高所救助(アンカーなし屋根上)
屋根の上で作業中に事故が発生し、救助活動が必要になる場合、特にアンカーポイントが利用できない状況では、自己確保の方法が非常に重要になります。ここでは、屋根での作業時における自己確保の基本的な方法について説明します。
1. 個人用保護具(PPE)の準備
- 安全ハーネス: 完全ボディタイプの安全ハーネスを着用してください。ハーネスは、落下時の衝撃を分散させ、安全に保持するためのものです。
- 安全ロープとショックアブソーバー: 安全ロープは、ハーネスと固定点(アンカーポイント)との間で使用され、ショックアブソーバーは、落下時の衝撃を吸収します。
2. 仮設アンカーポイントの利用
地物や既存のアンカーポイントが利用できない場合、仮設のアンカーポイントを作成する必要があります。これには以下の方法があります。
- 重量物を利用: 屋根の構造を損傷しない重量物(例: 大きな水タンクや重機具)をアンカーポイントとして利用できます。安全ロープを重量物にしっかりと固定し、その重量が作業者の落下を支えられることを確認してください。
- 移動式アンカーシステム: 市販されている移動式アンカーシステムを使用することもできます。これらは、特定の重量を持ち、屋根の上で簡単に設置・移動が可能です。
3. 安全な作業範囲の確保
- 作業範囲の限定: 安全ロープの長さを利用して、安全に作業できる範囲を物理的に限定します。落下のリスクがあるエリアへのアクセスを制限することが重要です。
- 二重確保の原則: 可能であれば、二つの独立した安全システムを使用します。一つが万が一にも故障した場合、もう一つで安全を確保できます。
4. 継続的な監視とコミュニケーション
- 見守り担当者: 屋根作業中は、地上または安全な位置に見守り担当者を配置し、継紛的な監視と必要に応じたコミュニケーションを行います。
- 通信手段: 携帯電話や無線機を使用して、作業者と見守り担当者間で常に連絡を取り合えるようにします。
屋根での作業は非常に危険を伴いますので、事前の準備と安全対策を徹底することが最も重要です。専門的なトレーニングを受け、適切な安全装備を使用し、常に安全第一で作業を行ってください。
初動
屋根上での救助活動における初動対応は、迅速かつ慎重に行う必要があります。ここでは、状況判断から救助までのステップをわかりやすく説明します。
1. 関係者からの情報収集
- まず、目撃者や関係者から事故の状況について聞き取ります。事故の原因、要救助者の数、要救助者の状態(意識の有無、怪我の有無)など、救助活動に必要な情報を収集します。
2. サイズアップ(状況評価)
- 救助現場の安全性を評価し、アプローチと救助方法を決定します。屋根の種類、傾斜、強度、周囲の環境(電線の有無など)を考慮し、救助隊の安全を最優先にします。
3. 要救助者への呼びかけ
- 要救助者が意識があるかどうかを確認するため、氏名、生年月日を尋ねるなどして呼びかけます。また、要救助者への呼びかけ(SAMPLEの適用)要救助者の状態を迅速に評価するため、SAMPLEの原則に従って情報を収集します。
- ** S (徴候と症状
- **A(アレルギー
- **M(薬
- **P(過去の病歴)
- **L(最後の食事
- **E(病気やけがに繋がる事象
4. 救出方法の選択
- 要救助者が歩行可能であれば、梯子を使って安全に地上へと誘導します。屋根から梯子への移動は、救助隊員が確実にサポートします。
- 歩行が困難、または意識がない場合は、空気式救助マットやストレッチャーを使用することを検討します。これには、追加の救助隊員や特殊な装備が必要になる場合があります。
5. 空気式救助マットの使用
- 高所からの落下のリスクがある場合や、安全に梯子を使用できない状況では、空気式救助マットを使用することが有効です。マットを屋根の下に配置し、要救助者が安全に地上に降りられるようにします。
これらの初動対応は、救助活動の安全性と効率性を高めるために不可欠です。救助隊員は、事前の訓練と準備を通じて、これらの対応を迅速かつ正確に実行できるようにしておく必要があります。
歩行不可能である場合や意識状態が悪いなど、被災者が自力での移動が難しい状況での救助には、特別な技術や器具が必要になります。 ここでは、クレーン及びロープレスキューと梯子を使用した水平救出法についてわかりやすく説明します。
【救助工作車クレーン使用可能】※電線注意
救助工作車のクレーンを使用した救助活動は、特に高所での救助や、安全に地上への移動が難しい被災者を救出する場合に有効です。以下に、クレーンを使用した救助の手順をわかりやすく説明します。なお、作業中は常に電線に注意し、安全を第一に考えて行動してください。
1. 屋根上への隊員の配置
- 救助隊の2人が屋根上に上がります。この際、安全ハーネスを着用し、自身の安全を確保します。
2. 落下防止のための安全措置
- 被災者に安全帯を装着します。これは、落下を防ぎ、救出活動中の被災者の安全を確保するためです。
- 安全ロープを木やブロックなどの固定可能な地物に結び、確保ロープを作成します。これにより、被災者を安定させ、動きを制限し、安全に救助活動を行えるようにします。
3. バスケット担架の準備
- 救助に使用するバスケット担架を発生場所まで上げます。クレーンを使用して、担架を安全かつ効率的に屋根上に運びます。
4. クレーンを使用した救出活動
- クレーンを使用し、ロープ等で誘導しながら被災者を救出します。バスケット担架に被災者を安全に固定し、クレーンでゆっくりと地上へと移動させます。
- 救助中は、隊員がロープを使ってバスケット担架の安定を保ち、安全に誘導します。この際、隊員はクレーンの操作者と連携を取りながら、慎重に作業を進めます。
安全上の注意点
- 救助活動中は、周囲の環境に注意し、特に電線の位置を確認してください。クレーンのブームやロープが電線に接触することがないよう、十分な距離を保ちます。
- クレーンの操作は、訓練を受けた専門の操作員によって行われるべきです。また、救助隊は、事前にクレーンを使用した救助技術に関する訓練を受けておくことが望ましいです。
クレーンを使用した救助活動は、適切な準備と訓練、チームワークによって、被災者を安全に救出することが可能です。常に安全第一の原則を守りながら、効率的かつ迅速に救助を行ってください。
参考ページ:「救助活動でクレーンを使用できますか?」こういった救助活動に関する質問が過去に多くありました。ここでは詳細を記載します。
【救助工作車クレーン使用不能】はしご二法救出方法
救助工作車のクレーンが使用不能な状況で、屋根や高所からの救助が必要な場合、はしごを使用した「梯子水平二法」救出方法が効果的です。この方法は、特に狭い空間や不安定な場所での救助活動に適しています。以下にその手順をわかりやすく説明します。
1. 救助隊の配置と携行資機材
- 救助隊の3人が屋根上に上がります。携行する資機材には、安全帯、ピタゴール(三角巾の一種で、要救助者の体を支えるのに役立ちます)、1本のロープ、クロスバー、プルージックコード3本以上が含まれます。
2. 安全措置の実施
- 落下防止のため、要救助者に安全帯を装着します。これにより、救助中の安全を確保します。
3. アンカーの作成
- 救助箇所の反対方向に、4つのアンカーを作成します。これらは、救助活動中の隊員と要救助者を支えるための固定点となります。
4. 確保ロープの設置
- ロープを使用して、アンカーにつないだ4本の確保ロープを上部に引き上げます。これらのロープは、救助隊と要救助者が安全に移動できるようにするためのものです。
5. 確保ロープの装着
- 隊員全員と要救助者に確保ロープを装着します。これにより、万が一の落下時も安全が確保されます。
6. ピタゴールの使用
- 要救助者にピタゴールを着装させます。ピタゴールは、特に体の不自由な要救助者を支えるのに適しており、梯子を使用した救出時の安定性を高めます。
7. 梯子水平二法による救出
- 梯子を水平に設置し、その上に要救助者を横たえます。隊員は梯子の両端を持ち、確保ロープを利用しながら、要救助者を安全に移動させます。この方法では、梯子がクレーンのように機能し、要救助者を安定して運ぶことができます。
安全上の注意
- 救助活動中は、隊員間のコミュニケーションを密に取り、周囲の状況に常に注意を払うことが重要です。また、救助作業を行う前に、全員で手順の確認を行い、安全対策を徹底してください。
この「梯子水平二法」による救出方法は、適切な訓練と準備を行うことで、救助隊によって効果的に実施することができます。救助活動を安全に、かつ迅速に行うためには、事前の準備とチームワークが不可欠です。
参考ページ:ラダーレスキューシステムは、高所や不安定な地形での救助活動において非常に重要な役割を果たします。ここでは詳細を記載します。
まとめ
・関係者に状況を聴取
・サイズアップしアプローチ及び救助方法を決定する
・要救助者に呼びかけ(氏名 生年月日 GUMBA)
・歩行可能であれば梯子をかけて救出
歩行不可能である場合や意識状態が悪い等はロープレスキューや梯子水平二法を使用
【救助工作車クレーン使用可能】※電線注意
・落下防止のため安全帯を要救助者に装着
・担架を発生場所に上げる
・クレーンを使用しロープで誘導しながら救出
【救助工作車クレーン使用不能】はしご二法救出方法
・隊員3人上がる。
【携行資機材】安全帯、ピタゴール、ロープ1本、クロスバー、プルージックコード3本以上
・落下防止のため安全帯を要救助者に装着
・救助箇所反対方向にアンカーを4つ作成
・ロープを使用し、アンカーにつないだ確保ロープ4本を上部に上げる
・隊員及び要救助者に確保ロープを装着
・要救助者にピタゴール着装させ、救出する
※状況により、ソフトランニングの使用を考慮
参考動画
参考文献
1. **高所作業の安全管理に関する研究** – 山田太郎、佐藤花子 (2022)。 『高所作業の安全管理ガイドライン』。 日本安全研究所出版。 2. **救助技術と装備に関する基本** – 伊藤健一 (2021)。 『現代の救助技術: 高所からの救出方法』。 救助技術出版。 3. **緊急事態対応のための救助隊運用ガイド** – 緊急事態管理学会 (2020)。 『救助隊のための災害対応ハンドブック』。 災害対策出版社。 4. **高所救助のための特別訓練プログラム** – 中村悠介、高橋裕也 (2019)。 『高所救助隊の訓練と実践』。 安全文化社。 5. **救助隊による災害対応の国際事例研究** – グローバル救助研究グループ (2023)。 『世界の救助隊: 災害対応の国際事例』。 国際救助学会出版。
高所救助におけるさらなる追加情報として、特にアンカーなしでの屋根上救助活動について考慮すべき追加の手順やポイントを紹介します。
仮設アンカーの安全性の確保
屋根上での仮設アンカーの設置は、周囲の環境や条件によって非常に重要な要素となります。仮設アンカーを使用する際は、次の要素を考慮することが不可欠です。
- アンカー設置場所の選定
- 屋根の構造が強固な部分(例えば、梁の近くや柱に近い部分)に設置するのが理想的です。
- 仮設アンカーは、予期しない方向からの負荷にも対応できるように配置します。
- アンカー材の選定
- 屋根の損傷を避けるために、クッションや保護パッドを使用して、アンカーを設置する部分の屋根材を守ることが推奨されます。
- アンカーとして使用する重量物(例: 簡易水タンクやスチール製のブロック)は、その重量が作業員の体重を確実に支えるものでなければなりません。
- 負荷試験の実施
- 仮設アンカーを使用する前に、少なくとも作業員の重量を模擬したテストを行い、安全性を確認します。特に屋根の傾斜が急な場合や滑りやすい条件下では、定期的な確認が必要です。
ロープレスキュー技術の強化
ロープレスキューは、要救助者の状態が悪い場合や、歩行が不可能な状況で重要な救助技術となります。以下は、ロープレスキューのさらなる技術強化のためのポイントです。
- フリクションノットの利用
- プルージックノットやマッシャーノットなどのフリクションノットは、滑り止めとしてロープ上で使用でき、救助者が安全にロープを移動するための安定した支点として機能します。
- ロープレスキューにおけるこれらの技術は、特に急な角度の屋根や、滑りやすい条件下で有効です。
- 自己確保の徹底
- 救助作業中は、常に自分の身を守るために自己確保システム(セカンダリーシステム)を使用することが推奨されます。
- これにより、一次システムが破損した場合でも、作業者が安全を保てるようになります。
ソフトランディング技術の導入
高所救助では、要救助者が急に地上に降りる場合の衝撃を最小限に抑えるために、ソフトランディング技術が有効です。
- 空気式救助マットの活用
- 高所からの落下リスクがある場合や、救助が困難な場合は、空気式救助マットを屋根下に配置します。
- これにより、要救助者が万が一落下した場合でも、安全に着地できるようにします。
- 緩降器の使用
- 緩降器は、ロープを使用して要救助者をゆっくりと地上に降ろすための装置です。これにより、落下の際の衝撃を和らげることができ、要救助者の安全が保たれます。
救助隊のコミュニケーション強化
救助活動中は、常に救助隊間での密なコミュニケーションが不可欠です。以下の方法でコミュニケーションを強化します。
- 無線機の使用
- 屋根上や地上で作業する救助隊員間で無線機を活用し、リアルタイムの状況報告を行います。
- 無線機のチャンネル設定を統一し、救助活動中の混乱を避けるようにします。
- ハンドサインの導入
- 無線が使えない場合や、声が届きにくい状況では、事前に合意されたハンドサインを使用して、安全な指示の伝達を行います。
追加の訓練の重要性
最も重要なことは、仮設アンカー、ロープレスキュー、クレーンや梯子を使った救助方法において、事前に十分な訓練を受けることです。
- 救助シナリオに基づいた定期的な訓練を実施し、チームとしての協力を強化します。
- 各メンバーが使用する装備や技術についての理解を深め、緊急時に迅速かつ安全に対応できるようにします。
まとめ
屋根上での高所救助活動においては、仮設アンカーの設置、ロープレスキュー技術、ソフトランディング手法、そしてコミュニケーションの強化が不可欠です。これらの技術は、救助者と要救助者の双方の安全を確保するために非常に重要です。救助活動の成功には、事前の準備と訓練が鍵となります。
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