ロープレスキューは、急斜面や高所での救助活動に用いる技術で、ロープを使って安全に人や荷物を移動・救出します。アンカー構築、結び目の使用、エッジ管理、下降・上昇技術などが求められ、効率的かつ安全な作業が可能になります。
アンカー
アンカーはロープ救助やクライミングで非常に重要な役割を果たします。アンカーを選択する際に考慮すべき主な要素は以下の通りです:
- 強度と信頼性:アンカーは使用される予定の最大荷重に耐えることができる必要があります。人工アンカーの場合、製品の定格や設置された状態を確認することが重要です。天然アンカーの場合は、岩や木の安定性と強度を評価する必要があります。
- 冗長性(レダンダンシー):単一のポイントに依存せず、複数のアンカーポイントを使用してシステムを構築することが推奨されます。これにより、一つのアンカーポイントに問題が発生した場合でも、システム全体が安全を維持できます。
- 方向性:アンカーは、予想される荷重の方向に対して適切に配置される必要があります。荷重の方向が変わる可能性がある場合は、それに適応できるようなアンカーシステムを構築することが重要です。
- 環境への影響:特に天然アンカーを使用する場合、環境への影響を最小限に抑えることが望ましいです。例えば、生きている木をアンカーとして使用する場合は、樹皮へのダメージを避けるための措置を講じる必要があります。
- アクセスと設置の容易さ:アンカーは迅速かつ安全に設置できる必要があります。複雑な設置が必要なアンカーは、緊急時の対応に影響を与える可能性があります。
アンカーの種類の例
人工アンカー:
- ボルト:岩や壁に固定された金属製のアンカー。非常に信頼性が高いが、設置には専門的な技術が必要です。
- 支柱:地面や雪に打ち込むための金属製の杭。テントの設置や簡易的なアンカーポイントとして使用されます。
- 車両:固定された車両をアンカーポイントとして使用することができますが、車両の安定性を確認することが重要です。
天然アンカー:
- 岩:大きくて安定した岩をアンカーポイントとして使用します。岩の形状や配置によっては、特定の方向にのみ強度があります。
- 木:太くて健康な木をアンカーとして使用できますが、樹皮を保護するための措置が必要です。
組み合わせアンカー:
- クライミングカム、ピトン、アイススクリュー:これらは岩や氷に設置される可動式のアンカーデバイスで、柔軟な使用が可能だが、適切な設置技術が要求される。
シングルポイントアンカー
シングルポイントアンカーは、登山やクライミングなどのアクティビティでよく使用されるアンカーシステムの一種です。このタイプのアンカーは、一つの強固な固定点に依存します。簡単に言うと、クライマーは一つの確実な点を選んで、そこにロープや装備を固定します。これが「シングルポイント」と呼ばれる理由です。
シングルポイントアンカーの最大の利点は、そのシンプルさにあります。強力で信頼性の高い固定点が一つあれば、それを利用して迅速にアンカーを設置することができます。これにより、設置にかかる時間を短縮し、緊急時や素早い行動が求められる場合に特に有効です。
ただし、シングルポイントアンカーはその固定点の強度と安定性に全面的に依存しているため、選択する固定点は非常に慎重に選ぶ必要があります。固定点が弱かったり、不安定だったりすると、アンカーシステム全体の安全性が脅かされることになります。
アンカーストラップ
アンカーストラップは、救助活動や登山などで使用される便利な安全装置の一つです。このストラップは、両端にDリング(D字型の金属リング)が縫い付けられているのが特徴です。このDリングを利用することで、結び目を作る必要なく、迅速に設置や取り外しが可能になります。
アンカーストラップの使い方は簡単で、Dリングをアンカーポイントや他の装備に引っ掛けるだけで、しっかりとした固定が行えます。結び目を結ぶ時間が節約できるため、緊急時には特に重宝されます。また、結び目が不要なので、結び方を覚える必要がなく、取り外しも簡単です。
救助活動では、時間との戦いが常にあります。アンカーストラップはその迅速な取り付けと信頼性の高さから、救助隊にとって非常に価値のあるツールとなっています。安全を確保しながらも、迅速に行動することが求められる場面で大きな助けとなります。
シングルループアンカー
シングルループアンカーは、ウェビングやコードを使って作る簡単なアンカーシステムです。このシステムは、ウェビングをループ状にして、その両端を水の結び目(ウォーターノット)で結ぶことによって作成されます。ウォーターノットは、ウェビングを繋げるための基本的な結び方で、強度と信頼性を提供します。
シングルループアンカーの主な利点は、そのシンプルさと経済性です。必要なのはウェビング(またはコード)だけなので、コストを抑えながらも効果的なアンカーシステムを構築することができます。また、設置が簡単であるため、さまざまな状況に迅速に対応することが可能です。
しかし、シングルループアンカーには欠点もあります。一つは、このアンカーが物体に固定されていないため、上下にスライドする可能性があることです。これは、特定の用途において安定性を欠くことを意味します。もう一つの欠点は、ウェビングを物体に巻き付けた後で結び目を結ぶ必要があることです。これは、特に狭いスペースや緊急時には手間がかかることがあります。
シングルループアンカーは、そのシンプルさから多くの場面で便利に使われますが、使用する際にはこれらの限界を理解し、状況に応じて他のアンカーシステムを検討することが重要です。
ラップ3プル2アンカー
ラップ-3-プル-2アンカーとラップ-2-プル-1アンカーは、特に救助活動で使用されるアンカーシステムの一種です。これらのシステムは、ロープやウェビングを固定物体に数回巻きつけて(ラップ)、そのうちのいくつかのストランド(プル)にカラビナを接続することで構成されます。ラップ-3-プル-2では、3回巻きつけて2つのストランドにカラビナを接続し、ラップ-2-プル-1では、2回巻きつけて1つのストランドにカラビナを接続します。
この方法の主な目的は、固定物体の周りにロープやウェビングを巻くことで、結び目への負荷を分散させ、摩擦を利用して応力を軽減することにあります。この摩擦がアンカーシステム全体の安定性を高め、結び目にかかる負担を減らすため、安全性が向上します。
しかし、このアンカーシステムの弱点は、カラビナがロープやウェビングに接続される部分にあるとされています。この接続点が最も負荷が集中しやすく、システムの全体的な強度を左右するため、非常に注意深く管理する必要があります。結び目が安全上の問題を引き起こすと考えられる場合、問題の根源は実際にはこの接続点にあるかもしれません。そのため、アンカーの安全性を高めるためには、この接続点の強化や、アンカーシステムの別の構成方法を検討する必要があります。
バスケットヒッチアンカー
バスケットヒッチアンカーは、予め結ばれたループ(ウェビングやロープなど)を使って、物体の周りに巻き付けて作るアンカーシステムです。この方法の大きな利点は、事前に準備されたループを使用するため、迅速に取り付けることができる点にあります。また、ループを物体に巻き付けることで、4本のストランドが力を分散させるため、非常に強い固定力を得ることができます。
しかし、バスケットヒッチアンカーにはいくつかの欠点もあります:
- 三軸荷重のリスク: ループの長さや巻き付ける物体の直径によっては、カラビナに不均等な力がかかり、三軸荷重(カラビナに予想外の方向から力がかかること)が発生する可能性があります。これはカラビナの強度を低下させ、安全上のリスクとなり得ます。
- スライドする可能性: バスケットヒッチアンカーは、固定されたアンカーポイントに対して自由に動くことができるため、特定の状況下では上下にスライドすることがあります。これはアンカーの位置が不安定になる可能性があるため、注意が必要です。
- 材料の必要量: バスケットヒッチを作るためには、シングルループアンカーよりも多くのウェビングやロープが必要になる場合があります。これは、特に材料が限られている状況では不利になることがあります。
バスケットヒッチアンカーは、そのシンプルさと強度から多くの場面で有効に使われますが、使用する際には上記の欠点を理解し、適切に対処することが重要です。
ガース・ヒッチ・アンカーズ
ガースヒッチアンカーは、ウェビングやロープなどのあらかじめ結ばれたループを使用して作成されるアンカーシステムです。このシステムの作成方法は、ループの一方の端を物体の周りに巻き付けた後、もう一方の端をそのループの中に通して引き締めることにより、物体の周りに固定します。これにより、物体に対して強固な固定を行うことができる「胴回りヒッチ」が形成されます。
ガースヒッチアンカーの利点は、その簡単な組み立てと迅速な設置が可能であることです。標準的なウェビングやロープを事前に準備しておくことで、必要な時にすぐにアンカーを作成し、使用することができます。
しかし、欠点としては、ガースヒッチアンカーが地物に正しく配置されていない場合、ウェビング同士がこすれ合ってナイロンの破損を引き起こす可能性があるという点です。これは、ウェビングが2:1のレバレッジ(力の倍率)を受けることによって発生するリスクです。適切な位置決めと注意深い確認により、このリスクは軽減されますが、救助者や使用者はこの点を意識しておく必要があります。
参考ページ:ここではロープレスキューに使用する資器材について、詳細を記載します
マルチポイントアンカー
マルチポイントアンカーとは、複数の固定点(例えば、木や岩など)を利用して作成されるアンカーシステムのことを指します。このシステムは、一つの固定点だけでは十分な強度がない場合や、引っ張る力(プル)の方向が既存の固定点と一致しない時に特に有効です。
マルチポイントアンカーを作る主な利点は、複数の固定点を組み合わせることで全体の強度を増すことができる点です。これにより、より安全に重い荷物を支えたり、クライマーが使用する際の安定性を向上させることができます。
しかし、マルチポイントアンカーには欠点もあります:
- 時間と材料の消費: 複数の固定点を正確に結び付けるには、一つの固定点を使用するよりも多くの時間と材料が必要になります。これは、特に緊急時や素早い対応が求められる状況では不利になることがあります。
- 力の乗算効果: アンカーに接続されたロープの角度が不適切な場合、予想よりも多くの力がアンカーポイントに加わる可能性があります。これは、ロープの角度によって力が乗算されるためで、アンカーの一部が予期せず大きな負荷を受ける原因となることがあります。
マルチポイントアンカーを構築する際には、各固定点を適切に配置し、ロープの角度を考慮して全体のバランスを取ることが重要です。これにより、アンカーシステム全体の安定性と強度を最大限に引き出すことができます。例えば、2本の木を利用してアンカーを作る場合、それらを引っ張る方向に沿って適切に配置し、ロープやウェビングを使って両点を結び付けることで、安定したマルチポイントアンカーを作成することができます。
弱いアンカーに対応するマルチポイントアンカー
弱い単一のアンカーポイントに対応するため、または全体の安全性を高めるために、マルチポイントアンカーを使用することが一般的です。このアプローチでは、複数の固定点を利用して一つのアンカーシステムを構築します。たとえ個々の固定点がそれ単体では十分な強度を持たない場合でも、複数を組み合わせることで全体の強度と安定性を向上させることができます。
マルチポイントアンカーの構築は、冗長性を確保するためにも重要です。冗長性とは、一つのアンカーポイントが故障した場合に備えて、システム全体が持続するように設計されていることを意味します。これにより、一つのポイントが故障しても、残りのポイントが負荷を支え続けることができ、全体の安全性が確保されます。
マルチポイントアンカーを設計する際には、いくつかの点を考慮する必要があります:
- 故障時の影響: アンカーの一つが故障した場合、システム全体にどのような影響があるかを理解することが重要です。理想的には、一つのポイントが失敗しても、残りのアンカーポイントが安全に荷重を支え続けることができるように設計されているべきです。
- 荷重の分配: 全てのアンカーポイントに均等に荷重が分配されるようにシステムを配置することが理想的です。これにより、一つのポイントに過度の負荷がかかることを防ぎます。
- 拡張と衝撃荷重: 一つのアンカーポイントが故障すると、システムに「拡張」が発生し、残りのポイントに衝撃荷重が加わる可能性があります。この衝撃荷重は、予期せぬ力として作用し、他のアンカーポイントにも影響を及ぼす可能性があるため、設計時にはこの点を考慮する必要があります。
マルチポイントアンカーシステムを構築することで、各アンカーポイントの弱点を補い合い、より安全で信頼性の高い固定を実現することができます。アンカーシステムの設計と構築には慎重な計画と理解が必要であり、特に安全に関わる活動においては、専門的な知識と技術が求められます。
アンカーは救助やクライミングにおいて大事な役割を果たすよね。ポイントは「強度」「信頼性」「冗長性」「方向性」「環境への配慮」「設置の簡単さ」だよ。強さは荷重に耐えること、特に人工アンカーなら製品のチェック、天然アンカーなら安定性を確認が必須!そして冗長性ってのも大事で、単一に頼らず複数のポイントで安全確保。荷重の方向にしっかり合うように配置するのも忘れずに!環境にも配慮して、例えば木を使うなら樹皮を傷めないようにしよう。アンカーは緊急時でも簡単に設置できるのが理想だね。
ノット
救助活動では、結び目が非常に重要な役割を果たします。これらは救助隊員が現場で直接「作成」するため、適切かつ迅速に結ぶ技術を身につけることが不可欠です。
結び目のドレッシング
結び目の「ドレッシング」とは、結び目を整えて不必要なねじれやたるみをなくし、強度を最大限にし、確認作業を簡単にすることを意味します。結び目が適切にドレッシングされていると、より信頼性が高く、安全性が向上します。
結び目の尾の長さ
結び目を結んだ後の尾の長さも重要なポイントです。尾の長さは、結び目が意図せず解けるのを防ぐために適切な長さである必要があります。一般的に、尾は約3〜4インチ(およそ「拳一つ分」の長さ)が理想とされています。これにより、結び目が安全に保持されると同時に、余分なロープが邪魔になることもありません。
ほとんどの救助用具は工場で製造されますが、結び目は任務中に救助隊員によって「作成」されます。隊員が結び目を適切かつ迅速に結ぶ方法を知っていることが重要です。
参考ページ:救助活動や緊急時において、正しいノットの知識は生命を救うことができます。ここでは、レスキュー&サバイバルノットの中から特に重要ないくつかを紹介します
ノットの種類
ウォーターノット
ウォーターノット(またはふじ結び)は、特に平らなテープを結ぶ際に使用される結び目です。この結び目は、テープ同士をしっかりと結び付けることができ、クライミングや救助活動でよく利用されます。ウォーターノットの作り方は以下の通りです:
- 一本目のテープを使ってオーバーノット(単純な結び目)を作ります。 これは、テープの一端をループにして、その端をループの下を通して引き出すことで作成します。
- 次に、2本目のテープを取り、1本目のテープの結び目をなぞるようにして逆方向から通します。 つまり、1本目のテープが結ばれた経路と同じ経路を2本目のテープでたどります。
- 最後に、2本のテープの両端をしっかりと引っ張って、結び目を締めます。 この時、結び目がしっかりと固定され、ずれたり解けたりしないように注意が必要です。
ウォーターノットを使用する際の重要なポイントは、結び目の両端を十分な長さ(最低でも5cm以上)残すことです。これは、結び目が引っかかって解けるのを防ぐためです。テープはロープと異なり平らで幅が広いため、この種の結び目が特に適しています。結束力があり、テープ同士を確実に固定することができます。
バタフライノット
バタフライノットは、ロープの中間部分にループ(輪っか)を作成するための結び目です。この結び目は、ロープの任意の位置に非荷重のループを作りたい時に便利で、クライミングや登山、救助活動などでよく使用されます。バタフライノットの特徴は、ロープの両端が使用中でも動いている状態であっても、ループ自体は固定されたままであることです。
作り方は以下の通りです:
- ロープを手に取り、手前に向かってロープをひねってループを作ります。 この時、ロープの一部が下に垂れるようにします。
- 同じ操作をもう一度行い、最初のループの上にもう一つループを作成します。 この時、2つのループが重なるようにします。
- 2つ目のループの下にあるロープの部分を持ち上げ、この2つのループを通過させて、新たなループを作ります。
- この新たなループを持ち、最初の2つのループを引っ張りながら、新たなループを引き締めます。
完成したバタフライノットは、ロープの中央に安定したループを提供し、荷重をかけても簡単には解けません。また、使用後も比較的簡単に解くことができるので、一時的なアンカーポイントや進行方向を変更する際の固定点として非常に役立ちます。
フィギアエイト・フォロースルー
フィギュアエイト・フォロースルー(またはダブルフィギュアエイト)は、クライミングで最も一般的に使用される結び目の一つです。この結び目は、ロープの結び付けに用いられ、カラビナを使用せずに物体やハーネスに直接結ぶことができます。フィギュアエイト・フォロースルーは、その強度と解けにくさ、そして解く時の容易さから、クライマーに広く信頼されています。
作り方は以下の通りです:
- フィギュアエイトの基本形を作ります。 ロープの端を取り、大きなループを作った後、ロープの端をループの下を通して、再びループの中に上から入れます。これで、8の字形ができます。
- ロープの端をハーネスの結び付けポイントに通します。 ロープの自由な端をハーネスの適切な部分(通常はハーネスの前面にある2つのループを通る)に通します。
- 先ほど作ったフィギュアエイトの結び目に沿って、ロープの自由な端を戻します。 ロープの端をフィギュアエイトの結び目の輪の中を通して、最初に作った経路に沿って戻していきます。この過程で、結び目の形を追跡するようにします。
- 結び目をきつく締めます。 結び目の各部分を均等に引っ張り、ロープがきちんと整った状態になるようにします。結び目が締まっていることを確認し、ロープの端には十分な長さが残っていることを確認してください。
フィギュアエイト・フォロースルーは、その確実性と安全性から、クライミングや高所作業での基本的な技術とされています。適切に結ばれたフィギュアエイト・フォロースルーは、強い負荷がかかっても容易には解けませんが、必要な場合は比較的簡単に解くことができます。
フィギアエイト・オン・ア・バイト
フィギュアエイト・オン・ア・バイトは、ロープを使用した基本的な結び目の一つで、特に救助活動やクライミングでよく使われます。この結び目を作ることで、ロープの中間部分または末端に強固なループ(輪)を迅速に作成することができます。フィギュアエイト・オン・ア・バイトは、その強度と信頼性、解けにくさから、多くの状況で重宝されます。
作り方は以下の通りです:
- ロープを取り、バイト(折り返し部分)を作ります。 バイトとは、ロープを折り返して作るU字型のループのことです。
- バイトの部分で、フィギュアエイトの形を作ります。 バイトを持ち、ロープを自分の方に一回転させてループを作り、そのループを下から通過させて、もう一度ループを作ります。この時、8の字の形が見えるようにします。
- 作成した8の字の輪の中を、バイトの端を通します。 こうすることで、ロープの一部にループができます。
- 結び目をしっかりと締めます。 結び目の各部を均等に引っ張りながら、ループがきちんと締まるように調整します。ループ部分がしっかりと固定されていることを確認します。
フィギュアエイト・オン・ア・バイトは完成すると、ロープに安定したループができ、これを使ってカラビナを取り付けたり、他の安全装置を接続したりすることができます。この結び目は解くのも比較的簡単で、迅速な対応が必要な救助現場などで非常に役立ちます。
ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノット
ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノット(指向性フィギュアエイト結び)は、ロープの中間に作る特定の方向に向けた固定ループの結び目です。この結び目は、特にロープを使って物を引っ張る際の中間支点として、または簡易的な倍力装置(プーリーシステムなど)を組む場合に有効です。結び目が一方向にのみ力を受けるように設計されているため、力を加える方向が非常に重要です。
ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノットの作り方と使用上の注意点は以下の通りです:
- ロープの中間部分を取り、フィギュアエイトの基本形を作ります。 ただし、この時点ではループを完全に閉じず、次のステップで特定の方向への耐性を持たせるための調整を行います。
- ループの一部を選んで、引く方向(荷重がかかる方向)に対してロープを配置します。 この結び目は、指定した方向からの引っ張りに対して最大の強度を発揮します。
- 結び目をしっかりと締めて、ループを固定します。 引く方向が明確になるように、結び目の「ドレッシング」(結び目の整理)を丁寧に行います。
使用上の注意点:
- 引く方向が限定されています。 誤って反対方向や別の方向から力を加えると、結び目の構造が崩れ、最悪の場合、結び目が解けてしまう可能性があります。
- 引く方向を限定できない場合や複数方向からの力が予想される場合は、ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノットではなく、バタフライノットを使用することが推奨されます。 バタフライノットはどの方向からの引っ張りにも対応できるように設計されています。
ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノットは、特定の用途において非常に便利ですが、使用する際は正しい方向で力を加えることが非常に重要です。正確な結び方と適切な使用法を理解し、安全に活用してください。
結び目(ノット)は、救助やクライミングで本当に大事なテクニックだよね。基本は「しっかりと整える」「尾の長さを確保」「正しい種類のノットを選ぶ」って感じかな。結び目をしっかり整えると強度が増して安全性もアップ!尾の長さは「拳一つ分」を目安にして、勝手に解けないようにするのも大事。ノットの種類はシチュエーションによって変える必要があって、例えばウォーターノットならテープ、バタフライノットなら中間ループに使いやすいよ。フィギュアエイト系は基本の「強度と信頼性」だから、覚えておくと安心。ディレクショナル・フィギュア・エイトは方向が限定されるから、引っ張る方向が決まってる時だけ使うといいよ。
参考ページ:ロープレスキューでの個人用保護具(PPE)をわかりやすく解説します
アンカーシステム
アンカーシステムはロープレスキューやクライミングなどで使用される、ロープや装備を安全に固定するためのシステムです。救助活動においては、アンカーの選択と設置は救助隊員と犠牲者の安全に直結するため、非常に重要です。以下は、アンカーシステムを構築する際に考慮すべきポイントです。
- 効率的なフォールラインの選択: 救助隊は、犠牲者に到達するための最も効率的なルートを選択する必要があります。フォールライン(ロープが垂れ下がるライン)は、犠牲者に直接アクセスできるように選ばれるべきですが、落石などの危険を避けるために直接上から懸垂下降することは避けるべきです。
- リスクの最小化: 可能な限り低い場所をフォールラインとして選択し、リスクを最小限に抑えます。
- 救助システムの種類とアンカーの配置: 救助隊は、実行する救助システム(エッジ管理、下降、レイジング、トラバースなど)とアンカーポイントの配置を決定する必要があります。アンカーの「高さ」を適切に設定することで、救助活動の効率を向上させることができます。
- アンカーポイントの安全性評価: 使用されるアンカーポイントの安全性を慎重に評価し、単一の地物に過度に依存しないようにします。
- アンカーポイントの決定とロープラインの動きの予測: 救助活動序盤に、アンカーポイントを決定し、2本のロープシステム(メインラインとビレイライン、またはミラーロープシステム)を設置する際にロープラインがどのように動くかを予測します。
- アンカーポイントの配置: アンカーポイントは、エッジから十分に離れた位置に配置することが重要です。これにより、搬送チームが危険区域内に配置されるリスクを避けることができます。また、メインラインとビレイラインのアンカーポイントを並べて配置することで、コミュニケーションが向上し、ロープ操作員が互いの状況をより簡単に監視できるようになります。
これらのポイントを適切に考慮し、慎重にアンカーシステムを構築することで、救助活動を安全かつ効率的に行うことができます。
ハイ・ストレングス・タイ・オフ
ハイ・ストレングス・タイ・オフ、またはテンションレス・ヒッチは、アンカーポイントにロープを固定する際に使用されるテクニックです。この方法は、ロープの強度を最大限に活かし、結び目による強度の低下を防ぐことが目的です。特に、結び目を作るとロープの強度が約1/3に低下することが知られています。そのため、テンションレス・ヒッチは、ロープの強度を保持しつつ、アンカーポイントにしっかりと固定するための優れた方法です。
このテクニックの実行方法は以下の通りです:
- ロープの端をアンカーポイントに巻きつけます: アンカーポイントにロープの端を少なくとも3回巻きつけます。この際、巻きつける回数は、アンカーポイントの材質や表面の摩擦の大きさに応じて増やすことができます。
- ロープを90度の角度でメインラインに戻します: 巻きつけた後、ロープを90度の角度で折り返し、メインラインに戻します。この操作により、アンカーポイントにロープがしっかりと固定されます。
テンションレス・ヒッチを使用する主な利点は、アンカーポイントにロープを固定する際に、追加の結び目を作る必要がなく、ロープの強度を最大限に保持できることです。また、この方法はロープを簡単に取り外すことができるため、救助活動やクライミングなど、迅速な操作が求められる場面で特に有効です。
結び目を使わずにロープを固定できることは、ロープの損耗を最小限に抑え、安全性を高める上で非常に重要です。ハイ・ストレングス・タイ・オフは、ロープの取り扱いにおける基本的なスキルの一つとして、多くのアウトドア活動や救助活動で重宝されています。
ロード・シェアリング・アンカー(コルデット・アンカー)
ロード・シェアリング・アンカー(コルデット・アンカー)は、複数のアンカーポイントに荷重を分散させるアンカーシステムです。このシステムの目的は、一つのアンカーポイントにすべての荷重が集中することを避け、より安全な固定を実現することにあります。
主な特徴として、アンカーシステムの「脚」(各アンカーポイントを結ぶロープやコードの部分)の長さは固定されており、調整することができません。これは、荷重が完全に均等に分散されるわけではないが、一方の脚が故障しても、システム全体が急激に負荷を受けることなく、安全に荷重を支え続けることができる設計です。
このシステムを構築する際の手順は以下の通りです:
- 複数のアンカーポイントを選定します。 これらのポイントは、荷重を支えるために十分な強度を持つ必要があります。
- コルデット(特殊なロープやウェビング)を使用して、各アンカーポイントを結びます。 各脚の長さは固定されているため、アンカーポイント間の距離を考慮して適切な長さを選ぶ必要があります。
- アンカーシステムの中心部に、フィギュア・エイト・ノットまたはオーバーハンド・ノットを結びます。 これにより、アンカーシステムの中心が形成され、荷重がアンカーポイント間で分散されます。
ロード・シェアリング・アンカーは、一方の脚が故障した場合でも、システム内で衝撃力が発生する可能性を減らし、より安全に荷重を支え続けることができるため、特に複数の固定点が必要な状況や、安全性を高めたい場合に有効です。ただし、各アンカーポイントが固定されているため、システムの柔軟性は限られています。
プレテンション・バックタイ
プレテンション・バックタイは、アンカーシステムに追加の安全性を提供するために使われる技術です。この方法は、主なアンカーポイントとバックアップのアンカーポイントの間に緊張(テンション)を予めかけたリンクを作成することで、システム全体の安定性を向上させます。
作成手順は以下の通りです:
- フォーカルポイントのウェビングラップ: フォーカルポイント(荷重が集中する点)にウェビングを巻き、少なくとも1回はアンカーに接続するウェビングと織り込みます。これにより、フォーカルポイントとアンカーポイント間の強固な接続が確保されます。
- 3重ロープのバックタイ: フォーカルポイントとリアタイアンカーポイント(バックアップのアンカー)間に3重のロープを使ってバックタイを作ります。この時、カラビナを使用してプーリーの機能を代用し、3:1の力の倍率(テンション)を生み出します。
- テンションのかけ方: ラインの一端をリアアンカーから始め、フロントアンカーで終えます。このシステムにテンションをかける際は、少なくとも2人で強く引っ張る必要があります。
- 「ベクトル」の作成: ストランドが十分に締まった後、ロープの束を下に押して追加のテンションをかけ、「ベクトル」と呼ばれる力を作り出します。これはロープに残っている伸びを取り除くのに役立ちます。
- ロック: 最後に、ハーフヒッチやプルージック結びを使ってバックタイをロックします。
長いスパンや限られたロープを使ってプレテンション・バックタイを行う場合は、ディレクショナル・フィギュア・エイト・ノット(トラッカーズヒッチとも呼ばれる)を使用すると良いです。これにより、必要なテンションを効果的にかけることができます。
プレテンション・バックタイは、アンカーシステムの安全性を向上させるための有効な方法ですが、正しい技術と慎重な操作が必要です。
フロントアンカーとリアアンカーの配置
フロントアンカーとリアアンカーの配置に関するこの指示は、アンカーシステムの安定性を確保するための重要なガイドラインです。具体的には、アンカーシステムを構築する際に、フォールライン(荷重の方向)に対して、フロントアンカーとリアアンカーは左右に15度以内(合計で30度以内)の範囲で位置する必要があります。これにより、アンカー間で荷重が効率的に分散され、システム全体のバランスが保たれます。
もしオフセット(アンカー間の角度のずれ)が15度以上になる場合、2本のプリテンション・バックタイを使用して、そのオフセットの力を均衡させる必要があります。これは、アンカー間の力の不均衡を調整し、システムにかかる不必要な負担を減らすためです。
このプロセスを簡単に説明すると、次のようになります:
- アンカーの位置決め: フロントアンカーとリアアンカーは、フォールラインに対して左右に15度以内の範囲で配置します。これにより、荷重が直線的に伝わり、システムの安定性が保たれます。
- オフセット調整: オフセットが15度以上の場合、2本のプリテンション・バックタイを設置して、オフセットによる力の不均衡を補正します。これにより、アンカー間の力が均等に分散され、システムの安定性が向上します。
- プリテンション・バックタイの使用: プリテンション・バックタイを適切に設置し、テンションをかけることで、アンカー間の力のバランスを取ります。これにより、アンカーシステム全体の安全性が高まります。
人工アンカー
人工アンカーは、自然のアンカーポイント(例えば岩や木)を使用できない場合に、クライミングやレスキュー活動で安全な固定点を提供するために使われる装置やオブジェクトです。以下は、人工アンカーの一般的な種類とその用途を簡単に説明したものです:
- チョック: 小さな岩の割れ目に挟み込むことで固定する装置。様々なサイズがあり、岩の割れ目に合わせて選ぶことができます。
- ワイヤー付きナット: チョックに似ていますが、金属製の「ナット」と呼ばれる部分がワイヤーでロープに接続されています。割れ目に合わせて挟み込んで使用します。
- ヘックス: 六角形の金属製の装置で、大きな岩の割れ目に適しています。振動や引っ張りによって岩に固定され、安定したアンカーポイントを作り出します。
- ボルト: 岩や壁に穴を開けて設置する金属製のアンカー。ボルトにはカラビナやロープを直接取り付けることができ、非常に強固な固定点となります。
- ピトン: 金属製の釘のような装置で、岩の割れ目やひびに打ち込んで使用します。一時的または恒久的なアンカーポイントとして使用されますが、環境への影響が大きいため、使用は慎重に行う必要があります。
- 車両: 救助活動などで、他のアンカーポイントが利用できない場合に、車両自体をアンカーポイントとして使用することがあります。
- 建物: 建築物の構造部分をアンカーポイントとして利用することができます。強固な支点を提供できるが、建物の構造を理解して正しく使用する必要があります。
人工アンカーの選択と使用は、その状況と必要とされる安全性に応じて慎重に行われるべきです。正しい知識と技術をもって適切に使用することで、クライミングやレスキュー活動の安全を大きく向上させることができます。
ピケット
ピケットは、自然のアンカーが利用できない土壌の環境で使用される人工のアンカーです。特に、岩や木などがない開けた土地や、山岳救助、建設現場などで役立ちます。ピケットシステムの効果は、土壌の種類や状態に強く依存します。
ピケットを使用する際のキーポイントは以下の通りです:
- 土壌の条件: 軽くて乾燥した土壌ではピケットが抜けやすくなり、十分な支持力が得られません。一方で、重くて密度の高い土壌では、ピケットはより強固なアンカーとなり、大きな荷重にも耐えることができます。土壌の含水率や密度は、ピケットの保持力に大きく影響します。
- 使用材料: ピケットには高品質のスチール杭を使用し、一端が尖った直径1インチの圧延スチールが理想的です。杭を打つ際には、安全のため保護メガネと手袋を着用してください。
- 設置方法: 最低でも1メートルの長さのピケットを使用し、その3/4を地面に打ち込みます。ピケットは「1-1-1コンビネーション」で直線上に配置し、各ピケット間は1ピケット分の距離を空けます。ピケットは荷重の方向から20度の角度で地面に打ち込みます。
- 固定方法: 前側のピケットの上部を後側のピケットの基部に固定し、ピケット間でトラッカーズ・ヒッチやスパニッシュ・ウインドラスを使用して紐を張ります。スパニッシュ・ウインドラスでは、複数のピケットを連結し、小さな杭を打ち込んでねじることで張力を発生させます。
これらの手順に従ってピケットを設置することで、土壌の条件に左右されながらも、安定したアンカーシステムを構築することが可能です。ピケットシステムの強度と安全性を最大化するためには、土壌の状態を正確に評価し、適切な材料と設置方法を選択することが重要です。
車両アンカー
車両をアンカーポイントとして使用する際は、その効果性と設置の柔軟性から、救助活動や一部の建設作業で特に有用です。車両の大きさや用途に応じて、アンカーを作成する位置(車両の長軸または短軸)を選ぶことができます。しかし、車両を安全にアンカーポイントとして使用するためには、いくつかの重要な点を考慮する必要があります。
- 車両の重量と路面との関係: 使用する車両の重量が、その車両が置かれている地面との間で十分な摩擦を生み出すことができるかを確認する必要があります。これにより、車両が滑ることなく安定したアンカーポイントとなります。
- アンカーポイントとしての適切な箇所: 車両のフレームや車軸は、ロープやウェビングを固定するための最も信頼できる部分です。これらの部分は車両の構造上、強固であり、安全なアンカー作成に適しています。
注意点:
- 高温や油分の多い部分への接近を避ける: ロープやウェビングを車両の排気が出る部分や油分の多い部分に近づけないようにし、損傷や劣化を防ぎます。
- ホイールへの固定時の注意: ホイールに固定する場合は、ブレーキラインを巻き込むことがないように注意してください。これは、ブレーキシステムを損傷する可能性があるためです。
- フックやブラケットの点検: アンカーポイントとして使用する前に、フックやブラケット、その他の接続部の取り付けボルトを点検し、締め付けが適切であること、そして腐食や損傷がないことを確認してください。
車両をアンカーポイントとして使用する際は、これらの注意点を遵守することで、安全かつ効果的なアンカーシステムの構築が可能になります。
ディレクショナル
ディレクショナルは、ロープの進路を意図的に変更したい場合や、ロープが直接草木や岩に触れることを避けたい時に使用される装置です。これにより、ロープが摩耗したり、使用中に不必要な摩擦が生じたりするのを防ぐことができます。ディレクショナルは特に、ロープを使用した救助活動やクライミングで役立ちます。
ディレクショナルとして一般的に使用されるのは、プーリーや特定の結び目です。プーリーを使用する場合、それは別のアンカーポイントに固定されたテザー(安全線)に取り付けられ、ロープの進路を変更するために使われます。しかし、プーリーは距離の微調整が難しいため、より柔軟性が求められる場合にはアジャスタブルヒッチやアズテックを使用すると良いでしょう。
- アジャスタブルヒッチは、ロープの長さを調整可能な結び目で、特定のポイントでロープの進路を調整しながら、その長さを簡単に変更することができます。
- アズテックは、ロープを使って作る小さなプーリーシステムで、緊急時に迅速に設置できるディレクショナルポイントとして有用です。これにより、ロープの進路を効果的に変更し、同時に距離の調整も可能になります。
ディレクショナルを使用することで、ロープの進路を柔軟に制御し、安全性と効率性を高めることができます。適切な装置や結び目の選択により、特定の状況に最適な解決策を適用することが可能です。
アンカーシステムは救助やクライミングでの安全を守るために欠かせないよね。ポイントは「効率的なフォールライン選択」「リスクの最小化」「アンカーポイントの配置と安全評価」ってところかな。テンションレス・ヒッチは、ロープの強度を最大限に活かせる方法で、ロード・シェアリング・アンカーは荷重を分散させて安全性を高めるのに有効。プレテンション・バックタイは安定性アップに役立つけど、慎重に操作が必要だよ。人工アンカーは自然の固定点がないときに使えて、チョックやボルト、ピトンなど種類も豊富。ピケットは土壌でのアンカーとして便利だけど、地面の状態も見てから使うのが重要。車両アンカーは車両の重さと安定性をチェックしつつ、フレームや軸を固定ポイントにすると安心。ディレクショナルはロープの進路を調整するための装置で、摩耗や摩擦を防ぐために使われるよ。適切な方法や装置を選ぶことで、安全で効率的な救助が可能になるんだ。
参考ページ:あるシステムに対する安全係数(安全率とも呼ばれる)は、意図された荷重に対してシステムがどれだけ強いかを示すものです。ここでは詳細を記載します。
エッジマネジメント
エッジアテンダントは、崖や高所作業などのエッジ(端)近くで行われる救助活動において、重要な役割を果たします。その主な任務は、ロープや救助隊員、被救助者を安全に保つことです。具体的な役割は以下の通りです。
エッジ保護
- ロープ保護: エッジアテンダントは、キャンバスパッドやエッジローラーを崖のエッジに固定して、ロープが直接岩や地面に触れることによる摩耗や損傷を防ぎます。
- ロープの配置: メインラインはエッジローラーを通して設置し、ビレイラインはエッジローラーの外側に配置します。これにより、ビレイが作動した際に必要な摩擦が得られます。
救助活動のサポート
- リッター(担架)の補助: エッジ付近でリッターを安定させ、被救助者の安全を確保するためのサポートを提供します。
- 通信の中継: リッターアテンダントと上部の救助隊員との間で、必要な情報の通信を担います。
安全管理
- ビレイラインの監視: ビレイラインの張り具合を常にチェックし、必要に応じて調整します。
- 追加の安全ライン: エッジの近くにいるエッジアテンダントは、ビレイラインとは別の固定安全ラインを使用して、自身の安全を確保します。
エッジアテンダントの安全
- アンカーのクロスリンク: 急峻な垂直な地形でエッジアテンダント用の別個のアンカーが現実的でない場合、メインとバックアップのアンカーをクロスリンクさせることで、一方のアンカーが故障しても安全が確保されます。
エッジアテンダントは、救助活動を安全かつ効率的に行うために不可欠です。そのため、エッジ保護の設置、リッターの補助、通信の維持、ビレイラインの管理など、様々な任務を遂行することが求められます。また、エッジアテンダント自身の安全確保も非常に重要であり、適切な安全措置を講じることが必須です。
エッジプロテクター
エッジプロテクターは、ロープが崖や建物のエッジなどの鋭い表面に接触する際の摩耗や損傷を防ぐために使用される非常に重要な装置です。特に、救助活動、クライミング、高所作業など、ロープを使用するさまざまな状況で必要とされます。エッジプロテクターの使用は、以下のような理由で非常に重要です。
ロープの保護
- 摩耗防止: ロープが鋭いエッジに直接触れると、外皮が摩耗しやすくなり、その強度が低下します。エッジプロテクターは、ロープと鋭いエッジとの間に物理的な障壁を作り出し、ロープの摩耗を大幅に減少させます。
- 切断リスクの軽減: 強い張力がかかった状態でロープが鋭いエッジに接触すると、ロープが切断されるリスクがあります。エッジプロテクターはこのリスクを軽減し、より安全な環境を提供します。
救助活動とクライミングの安全性向上
- 信頼性の確保: 救助活動やクライミングでは、ロープは生命線となります。エッジプロテクターを使用することで、ロープの信頼性が保たれ、使用中の安全性が高まります。
- 事故の予防: ロープの損傷は、落下や怪我などの重大な事故に直結します。エッジプロテクターは、こうした事故のリスクを減少させるために不可欠です。
使用の効率化
- 操作性の向上: ロープがスムーズに移動できるようになり、救助やクライミングの効率が向上します。エッジプロテクターは、ロープの動きを妨げる障害物からロープを守り、操作性を向上させます。
総合的な安全管理
- 安全基準の遵守: 多くの場合、安全基準や規制はエッジプロテクターの使用を推奨または要求しています。これに従うことで、法的な基準に沿った安全な作業環境を確保することができます。
エッジアテンダントは、高所での救助活動に欠かせない役割だよね。ロープを守るために、キャンバスパッドやエッジローラーで摩耗を防いだり、メインラインとビレイラインを適切に配置したりしてるんだ。リッターの補助や、救助チームとのコミュニケーションも大切な仕事。ビレイラインを常にチェックして、エッジ近くで作業する自分の安全ラインもきちんと確保する必要があるよね。さらに、急な地形ではアンカーをクロスリンクさせて、どちらかが壊れても安全を保てるようにするんだ。エッジプロテクターも重要で、ロープの摩耗や切断リスクを減らし、信頼性を高める役割があるよ。ロープがスムーズに動けるようにして、安全基準にも従うことで、救助活動がもっと効率的に進むようになるんだ。
低、急、高角度のロープレスキューとは
低角度、急勾配、高角度のロープレスキュー環境の違いを知ることで、訓練内容と資器材の選択が決まります。
地面が急勾配になるほど、救助はより困難になり、より技術的になります。ロープを使用し、要救助者にアクセスし、救助中に救助隊と要救助者をサポートし、救助現場から救出するため、危険度が増します。
テクニカルレスキュー業界は、次の定義となっています。
- 0〜15度の傾斜は平坦な地形
- 15〜29度はローアングル
- 30〜50度はミドルアングル
- 50度を超えるものはすべてハイアングル
ローアングルレスキュー
ローアングルレスキューは、低角度の地形の状態によって、必要なロープ数と資器材の種類が決まります。
足場は悪いか。または滑りやすい原因となる緩い岩やその他の破片はあるか。要救助者と担架を安全に搬送するには、何人の救助者が必要となるか。
参考ページ:ローアングル・ロープ・レスキューとは、ロープ上の傷病者が、ロープレスキュー器材だけではなく、救助者自身によって傷病者が支えられている救助環境を指します。ここでは詳細を記載します
ハイアングルレスキュー
ハイアングルレスキューは、傾斜角が50度以上の地形です。救助隊は、自らと要救助者が転落するのを防ぎ、救助場所に出入りするために使用されるロープに完全に荷重が依存します。
急勾配および高角度の場所の例には、崖、ビル、鉄塔、キャットウォーク、船舶の上部、クレーン、給水塔などがあります。
参考ページ:ハイアングルでのロープレスキューについて、詳細を記載します
急勾配でのレスキューは、技術と資器材が重要!特に50度以上のハイアングルではロープが命綱になるため、慎重な対応が必要だよ。
懸垂 下降
懸垂下降 (けんすいかこう)は、 ロープ を使って高所から下降する方法のことである。
救助現場で救助者が懸垂下降を使用する場合が3つあります。
- 被害者にアクセスする
- 要救助者と一緒に降りる
- 救助完了後に降下する
エッジを乗り越える
懸垂下降の難しい部分は、立った状態から行くことです。 足に体重をかけ、座った姿勢まで、ハーネスに体重をかけます。
アンカーポイントが高いほど、この移行が容易になります。
アンカーが地面の高さにあるとき、体重をハーネスに移行するのは非常に困難です。しゃがんでも足を落下させてしまいます。低いアンカーの場合は足をエッジ下にぶら下げて体重をハーネスに移行するのが最善です。
参考ページ:ロープレスキューにおける即席ハーネスを作る必要性はいくつかあります。特に緊急時や特殊な状況で非常に役立ちます
降下
懸垂下降中ブレーキの手は常にロープを持っておく。
足を壁に対して垂直に保ち、肩幅の足幅にする。
スムーズで一定の降下速度を維持します。
ゆるい壁や岩を踏みつけないように注意してください 。下の人に岩等が落下します。
オーバーハングを通過するには、足をエッジにつけたまま降下する。 頭はエッジの下にあるので、顔を壁にぶつけません。
ダブルロープテクニックシステム(独立ビレイ)
ダブルロープテクニック(DRT)は、救助現場で行うロープレスキューの一般的な方法です 。
1人の隊員が降下を制御し、2人目の隊員(ビレイヤー)は、メインラインが故障したとき落下時の補助を目的として身体をビレーラインで安全確保します 。
メインラインを下げる隊員は降下制御装置を使用します。ビレイヤーは、タンデムプルージックまたは降下制御装置を使用します。
最も重要なことはビレイヤーはロープのたるみを最小限に抑えることです。
タンデムプルージックビレイ
タンデムプルージックビレイの組み立て方
ビレイロープに2本のプルージック(長いもの1本、短いもの1本)を3回巻きます。
各プルージックはロープを同じ方向に巻きます。
※同じ方向に巻かれたプルージックは、視覚的に確認しやすく、物理的にも管理しやすい。
ロープを引っ張って、プルージックがしっかりと固定されていることを確認します。
アンカーに取り付けたカラビナにプルージックを接続します。
懸垂下降では、ブレーキ手を離さず、足幅は肩幅に!滑らかな降下と、岩や壁の崩れに注意が大事。ビレーはロープのたるみを少なく保つと安心だよ。
参考ページ:バスケット担架のラッシング方法についてわかりやすく解説します
I’DやRigを使ったロープクライミング
ロープクライミングでのI’DやRigの使用法について説明します。これらのデバイスは、正確な位置決めや短い距離のロープ上昇に適しています。ユニークな特徴として、ハンドルを下降モードに設定することで、ロープを自由に上方向にスライドさせることができます。これにより、使用者はロープにテンションをかけながら上に移動し、たるみを取ることが可能になります。ただし、安全のためにハンドルが下降モードの時は、常にロープのブレーキ側をしっかりと保持する必要があります。
基本的なクライムテクニック:
- I’DまたはRigの上部にロープクランプとフットループを取り付けます。
- フットループに足を入れ、ロープのブレーキ側を引きながらI’DまたはRigを外します。
- 体重をスムーズにデバイスに移動させ、フットループを上に持ち上げ、この操作を繰り返します。
ロープクランプに方向転換器を取り付ける方法:
- I’DまたはRigの上部にロープクランプとフットループを取り付けます。
- ロープクランプの方向指示器(カラビナまたはプーリー)にI’DまたはRigのロープのブレーキ側を通します。
- このロープを引っ張りつつ、フットループに立ちます。
- この方法では、クライミングの労力は軽減されますが、1サイクルあたりの登る距離は通常のクライムテクニックに比べて少なくなります。
これらのテクニックを用いることで、ロープクライミングの効率と安全性を向上させることができます。特に、I’DやRigを使った登攀は、高所作業やレスキュー活動など、正確な位置決めが求められる状況で非常に有効です。ただし、これらのデバイスを使用する際は、常にメーカーの指示に従い、適切な安全措置を講じることが重要です。
I’DやRigでは、上昇中もブレーキ側をしっかり握るのがポイント!メーカーの指示を守って、安全第一で登ろう。
参考ページ:タワースケートレスキューは、高所作業中の事故や緊急時における重要な救助技術です。本記事では、基本的な手順から具体的な注意点まで詳しく解説いたします
参考ページ:ここでは、物理学の中でも最も基本的な力学、運動等を記載します。これらの基本を理解したうえで、ロープレスキューや器具の取り扱いをしてください
ノット・パッシング・テクニック
ノット・パッシング(結び目の通過)は、救助活動中に特に重要な技術です。これは、ロープを追加したり、何らかの理由でロープ上に結び目ができた際に、その結び目がギア(例えば、下降制御デバイスやプーリーシステムなど)を安全に通過するための方法を指します。結び目の通過は、救助時のロープの延長や、予期せぬ結び目の発生を対処するために必要です。
ノット・パッシングの基本的な方法
- リリースヒッチの使用:
- ロープの張力を一時的に別のポイントに移すためにリリースヒッチ(解放可能な結び目)を使用します。これにより、結び目がギアに到達する前にロープの張力を安全に管理し、結び目を通過させる準備をします。
- プーリーシステムの利用:
- 結び目がプーリーシステムを通過する際、システムを一時的に再配置することで結び目を安全に通過させます。これには、プーリーを一時的に取り外したり、システムの一部を調整することが含まれます。
- DCD(下降制御デバイス)の調整:
- 下降制御デバイスを使用している場合、結び目がデバイスに到達する前に、デバイスを一時的に取り外したり、結び目を通過させるための位置に調整します。このプロセスでは、安全性を確保しながら、結び目がスムーズにデバイスを通過できるようにします。
ノット・パッシングのポイント
- 安全性の確保:ノット・パッシングを行う際は、常に安全を最優先に考えます。ロープの張力を適切に管理し、結び目の通過を安全に行うための準備を怠らないでください。
- チームワーク:複数のレスキュー隊員が協力してノット・パッシングを行う場合が多いため、明確なコミュニケーションとチームワークが非常に重要です。
- 練習と準備:異なる種類の結び目やギアを使用したノット・パッシングの練習を定期的に行うことで、緊急時に迅速かつ効果的に対応できるようになります。
ノット・パッシングは、救助活動において重要なスキルの一つです。各種の方法を理解し、実践を通じて習得することで、様々な状況下での救助活動の効率と安全性を向上させることができます。
下降フェーズ
下降フェーズでのラジウム・リリース・ヒッチとプルージック・システムの取り付けと操作のプロセスを簡単に説明します。これは救助活動や高所作業で使用される一般的な技術です。
ステップ1: プルージックヒッチの取り付け
- まず、8mmのコードを使用してプルージックヒッチを3回巻きつけ、DCD(下降制御デバイス)よりも外側に1本設置します。
- このプルージックヒッチをラジウム・リリース・ヒッチの走行端に取り付けます。ラジウム・リリース・ヒッチはDCDと同じアンカーに固定します。異なるアンカーには取り付けません。
ステップ2: テンションのかけ方
- メインライン上の結び目がDCDから約30~40cm (12~16インチ) 離れた位置で、プルージックヒッチにテンションをかけ、アンカーからロープを引き離します。
- これにより、プルージックヒッチとDCDの両方にテンションがかかり、プルージックがロープをしっかりと掴みます。
- プルージックヒッチとフリクションデバイスの間にロープの角度をつけて、フリクションデバイスにたるみを作ります。
ステップ3: DCDの再配置
- ロープがDCDを通り抜けたら、DCDを完全に外し、結び目の反対側に取り付け直します。このとき、結び目がDCDの上部にできるだけ近くなるようにします。
- ラジウム・リリース・ヒッチを使用して荷重をゆっくりと下ろし、DCDに再びテンションがかかるまで操作します。
ステップ4: ラジウム・リリース・ヒッチとプルージックヒッチの取り外し
- ラジウムリリースヒッチを摩擦装置から離して角度をつけ、ゆっくりと取り外します。
- プルージックヒッチも取り外します。この時点で、結び目はDCDの前方に位置しています。
必要に応じて再設置
- 必要に応じて、ラジウム・リリース・ヒッチを再び結び、DCDの先のロープにプルージック・ヒッチを追加します。
注意点
- ラジウムリリースヒッチは、アズテックで代替可能です。これにより、さまざまな状況に対応しやすくなります。
上昇・フェーズ(3:1システム)
上昇フェーズでの3:1システム(またはZリグシステム)の設定と使用方法を簡単に説明します。このシステムは、荷物や人を効率的に引き上げるために使用され、特に救助活動や高所作業で役立ちます。
ステップ1: プルージックヒッチの取り付け
- 引き上げを始める前に、プルージックヒッチを荷に近い結び目側のラインに取り付けます。これにより、荷物を引き上げる際の安全性が確保されます。
ステップ2: ラチェット・プルーシク・ヒッチの使用
- 結び目がラチェット・プルーシク・ヒッチに達するまで、荷物を引き上げ続けます。これにより、引き上げられた荷物が逆戻りするのを防ぎます。
ステップ3: 仮ラチェット・プルーシク・ヒッチの設置
- 元のラチェット・プルーシク・ヒッチのかなり下のアンカーから、エクステンション・スリングにロード・リリーシング・ヒッチ(LRH)をつけ、仮のラチェット・プルーシク・ヒッチを設置します。
ステップ4: プーリーとラチェット・プルーシク・ヒッチの配置
- プーリーと元のラチェット・プルーシク・ヒッチの間隔を十分に取り、これを別のカラビナでアンカーに取り付けます。
ステップ5: ロードリリーシングヒッチの操作
- 手動で元のラチェット式プルーシックヒッチがつかまらないようにしながら、リリースヒッチラインを下ろし、仮ラチェット式プルーシックヒッチに荷重を移します。
ステップ6: メインラインへの移動
- プーリーと元のラチェット式プルーシック・ヒッチを結び目からメイン・ライン上に移し、メインにテンションがかかったら、仮ラチェット・プルーシック・ヒッチを取り外します。
ステップ7: 安全ラチェット・プルーシック・ヒッチのセット
- ベンドが第2プーリーに達するまで引き上げ作業を続け、安全ラチェット式プルーシックヒッチをセットして、荷重を保持します。
ステップ8: プーリーの接続の再配置
- 結び目の反対側にあるプーリーの接続を解除し、再び取り付けます。これにより、システムの効率が向上し、さらなる引き上げが可能になります。
※ロード・リリーシング・ヒッチはアズテックで代替可能
テンションを共有するミラー・システム・テクニックは、ロープ上の結び目(ベンド)を通過する際に非常に役立つ方法です。このテクニックを使用することで、結び目を通過する際に必要な操作を簡単化し、安全性を向上させることができます。以下に、このテクニックの基本的なプロセスを簡潔に説明します。
ミラー・システム・テクニックの基本
1.テンションの共有:
- ミラー・システムは、2つのロープシステムを同時に使用し、それぞれが荷重を分担します。これにより、一方のシステムが結び目を通過している間、もう一方のシステムで全荷重を受け持つことができます。
2.荷重の転移:
- 結び目をパスする際には、オルタネート・ライン(交互のライン)で全荷重を支え、一方のシステムが「ルース」(たるみのある)状態になるようにします。これにより、結び目を含むロープの一部をアンカーに固定することが可能になります。
3.DCDやラチェットの操作:
- 荷重を一方のシステムに完全に移した後、DCD(下降制御デバイス)やラチェット(ロードを保持するデバイス)を外します。これにより、ロープと荷の接点が2点になり、より安全に結び目を通過させることができます。
テクニックの利点
- 柔軟性:荷重を上げる際も下げる際も、ミラー・システムを用いることで、結び目の通過をスムーズに行うことができます。
- 安全性の向上:結び目を通過する際に、シングル・ロープ・テクニック(一本のロープのみを使用する技術)の限界を超えることができます。荷重が2点で支えられるため、より安全に作業を行うことが可能です。
ノット・パッシングで大事なのは「安全第一」。ロープの張力をしっかり管理して、結び目を通過させるときも焦らず確実にね。そして「チームワーク」も忘れずに。みんなで協力して声を掛け合うことでスムーズに進むよ。あと「練習と準備」も重要で、いろんな結び目やギアの使い方を定期的に練習しておくと本番で自信を持って対応できるようになるよ。安全に気を配りながら、チームでしっかり救助活動をサポートしていこう!
ジガーシステム
ジガーシステムは、重い物体を持ち上げたり、移動させたりする際に用いられる機械的な助けです。プーリーを中心に構築され、物体にかかる力を増幅させることができます。このシステムの主な目的は、少ない力で重い物体を操作する能力を向上させることにあります。特に、救助活動や重い装備の設置、運搬において有効です。
ジガーシステムの基本構造
- プーリー: 力を増幅する主要な部品。プーリーを通すことで、引く力や方向を変えることができます。
- ロープ: プーリーを通して物体に力を加えるために使用されます。ロープの一端は操作者に、もう一端は持ち上げたい物体に固定されます。
ジガーシステムの利点
- 力の増幅: 少ない力で重い物体を持ち上げることができます。これにより、人力だけでは困難な作業も可能になります。
- 荷重の均等分配: システムを通じて荷重を均等に分配することができるため、一点に過度な負荷がかからず、安全に作業を進めることができます。
- 迅速な展開: 構築が比較的簡単で、速やかに設置して使用開始することができます。
- 操作の容易さ: 高度なトレーニングや専門知識がなくても基本的な操作を行うことができます。
使用例
- 救助活動: 被災者を安全に救出するための担架の持ち上げや、不安定な状況での安全な位置への移動に使用されます。
- 重装備の設置: 重い機材や資材を正確な位置に設置する際に使用されます。
ジガーシステムは、その汎用性と操作の容易さから、多種多様な状況での有効な支援ツールとして活用されています。特に緊急時の救助活動や、重量物の搬送・設置作業においてその価値が高まります。
ジガーシステムのポイントをシンプルにまとめるね!まず、これの最大の利点は「少ない力で重いものが持ち上げられる」こと。力を増幅してくれるから、普段は無理な重量も対応できちゃう。そして「荷重が均等に分かれる」から、一点にかかる負担が減って安全に作業できるんだ。さらに、システムのセットアップも簡単だから、すぐに使い始められるのも助かるよね。救助活動とか、重いものを運ぶときに頼りになる存在だよ!
高度技術
1. 高度なアンカー技術
リダイレクションアンカー
リダイレクションアンカーは、荷重の方向を変更するために使用する特殊なアンカーです。複雑な地形で救助する場合、例えば斜面や崖の側面での作業では、直接の引っ張り方向が危険を伴うことがあります。この場合、リダイレクションアンカーを利用し、ロープの進行方向を曲げることで、荷重の管理やアクセスの容易さを向上させます。
インラインアンカー
インラインアンカーは、ロープの途中に設置するアンカーで、例えば長いロープシステムを使用する際に役立ちます。レスキューチームが複数の中間支点を必要とする場合や、搬送中に荷重を複数の支点で分散させる際に、インラインアンカーが効果的です。インラインアンカーには、荷重のバランスを取るためのノットや引っ張り方向の制御が求められます。
2. ロープの摩擦と摩耗管理
摩擦軽減システム(フリクションリダクションシステム)
ロープが岩や硬い地面に触れると摩耗が発生し、ロープの耐久性が低下します。これを防ぐため、プラスチック製のチューブや金属製のプロテクターを使用して、摩擦がかかる箇所にロープを覆います。特に長距離の搬送や摩擦の多い環境での使用には不可欠です。
ダブルロープテクニック
通常のシングルロープではなく、ダブルロープを使用することで、摩耗のリスクを軽減できます。ダブルロープテクニックは2本のロープを平行に張り、1本に問題が発生してももう1本がバックアップとして機能するため、さらなる安全性を提供します。特に摩耗しやすい崖や岩肌を使う際に有効です。
3. 進行方向と荷重の角度管理
マイナスドリフト
ロープシステムで荷重が斜面方向に滑り出す現象を「ドリフト」と呼びます。マイナスドリフトとは、荷重が引っ張られる際に設定した角度と異なる方向へずれてしまうことを指します。この現象は摩擦やロープの重み、地形によって発生し、安定性を損なう原因になります。アンカーの配置や荷重角度を事前に計算し、ドリフトを予測することで、このリスクを最小限に抑えられます。
角度の効果(アンカー角度の法則)
マルチポイントアンカーでは、ロープの角度が広がるとそれぞれのアンカーにかかる負荷が大きくなるという法則があります。特に120度を超える角度でアンカーを設定すると、各ポイントにかかる力は荷重よりも大きくなります。従って、アンカーを設定する際には角度を抑え、約90度以下の角度に留めることが理想的です。シミュレーションや、練習の中で角度に対する負荷の変化を体感しておくと良いでしょう。
4. 特殊なノットとその応用
シェルター・ノット(シェルターフィギュアエイト)
特定の方向からの荷重に耐えられるように設計されたノットで、主に進行方向を変えたい場面や、複数の荷重ポイントがあるときに使用します。シェルター・ノットは、ダイナミックな負荷に対応し、ロープの末端を複数の方向に張るときに信頼性が高い結び目です。
マンサージ・ノット
これはレスキュー活動の中でロープの中間部分に追加のループを作る結び目です。マンサージ・ノットは、複数の支点を用いてロープを張る場合に、荷重の分散や力の調整がしやすいため、特定の方向へ引っ張る際にも安定性を保つことができます。手間がかかるため一般的な場面では少ないですが、滑りやすい環境で効果を発揮します。
5. システム全体の冗長性確保と安全強化
トリプルバックアップの利用
救助活動では、通常の冗長性(レダンダンシー)をさらに強化するために「トリプルバックアップ」を行うこともあります。これはメインアンカー、セカンダリーアンカー、そしてバックアップアンカーと、3つの異なるアンカーを設置する方法です。これにより、たとえ1つのアンカーが故障しても、他の2つが機能を維持できるため、極めて高い安全性が確保されます。
ダイナミックロープとスタティックロープの組み合わせ
スタティックロープは伸縮性がほとんどなく、引っ張りやすいですが、落下衝撃が直接伝わるリスクがあります。一方、ダイナミックロープは伸縮性があり、衝撃吸収が可能です。救助システムでは、伸びを抑えるためのスタティックロープと、衝撃緩和のためのダイナミックロープを組み合わせることで、状況に応じた柔軟な対応が可能になります。たとえば、急斜面での搬送作業など、複数の地形での移動時にはこの組み合わせが特に有効です。
6. 高度なノット操作とその応用技術
ザ・グラスプヒッチ(Grasp Hitch)
グラスプヒッチは、摩擦を利用してロープの一部を支点に固定するノットで、特にロープ上での微調整に適しています。このノットは摩擦に頼るため、荷重が掛かると安定しますが、荷重を緩めると容易にスライドできます。グラスプヒッチは、荷重方向が変化する状況や、搬送途中で支点の位置を素早く変更する必要がある場面で活用されます。摩擦を利用するため、予期しない解除を防ぐためにも必ず確認が必要です。
インターロックバタフライノット
インターロックバタフライノットは、通常のバタフライノットの安定性をさらに強化するために、ロープを二重に絡ませる結び方です。複数の荷重がかかる場合や、非常に重量のある物を吊り下げる際に信頼性が向上します。このノットは解きにくくなるため、現場で使用する際には、必要な場面のみで活用し、解除に時間がかかることを考慮して設置します。
ゼータノットシステム
ゼータノットは、ロープの一端が確実に固定され、他の部分が自由に動く構造を持つ特殊なノットです。このシステムは、レスキュー中のロープの方向を柔軟に変えたい場合に便利です。ゼータノットは安定した支点を確保しつつも、ロープが複数方向に対応する必要があるときに役立ちます。登山や救助活動では、ロープの流れが頻繁に変わる場合、このノットを活用することで柔軟なシステム構築が可能です。
スリッププルノット
スリッププルノットは、荷重がかかるとロープの一部が滑り込むため、一部の荷重が自動的に逃げる構造です。例えば、一定の負荷を超えた場合に緩和させたい部分に使うことで、システム全体にショックを与えない効果があります。このノットは荷重が増えたときに自然に緩むため、ロープシステム内の一部に「ショック吸収機能」を取り入れることができます。
7. アンカーと支点システムの特殊配置
フローティングアンカー
フローティングアンカーは、固定点を一か所に限定せず、複数の移動可能な支点を用いて荷重方向に対応するアンカーです。これは、複雑な地形でのレスキューや、荷重が動き回るような場面に最適です。例えば、急斜面での搬送作業で荷重方向が頻繁に変わる場合、このフローティングアンカーが役立ちます。各支点が独立して動くため、最適な荷重分配が可能ですが、経験を積んだ救助者による管理が必須です。
3Dアンカリング
従来の平面アンカーとは異なり、3Dアンカリングでは、立体的に配置された支点を利用して荷重を分散させます。この手法は、例えば洞窟や複雑な地形の中で荷重を全方向から支える必要がある場合に効果的です。3Dアンカリングでは、各支点の角度と距離を細かく調整し、すべての方向に対してバランスを取ることが重要です。さらに、応力が複雑な方向に作用するため、慎重な配置が求められます。
デッドマンアンカー
デッドマンアンカーは、雪や砂地などの柔らかい地面で使用される特殊なアンカーで、地中に埋めた物体をアンカーポイントとするものです。この方法は砂地や積雪地で特に効果的であり、普通のアンカーが効かない環境でも強力な支点を確保できます。デッドマンアンカーは土や雪を掘り、木材や金属の板、ロープの巻き付けられた袋などを埋めて固定するため、迅速な設置が難しいですが、確実な固定が可能です。
8. 応力分散と荷重制御のテクニック
プログレッシブキャリッジング
プログレッシブキャリッジングとは、荷重を一定範囲内で移動させ、荷重がアンカーポイント間で連続的に分散されるようにする技術です。複数のカラビナとプーリーを使い、荷重を滑らかに移動させることで、摩擦や衝撃を最小限に抑えます。この技術は、特に長距離の搬送や搬送中に角度が変わる場合に便利です。プログレッシブキャリッジングを活用することで、複数の支点間で荷重を自然に分配でき、搬送効率が向上します。
マルチストランド・ディストリビューション
ロープを複数本使用し、それぞれが異なるアンカーに接続される「マルチストランド・ディストリビューション」は、応力分散を最大化する技術です。荷重が1点に集中するリスクを回避し、全体のシステムの強度を確保します。特に重い荷物や大人数の搬送において、安定性が大幅に向上し、緊急時に安全性が高まります。
テンショングライドシステム
テンショングライドシステムは、ロープ上の荷重をスムーズに移動させるための制御システムです。搬送中に一部の荷重がロープ上を「滑る」形で移動するように設計されており、急な傾斜や角度の変化に対応するために用います。例えば、斜面を滑らかに降りる際や、複雑な地形で角度が変わる場面で効果的です。ロープにかかる摩擦を管理するためのプーリーやカラビナを多用し、急な動きを抑制することが可能です。
9. 特殊環境でのアンカーとノットの応用
スノーアンカーとアイススクリューの組み合わせ
雪や氷の環境下では、単一のアンカーが不安定になりやすいため、スノーアンカー(雪中アンカー)とアイススクリューを組み合わせて使用することが推奨されます。スノーアンカーは雪中に埋める形式で、主に雪の安定性を活用し、アイススクリューは氷壁などに直接設置することで強力な固定を提供します。これにより、積雪や氷のコンディションが悪化しても安定性を確保でき、急な崩壊に備えたシステム構築が可能です。
ミュールヒッチによる応急的な荷重固定
ミュールヒッチは、一時的な固定が必要なときに使う応急ノットです。この結び方は、荷重がかかってもすぐに解除できる特性を持ち、レスキュー活動中の素早い固定と解除が求められる場面で非常に便利です。たとえば、搬送中に荷重の一時停止が必要な場面でミュールヒッチを使うと、すばやく固定し、状況に応じて素早く解除することができます。
セーフティーチェックノット
応急措置を行う際、もしくは新人の救助者が操作する場合には、必ず「セーフティーチェックノット」を追加します。このノットは二重に結ばれることで、結び方が一部でも間違っていれば目視で確認できます。これにより、即席で作られたノットや初めて結ぶノットでも、現場で安全を保つことが可能です。
コメント
毎回投稿お疲れ様です
ロープレスキューについてですが、ピックオフレスキューについて詳しく知りたいです。
よろしくお願いします