火災性状

消防

適切な消火活動を実施するには、まず火災性状を知ることが重要です。火災性状を知って上で消火理論を考え現場活動することが最善です。

火の発生方法を知らなければ、火の消火方法もわからない!

火災の定義

「火災」とは、人の意図に反して発生し若しくは拡大し、又は放火に より発生して消火の必要がある燃焼現象であって、これを消火するために 消火施設又はこれと同程度の効果のあるものの利用を必要とするもの、又 は人の意図に反して発生し若しくは拡大した爆発現象をいう。


燃焼の4要素(FIRE TRIANGLE)

モノが燃えるには、次の4つの要素が必要です。これらを燃焼の4要素といいます。

  • 可燃物
  • 酸素供給体
  • 点火源(熱源)
  • 化学連鎖反応

可燃物

可燃物とは「燃える物質」です。
木材、紙、油などです。

消防士として知っておくことは、煙も可燃物になるということです。

酸素

酸素を含み、供給する物質です。
可燃物に結びついて可燃物を燃やすもの。

熱源(エネルギー)

火気や火花、静電気などの熱源(点火エネルギー)のことです。
火気、火花、静電気、摩擦熱などです。

化学連鎖反応

燃焼が継続していくためには連続した酸化反応が必要です。
酸化の連鎖反応のことを燃焼の継続といいます。


煙を知ることが現場活動に役立ちリスク回避にもつながります。

煙とは、不完全燃焼によって発生した固体や液体の微粒子を含んだ空気のことを言います。

煙のことを気体のみだと思っている人も多いですが、煙は気体だけでなく固体や液体も混ざっています。

物が燃えるところを想像してほしいですが、煙が発生する場合と煙が発生しない場合があります。

この煙が発生する場合が”不完全燃焼”になります。

不完全燃焼とは物が燃えるときに、空気中の酸素が足りずに炭素とうまく合体できない状態になります。

そして炭素はしっかり酸素と合体することができれば二酸化炭素になりますが、酸素が足りていなければ炭素は一酸化炭素という有毒の気体に変化します

化学式として見れば二酸化炭素は”CO2”、一酸化炭素は”CO”となります。

酸素(O)が足りていない状態で発生するのが一酸化炭素です。

一酸化炭素には中毒性があり、少し吸うだけでもとても危険です。




黒い煙と白い煙の正体は?

黒い煙と白い煙の正体とは何か‥

結論から言ってしまうと、黒い煙は炭素の微粒子で白い煙は水の微粒子です。

つまりは黒い煙は炭素(固体)の小さな粒が集まってできていて、白い煙は水(液体)の小さな粒が集まってできているということです。

黒い煙と白い煙のほとんどがこれに当てはまります。

白い煙というのは水蒸気と考えてください。すべてではないですが‥

火事での煙と言えば私たちが想像するのは、多くが黒い煙のことと思います。

煙とは不完全燃焼によって発生した固体や液体の微粒子を含んだ空気のことですが、これはどちらかと言えば黒い煙のことを指しています。

そして物が燃えて不完全燃焼した場合には、炭素の微粒子だけでなく一酸化炭素についても発生します。
(不完全燃焼で発生した炭素の微粒子のことを煤(すす)と言います)

物が燃えて酸素が足りているとき(完全燃焼)は二酸化炭素が発生して、酸素が足りないとき(不完全燃焼)は炭素の微粒子と一酸化炭素が発生します

何度も言いますが、黒い煙には有毒の一酸化炭素が含まれている可能性が非常に高いです。


建物火災時には一般にどのようなガスが発生し、そのガスはどのような毒性があるか

一酸化炭素(CO)
COを 吸入すると血液中のHb(ヘ モグロ ビン)と強く結合 し,血液の酸素運搬能力 を減じ,組織の酸素不足 を招来して酸素不足に敏感 に反応する脳細胞にまず障害 がおよぶ。住宅火災で発生する煙の物質の半数が一酸化炭素でできている。

シアン化水素(HCN)
極めて微量であっても猛毒性があり,生体の酸化酵素の鉄分子と結合して酸素活性作用を阻害し,胸
部を締あっけられるような疼痛とともに呼 吸困難 に陥り,ついには死 にいたる。


その他のガス
NH3(アンモニア),NO2(二酸化窒素),SO2(二酸化硫黄),水素アルデヒド等

物質の発火点

物質を空気中で加熱するとき、火源がなくとも発火する最低温度を発火点という。
物質名発火点(℃)物質名発火点(℃)
水素500ゴム350
メタン537コルク470
エタン520~630木材250~260
プロパン432ディーゼル燃料油225
エチレン450模造紙450
アセチレン305さらし木綿495
一酸化炭素609木炭250~300
硫化水素260二硫化炭素90
二硫化水素346~379泥炭225~280
ベンゼン498アニリン615
コンプレッサー油250~280アセトン469

黒煙は煤や一酸化炭素が多く含まれており、活動の際は注意が必要。

不完全燃焼時の黒煙に存在する一酸化炭素にも発火点があり、煙は燃えるというのを周知しておく。

火を押す(PUSHING FIRE)

煙と火の流動性について解説します。

大量放水や流量の誤った勢いのある放水等では、水蒸気の膨張や放水の勢いにより火勢が押し出され、延焼拡大されることがある。

以下の動画で放水による延焼拡大がわかります。流量の少ないストレート放水ですと、空間冷却され熱成層が崩れないのですが、噴霧で放水すると熱成層が崩れ 余分な放水の勢いにより火勢が押し出されるのが確認できます。

動画を見たらわかるように、噴霧注水は火勢を押し出してしまうデメリットがあります。その点適正な流量のストレート放水では、熱成層をつぶさずに火を延焼させることもありません。

👆絶対ダメ!霧の流れが窓を覆い、火が通るのを防ぎます。これにより、蒸気とガスが構造物の内部に押し込まれる可能性があります。

噴霧注水は熱成層をつぶし、水蒸気を大量に発生させてしまいます。そして煙の吹き返しにより隊員が受傷してしまう危険があります。その点ストレート放水は空気を送り込まず、乱流防止効果がある。

志太消防さん検証ありがとうございます‥<m(__)m>

日本で起きた実際の火災動画ですが、消防隊到着前より消防隊到着しの放水開始後(1:40以降)のほうが炎の勢いが増しているのがわかります。おそらく動画の奥側から噴霧放水したため火が押されたこと及び空気が流入し延焼が増したと思われる。
動画30秒では1階の一室及び2階部分の一部が延焼しているのみであるが、間違った放水により火勢を拡大させている。

消防士が火災を拡大させるな!!
効果のある放水をせよ!!

煙や火は流動しやすい

基本的に放水はストレートを優先することが望ましい


水で火が消えるのはなぜ?

水は消火剤として非常に優れています。 その理由は、水が熱を奪い、火の燃焼に必要な温度を下げるからです。 また、水がかかると、燃えている物に酸素が届かなくなり、火が消えます。 さらに、水は気化する際に多くの熱を吸収するため、火を消す効果が高いのです。

しかし水も使い方を誤ると

しかし、水を使う際には注意が必要です。 例えば、熱をたくさん持った物質に水をかけると、大量の水蒸気が発生します。 この水蒸気は上昇し、周囲の空気と混ざりながら熱を放出し、天井付近の煙を下に引き下げることがあります。 この現象が起きると、消防隊員などにとって危険な状況が生じることがあります。

総じて、水は非常に効果的な消火剤ですが、使用する際には慎重さが求められます。 消防活動は複雑で、一つの完璧な方法はないと言えます。

放水は使い方を誤ると、燃焼を拡大させてしまい殉職事故にもつながる。

ろうそくはなぜ燃える?

 ろうそくの成分はパラフィンで、主に炭素と水素からできています。

 点火すると、まず芯に火がつき、その熱でロウの成分(パラフィン)がとけて液体になります。

 液体になったパラフィンは、毛細管現象で芯を伝わって上昇し気化します(蒸気になる)。

 気化したパラフィンは、炎の中でさらに加熱によって分解されます。炎のまわりから空気が入り込んできて、酸化反応が起こり、燃えます。

 燃えると多量の熱を発生するので、周囲のロウを加熱してとかし分解を起こさせるので、燃え続けることができます。

ろうそくは、芯のみが燃えているわけではなく、パラフィンが気化したガスに引火し燃えています。前述でも説明した通り、火災の際発生する煙は燃えるものですので、熱源がある限り炎は燃え続きます。


かかし放水は意味がない?

この動画を見てもらいたいのですが‥

1:10くらいから放水するのですが、発火した煙(可燃性ガス)に放水しているだけで、燃焼物自体に放水しないと消えないのがわかると思います。

皆様も理解していると思っていますが、火の消し方は消火器と同じで、燃え盛る炎に放水しても効果はなく、火元に水をまかないと火は消えません。




まとめ

放水は基本ストレート放水を優先し選択する

放水流量に注意し、熱成層を破壊しない。火を押さない

煙は可燃物である

コメント

  1. 助ける人 より:

    プッシングファイア。これを理解しているかしていないかでは救える命と隊員自身の安全にかなり影響していますよね。ストレートより噴霧のほうが、ノズルから出る水の範囲が広い為に選択したくなりますが、それを行う事によって火災を消すどころか延焼と受傷につながる。火災を消す事をしなければならない人達はこれを理解する必要がありますね。

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