フラッシュオーバー

消防

フラッシュオーバーとは

フラッシュオーバー ( flashover )とは、爆発的に延焼する 火災現象のことです。
室内で火災による熱で可燃物が熱分解し、引火性のガスが発生して室内に充満した場合や天井の内装などに使われている可燃性素材が輻射熱などによって一気に発火した場合に生じる現象。

フラッシュオーバーとは に対する画像結果

近年のフラッシュオーバー

今日の住宅のほとんどが住宅用警報器を備えています。
警報器は、より早く避難できるよう、火災の初期段階の住民に早期警告を与えてくれます。多くの場合、フラッシュオーバーが発生する前に、消防署へ通報があります。このことにより、フラッシュオーバーの発生直前に消防士が現場到着することから、現場活動中フラッシュオーバーに見舞われることが多くなりました。

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最近の家の家具は、一世代前の家よりも多くのプラスチックが含まれています。天然繊維と木製家具、木製の床に座っていた古い家では非常に一般的でした。しかし、今の家庭では、プラスチック製の家具、処理されたファイバーボード、様々な合成物のカーペットの上で生活しており、火災の際に引火性のガスが多く発生してしまいます。

フラッシュオーバーの危険性

現在の防火衣は昔と比べると大きく進歩しましたが、それでもフラッシュオーバー条件に耐えるように設計されていません。フラッシュオーバーが発生した場合、1,000℃を超える高温の環境が一気に広範囲に広がります。
防火衣は1,000°以上の温度にさらされるとすぐに破損し消防士を受傷させてしまいます。

フラッシュオーバー発生の要因

フラッシュオーバーを防ぐ方法を理解するには、まずフラッシュオーバーとは何かを理解する必要があります。NFPA(全米防火協会)は、フラッシュオーバーを「熱放射にさらされた表面が同時に発火温度に達し、火災が空間全体に急速に広がり、部屋全体及びその他の区画が完全に関与するコンパートメント火災の発生における移行段階」と定義しています。

フラッシュオーバーに関係する要因を次に記載します。

  • 火災発生の場所
  • 区画のサイズ
  • 区画の形状、面積、容積
  • 熱増加と熱損失
  • 収容物と床壁面の材料など
  • 火災発生時の周囲温度
  • ドア、窓、開口部の位置と高さ
  • 火災成長率

フラッシュオーバーを説明するための定義や方法はいくつかありますが、最も重要なのは、完全に発達した火災の迅速な移行です。

屋内で燃えるソファや布張りの椅子などの燃料物は、いくつかの段階を経て進行します。初期の段階では、火災は少量の燃料しか関係せず、火災が成長段階に移行するにつれて、より多くの燃料が関係し、燃焼反応の速度が向上します。最終的に収容物全体が関与し、火は最盛期に発達します。燃料が消費されると、火は減退し始めます。この過程を通して、火災発生は燃料制御されます。火災の発生速度と放出されるエネルギーは、燃料の特性と構成に依存します。燃焼は屋内で行われているため、火災が4つの段階のそれぞれを通過するにつれて、燃焼をサポートするのに十分な酸素が必要となります。

熱エネルギーは、特定の質量の燃料が完全に燃焼したときに放出されるエネルギーです。物体が燃焼するときに放出されるエネルギーは、燃焼熱と燃焼した燃料の量(質量)に比例します。燃焼熱はジュール(J)で測定されます。熱発生率(HRR)は、単位時間あたりに放出されるエネルギー量です。

火が密閉されていないとき、燃えている燃料によって生成された熱の多くは、放射と対流によって外に逃げます。火災の発生は、区画内の特性の影響を受けます。部屋内の材料、壁、天井、床は、火災によって放出されるエネルギーの一部を吸収します。エネルギーの一部は吸収されませんが、燃焼燃料に放射され、燃焼過程を継続して加速させます。

火によって加熱された熱い煙と空気は、浮力により上昇し天井や壁などより冷たい材料と接触すると、熱はより冷たい材料に伝達され、それらの温度を上昇させます。この熱伝達は、区画内のすべての材料の温度を上昇させます。燃料が加熱されると、熱分解し始めます。最終的に、熱分解の速度は、燃えるような燃焼をサポートできるポイントに達し、火災は他の燃料にまで及ぶ可能性があります。
そして、区画内全ての壁や収容物が温度上昇し、発生した可燃性ガスが爆発現象を起こします。

フラッシュオーバーの前兆

・屋内が500℃以上に達し、強い熱気
・大量の濃い煙
・室内にゴースティング(炎が酸素を求めてゆらゆらとゆらめいている現象)が発生
・煙の中に炎が見え、床付近まで煙が急降下するロールオーバー現象が見られる
※ロールオーバーはアメリカでは「火の舌」や「天使の指」と表現され恐れられています。

その他に、フラッシュオーバーはコンパートメントを通って横方向に移動する急速な火炎延長がおき、外部窓が激しく破損するなどがあります。

多くの目撃者は火災が「爆発した」と証言しています。

フラッシュオーバーの前兆である警告サインを覚えてください。

ロールオーバー

抑制方法

フラッシュオーバーを抑制させる戦術があります。

その戦術は、ドアコントロールし酸素を遮断することです。フラッシュオーバー前の状態が発生している部屋のドアを閉めることによって、空気は容易に入ることができません。これは、フラッシュオーバーを遅らせる、部屋の燃焼率を低下させることができます。ドアコントロールで開口部を閉めることで、近くの他の部屋をより長い時間安全に検索できるように、差し迫ったフラッシュオーバーを抑制しています。

NFPA(全米防火協会)の研究によりフラッシュオーバーと火災を分析すると、火災が部屋全体に広がっているからといって、必ずしも部屋がフラッシュオーバーしたことを意味するわけではないことがわかります。報告によると、換気と換気制御はフラッシュオーバーが発生するかどうかの最も重要な要因の1つであり、フラッシュオーバーを遅らせるための1つの方法として換気を説明しています。

ドアコントロール

フラッシュオーバーを抑制する最終的な方法は、水で空間冷却することです。高熱層に水の流れを向け、ガスを冷却します。この室内温度の低下は、室内のフラッシュオーバーのプロセスを遅くすることができます。

部屋を冷しても状況が悪化した場合は、状況を再評価してください。


ただ、放水時の空気の流入や、水蒸気の発生には注意が必要です。
これらを回避するために屋内進入する際は、トランディショナルアタックで空間冷却をすることがおすすめです。

トランディショナルアタック

フラッシュオーバーを生きたまま脱出する可能性は低く、怪我をせずにフラッシュオーバーから脱出することはほぼ不可能です。警告サインを知ることは命を守る大きな鍵になり、すぐに脱出するための合図です。この複数の警告サインは、フラッシュオーバー発生まで時間にして平均7〜10秒程度です。つまり、最良の行動は、警告サインに反応して10秒以内に安全区間に到達することです。10秒という時間は、屋内進入中の消防士で平均2m移動できる距離です。

完全なPPEが必須ですが、必ずしも命を守れるとは限りません。フラッシュオーバー中の室内温度は、PPEの限界を超えます。ドア、窓、隣接する部屋など、脱出ポイントまたは避難エリアを常に検討するようにしてください。

煙の色

煙の色も考慮される場合が多いが、煙の色とフラッシュオーバーの危険性との間には関係がありません。近年まで黒い濃い煙は特に危険であると考えられていましたが、過去の火災が信頼できない指標であることを示しています。例えば、1975年にロンドンのゴムマットレス工場で白い煙を発生させる火災がありフラッシュオーバーにより、消防士数人が殉職しました。

※すべての火災がフラッシュオーバーに進行するわけではありませんが、すべての火災にフラッシュオーバーの可能性があります。

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