フードで頭と首をしっかり守ろう!
ベンチレーション
ベンチレーションとは
風通し、通気、通風、換気のこと。
建物火災における重要な戦術の一つで、主に濃煙熱気を建物外へ排出するための手法です。
注意してもらいたいのが、ベンチレーションを行うことで、火災の進行を助長する可能性があるということです。
ベンチレーションには種類があり3つのみ覚えてください
・水平ベンチレーション
建物に水平方向に開口部(排気口)を設定しすることです。通常は窓やドアを開放する、または、破壊することで煙を送り出すことを言います。
・垂直ベンチレーション
建物に対して垂直方向(縦方向)に開口部を設定しすることです。通常は、屋根を破壊し煙や炎を垂直に送り出すことをいいます。
アメリカでは垂直ベンチレーションをすることが主流で、梯子隊がエンジンカッターやチェーンソーを使用し優先的にベンチレーションを実施します。
・水流ベンチレーション
消防隊による放水でできるベンチレーションの方法です。実施するにあたり、吸気口と排気口を設定することは大前提です。そして消防隊は広角噴霧注水が絶対です。マンションで例えると、玄関側を吸気、ベランダ側を排気とし、玄関側から噴霧注水で進入し煙をベランダ側に煙と熱気を押し出すといったところです。つまり、噴霧注水の"空気を送り込む"という特性を利用したベンチレーションということです
ベンチレーションは不必要?
ここまでベンチレーションの説明をしてきましたが、日本の消防はベンチレーションを基本的にするべきではないと考えています。
なぜかというと、日本は集合住宅が多く家屋が密集しており水平ベンチレーションを行うと出火建物の隣家に延焼してしまう危険リスクが高いこと、アメリカでは垂直ベンチレーションが主流だが日本の家屋の屋根は瓦や強固なスレートでできており開口部を開けることが困難であること、町中に電線が多く、梯子車の接岸が容易ではないことなどがあります。
そしてなりよりも覚えてほしいのが、再三言いますが ベンチレーションを行うことで、火災の進行を助長する可能性がある ということです。
隊全員が煙や炎の特性を熟知しており、実火災訓練を繰り返し行えているのであればベンチレーションをやる価値があると思いますが、次期早々と感じます。
ベンチレーションは、要救助者がいて緊急的に救出する場合や鎮圧後の排煙目的の水流ベンチレーションのみの使用でよいと思います。
参考ページ:換気は住宅タイプの消火活動において非常に重要な戦術です。火災現場で行うベンチレーションの重要性や実施方法を解説します。
ベンチレーションのさらなる詳細とリスク管理
自然ベンチレーションと機械ベンチレーションの組み合わせ
ベンチレーションには、自然換気と機械換気(ファンなどを使用)を組み合わせる手法が効果的です。自然換気は、ドアや窓を開放して煙を外に排出しますが、風の状況によっては逆効果になることもあります。そこで、大型ファンを使用して煙の排出を補助する機械換気が有効です。この方法により、煙の排出効率が向上し、隊員の安全を確保できます。
ベンチレーションとバックドラフトのリスク
火災現場では、酸素が不足している状況で突然空気が供給されるとバックドラフト(爆発的燃焼)が発生する危険があります。特に密閉された空間でのベンチレーション実施には注意が必要です。バックドラフトのリスクを最小限に抑えるために、まずは窓やドアを慎重に開け、煙の動きや炎の色を確認してから換気を開始することが推奨されます。
ベンチレーションは火災の進行を早めることがあるので注意!特に密閉された空間ではバックドラフト(爆発的燃焼)のリスクがあるため、まずは窓やドアを慎重に開けて、煙や炎の状態を確認しよう。
ドアコントロール
前述でベンチレーションの解説をしましたが、日本の消防はドアコントロールに注力すべきと考えます。
あえて換気をしないようにする、ノットベンチレートしていくのが重要です。
開口部を極力開けない、破壊しない。現場到着時開いていれば可能であれば開口部を閉めていく。
ホース延長をし屋内進入する際も最低限のドアの開放を行い空気の流入をなくし、延長してください。
屋内進入後も、建物内部のドアは進入に関係のない場所は閉めながら活動する。こうすることで火炎の拡大を防ぎ延焼防止につながり、隊員の受傷リスクもなくなります。
おすすめ動画→https://youtu.be/CBCejw4i_bA
火は酸素がないと発生しない!
開口部を閉じるだけで火は消せる!
開口部を開けたままにするな!
ドアを閉めて火の広がりを防ごう!火は酸素がないと燃えられないから、開口部は極力開けず、進入時も最小限の開放で進むのがポイントだよ。
参考ページ:消防士として、建物火災時にドアや窓、その他アクセスポイントを管理するのは、火災環境で安全かつ効果的に活動するために必要な項目の1つです。ドアコントロールの実施方法を記載します。
火災シミュレーションソフトウェア
火災シミュレーションソフトウェアは、火災現場の様々な条件をコンピュータ上で再現し、実際の現場に近い環境を作り出すためのツールです。このソフトウェアを用いることで、隊員はリアルタイムに変化する火災の状況に対応するスキルを養うことができます。主な特徴を以下に説明します。
主な機能と利点
- リアルタイムの状況再現:火災の進行、風向き、温度変化、煙の動きなど、現場で発生するあらゆる要素をリアルタイムに再現します。これにより、隊員は実際の火災と同様の状況下での判断力を養うことができます。
- サイズアップ訓練:現場到着時にまず行うべきサイズアップ(状況把握)もシミュレーション内で練習可能です。視覚的な情報だけでなく、音や温度の変化なども再現されるため、よりリアルな状況を体感しながら、適切な判断を行う訓練ができます。
- 多様なシナリオ設定:住宅火災、商業施設火災、森林火災、高層ビル火災など、あらゆる種類の火災シナリオが設定可能です。これにより、隊員は様々な状況での対応力を高めることができます。
- 放水テクニックの練習:シミュレーションソフトウェアは、異なる放水方法の効果を視覚的に示すことができます。例えば、ストレート放水とパルス放水の違い、風や温度による放水効果の変化などを確認しながら、適切な放水技術を習得できます。
代表的な火災シミュレーションソフトウェア
- FLAME-SIM:これは、消防隊員向けのリアルタイムシミュレーションプラットフォームで、火災の拡大や建物の崩壊、放水の影響などを詳細に再現します。また、チーム全体で協力して火災を制圧するための訓練も可能です。
FLIR VR: FLIR VRは、火災シミュレーション分野における最先端の技術を活用したトレーニングシステムです。FLIR社は、サーモグラフィーカメラや赤外線技術で広く知られており、この技術を仮想現実(VR)と組み合わせることで、よりリアルで詳細な火災シミュレーションを提供しています。
1. FLIR VRシステムの特徴
サーモグラフィーとVR技術の融合
FLIR VRの最大の特徴は、サーモグラフィー(熱画像技術)と**仮想現実(VR)**を組み合わせることで、従来の火災シミュレーションとは一線を画すリアルな訓練を提供する点です。実際の火災では、火災現場の温度変化や煙の動きを即座に把握することが生死を分ける重要な要素ですが、FLIR VRはこれらを正確にシミュレートします。
熱のリアルタイム可視化
火災シミュレーションでは、燃焼物や周囲の構造物がどのように加熱されていくかをリアルタイムで視覚化できます。例えば、建物内部の壁や天井がどの程度の熱を蓄積しているか、どこが最も危険な箇所であるかなどを、訓練中に確認することができます。これにより、消防士は危険箇所の特定や対応策を迅速に判断する力を養うことができます。
煙の動きと視界の再現
火災現場での煙は、視界を大幅に制限し、隊員の行動を阻害します。FLIR VRでは、煙の動きや密度、視界不良のシミュレーションが精密に再現され、隊員が視界ゼロの状況下でも正確に行動できる訓練が可能です。煙の流動パターンは、風や開口部の有無によって変化するため、これらの要因もリアルに反映されます。
消火活動の戦術訓練
FLIR VRを使用することで、消火活動におけるサイズアップ(状況把握)、放水、ベンチレーションの各戦術を統合した訓練が行えます。例えば、燃焼物の温度変化や火の広がりを見ながら、どの時点でどの放水技術を使用するか、またどのタイミングでベンチレーションを行うべきかを判断し、実践に即したシミュレーションが可能です。
2. FLIR VRの主な利点
安全性の向上
FLIR VRは、火災現場でのリスクを伴わない安全な環境で、隊員にリアルな状況を体験させることができるため、実際の現場でのリスクを大幅に軽減します。新米消防士からベテランまで、幅広いレベルの隊員が安全に訓練できるため、事故や怪我を避けながら経験を積むことが可能です。
より高精度な状況判断力の養成
FLIRの熱画像技術を活用することで、現場の温度変化や熱の蓄積箇所を正確に把握する能力を養えます。この技術は、熱による壁や天井の崩落リスクや、バックドラフトの危険性を察知する際に極めて有効です。これにより、隊員は現場での危険予知能力を向上させ、適切な行動を取るためのスキルを習得できます。
繰り返しの訓練で学習効果を最大化
VR技術の利点として、同じシナリオを何度でも繰り返し練習できる点があります。FLIR VRを用いたシミュレーションでは、様々な火災シナリオを試し、隊員が異なる戦術を検証することができます。また、実際の火災現場では一度しか経験できない特定の状況を、繰り返し体験することで、学習効果を高めることが可能です。
チームワークの強化
FLIR VRでは、複数の隊員が同時に仮想空間に入り、チームとしての連携を重視した訓練が行えます。これにより、各隊員がそれぞれの役割を理解し、協力して迅速かつ正確に行動するための訓練が可能となります。現場でのコミュニケーションの重要性も同時に学ぶことができ、より強力なチームワークを構築できます。
3. FLIR VRの具体的な活用シナリオ
住宅火災
住宅火災では、内部構造や燃焼物の特性に応じた戦術的なアプローチが必要です。FLIR VRは、部屋ごとの温度変化や煙の動きを視覚化し、どの部屋が最も危険であるかを特定しながら、適切な放水や救助活動をシミュレートします。特に、木造住宅や集合住宅での火災進行パターンを詳細に再現できます。
工場や倉庫火災
工場や倉庫では、燃焼物の特性(化学物質や可燃物など)によって火災の挙動が大きく異なります。FLIR VRは、特定の燃料の燃焼特性や、それに伴う熱変化を精密に再現し、隊員が適切な消火方法を学べる環境を提供します。また、建物の崩壊リスクや、内部の複雑なレイアウトに対しても、適切な対応を学ぶことができます。
高層ビル火災
高層ビルでは、垂直方向の火災進行や、ベンチレーションによる煙の排出方法が重要です。FLIR VRは、建物の構造に合わせた煙や火災の広がりをリアルに再現し、高層階での火災進行に対する最適な対応を訓練できます。また、エレベーターシャフトや階段を通じて火が広がる危険性についても学ぶことができます。
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