消防士が現場で直面する一つの課題は、施錠されたドアを開けることです。火災や救助が必要な状況で、救助者が建物内にいるにも関わらず、ドアが施錠されていて入ることができない場合があります。このような時、迅速かつ効果的にドアを開ける方法を知っておくことは、消防士にとって非常に重要です。以下に、消防士が施錠されたドアを開けるために使用できるいくつかの方法を紹介します。

参考ページ:消防士はドア、窓、または壁を通って建物内に進入します。しかし、ドアが施錠されている場合、強制的にドアを開放する必要があります。ここではドアの基本知識の詳細を記載します
ドアロックの名称と構造
救助活動に先立ち、ドアロックの基本的な名称と構造を理解することが重要です。
レバーハンドル
ドアを開けるための取手の一種で、上下に動かしてドアのラッチボルトを引くことで開閉します。レバーハンドルの他に、ノブハンドル(握り玉)も一般的に使用されます。
ラッチボルト
ドアが意図せず開くことを防ぐために設けられた、レバーハンドルやノブハンドルの操作によって動く部品です。先端が三角形をしており、ドアフレームの凹部に嵌まることでドアを閉じた状態に保ちます。
デッドボルト
ドアの安全性を高めるための重要な部品で、鍵を挿入し回転させることで、ドアの側面から飛び出し、ドアフレーム内の穴に嵌ることでドアを固定します。このデッドボルトは、ドアを開放する際に最も重要な部分となります。
施錠されたドアを開放する際、これらの部品の構造と機能を正確に理解することが、効率的かつ迅速に対応するための鍵となります。救助者が安全かつ確実に作業を行うためには、これらの基本的なドアロックの知識が不可欠です。

デッドボルト破壊と切断
ドアの開放の際に、優先してもらいたいのがデッドボルトの破壊または切断です。
ハリガンツール
ドア開放ツールとして万能なのが、ハリガンです。
フォーク
ハリガンのフォークはウェッジ、フォークレバー、あるいはパンチツールとしても使用できます。二股の端は南京錠のヒンジにねじるとそれを破るためにねじることができます。木材の一部をこじ開けたり、ドアや窓枠の間に押し込んで入り口や換気のために開いたりするために使用されます。
フラットエンド
平らな部分のことです。フラットエンドはハンマーと組み合わせて使用することで、扉を開くことができます。ハリガンのフラットエンドの最も一般的な用途は窓を割ることです。これは単なる破壊作業ではなく、適切な技術を使ってガラスを割った後、ガラスを片付けるのが最も効率的な方法です。
アウル
ハリガンツールの尖った部分です。ピックともいいます。穴をあける作業等に使用します。その他には、突き刺すことで極小の隙間を広げることができます。

使用方法
ハリガンツールのフォークやフラットエンドをドアとドア枠の隙間に挿入、ハンマーやアックスを使用しさらに奥まで入れ、てこの原理を使用し、デッドボルトとドア枠を変形させ開放します。


ドアを開けるときに便利なのがハリガンツールなんだ。まず、フォーク部分をドアと枠の隙間に差し込んで、ハンマーとかアックスでさらに奥まで入れていくんだよ。てこの原理を使ってドア枠とデッドボルトを変形させて開けるんだけど、フォークは南京錠のヒンジをこじ開けたり、平らなフラットエンドで窓を割るのにも使えるんだ。尖ったアウル部分は小さな隙間を広げるのに便利だから、状況に応じて使い分けるといいよ。
参考ページ:実際ドアの大部分は、わずかな労力とわずかな損傷で強制開放することができ、ハリガンツールの基本に焦点を当てることで実現できます。ここでは、ハリガンツールの基本的なドア開放テクニックを記載します。
ドア開放マニュアル 内開きドア
日本の玄関扉のほとんどは、内側から外に開きます、これを「外開き」といいます。
それに対して、欧米のほとんどの扉は、外から内側に開きます。これを「内開き」といいます。
海外(特に欧米)のドアが内開きである理由ですが、これは防犯上の理由からだといわれています。不審者が無理やり中に入ってこようとしたとき、内開きのドアなら全体重をかけてドアを押して閉め、侵入を防ぐことができるからです。
内開きのドアを強制開放する際は、まず最初に安全と効率を考慮した手順を踏むことが重要です。以下のポイントに注意して作業を進めましょう。
- 鍵の確認: 作業を始める前に、ドアが実際に鍵がかかっているかを確認します。時には、ドアが単に引っかかっているだけで、鍵がかかっていない場合もあります。こじ開ける前に、ドアノブやレバーを操作して、ドアが開かないか試みてください。
- 現場の管理者や警備員の確認: 可能であれば、現場の管理者や警備員に連絡を取り、ドアの開錠を依頼します。また、ノックス・ボックス(緊急時に救助隊が建物の鍵にアクセスできるように設置されたボックス)がある場合は、そこから鍵を入手してドアを開けることができます。
- ドアフレームの側枠から戸当たりを取り外す: 木製のドアや木製フレームの場合、ドアフレームの側枠から戸当たり(ドアが閉まる際に接触する部分)を取り外し、折りたたみナイフなどを使用してラッチやボルトを操作する方法があります。この方法は、ドアやフレームを破損させずに開錠することが可能です。
- スルー・ザ・ロックの方法:
- スルー・ザ・ロックは、鍵のシリンダー自体を取り外すか、特殊な工具を使用してシリンダーを操作し、ドアを開ける技術です。
- この方法を行うには、まず適切な工具(ロックピックセットやシリンダー抜き取りツールなど)を用意します。
- ドアの鍵穴に工具を挿入し、シリンダーを回転させるか、またはシリンダーを取り外します。これにより、ラッチメカニズムが解除され、ドアを開けることができます。
ドアを強制開放する方法は大きく分けて、ハリガンツールを使用した手法と、電動工具を使用した手法があります。これらの方法は、状況に応じて選択され、適切な手順で実行される必要があります。
1. ハリガンツールを使用した強制開放
単一ツールによるアプローチ
- ハリガンツール単体を使用して、ドアやドアフレームにレバレッジ(てこの原理)を利用し、ロックメカニズムやドア自体に直接力を加えて開けます。
- ドアの隙間にハリガンツールの一部を挿入し、ドアやフレームをこじ開けることで、ロックを解除または破壊します。
2つのツールによるアプローチ
- ハリガンツールとアックス(または同様の打撃ツール)を組み合わせて使用します。
- ハリガンツールでドアの隙間を広げたり、ロック部分にアクセスしやすくするために、アックスでドアやフレームに衝撃を与えます。
- これにより、より強固なドアやロックでも、効果的に開放することが可能になります。
ドアを叩く
- 直接的な力を用いてドアを強力に叩き、ロックメカニズムを破壊する方法です。
- この方法は、ドアやフレームに損傷を与える可能性があるため、他の方法が効果的でない場合に限り使用されます。
2. 電動工具を使用した強制開放
レスキュー・ソーまたはレシプロ・ソー使用
- レスキュー・ソーやレシプロ・ソーを使用して、ドアとドア枠の間のロックメカニズムを直接切断します。
- ドアノブの周囲をV字型に切り取る(パイカット)ことで、ノブやロックを取り除きやすくします。
ドアの中央を切断
- ドアの中央部分を直接切断することで、ドアを二つに分割し、開放します。
- この方法は、ドアが極めて頑丈で他の方法が効果的でない場合に選択されることがあります。
これらの方法は、状況に応じて選択されるべきであり、特に電動工具を使用する場合は、安全対策を十分に講じることが重要です。また、これらの作業を行う際は、救助活動や緊急時以外では法的な許可が必要となる場合があるため、注意が必要です。
戸当たりの取り外し
木製のドアを最小限の損傷で開ける方法として、戸当たりの取り外しは効果的な手段です。このプロセスは、ハリガン・バーを使用し、以下の手順で行います。
1. 戸当たりの取り外し
- ハリガン・バーのフラットエンドまたはフォーク部分を使って、ドアフレームに取り付けられている戸当たり(ドアが閉じる際に接触する部分)を慎重に取り外します。
- フラットエンドを使用する場合は、戸当たりの下または側面に挿入してレバレッジをかけ、フォーク部分を使用する場合は、戸当たりを挟んで引き離します。
2. ラッチ/ロックの操作
- 戸当たりを取り外した後、ナイフやその他のスリムな工具を使って、ラッチやロックをドアフレームのキーパー(ラッチが収まる部分)から外します。
- 工具をラッチやロック機構に差し込み、慎重に操作して開放します。この作業は注意深く行い、ドアやフレームへのダメージを最小限に抑えることが重要です。
3. ドアの開放
- ラッチやロックが解除されれば、ドアは開くことができます。この方法は、ドアやフレームに大きな損傷を与えずに済むため、後で修復がしやすくなります。
この方法は、ラベットのない木製のドア枠にのみ有効であり、状況に応じて最も適切な工具を選択することが重要です。また、この作業は可能な限り慎重に行い、不必要な損傷を避けるために適切な技術を用いる必要があります。
従来のドア開放技術では、ドアやロックアセンブリーの一部を曲げたり折ったりして侵入を可能にします。この作業は通常、2人1組で行われ、アックスやスレッジハンマーとハリガンバーを用いて実施します。熟練した技術とテクニックが必要とされるため、場合によっては1人でも行わなければならないことがあります。
アックスとハリガンバー(アイアンセット)を使用することで、ほとんどのドアを迅速に強制開放することが可能です。この方法は、単純なテクニックとてこの原理に基づいており、ドアを可能な限りその完全性を保ちながら破壊・開放することが求められます。可能な限り、廊下や階段に通じる室内ドアは、煙や火が居住者や消防士に危害を与えることがないよう、できるだけそのままにしておくべきです。
このアプローチは、効率的でありながらも物理的なダメージを最小限に抑えることを目指しています。特に、救助活動や緊急時の侵入に際しては、慎重かつ迅速に行動することが重要です。また、ドアやロックの構造に応じた適切なテクニックの選択が、成功への鍵となります。
フォースドア(シングルツールアプローチ)
フォースドア、またはシングルツールアプローチは、ドアを強制開放するための最もシンプルな方法の一つです。この手法では、アックスやハリガンバーのフラット部分を利用し、ドアの隙間に引っかけて内側に向かってスイングさせることにより、ドアを開けます。以下は、この手法を効果的に行うためのステップです。
ステップ1: ピックのセット
- 内側に開くドアの場合、フラットをドアと錠の間、可能な限り錠に近い位置に挿入します。
- フラットをドアの隙間にしっかりと固定し、ドアや錠に引っ掛けるようにします。
ステップ2: スイングとこじ開け
- セットしたら、ハンドル部分を内側に向けて力強くスイングし、ドアをこじ開けます。
- この動作を通じて、ドアが強制的に開くまで繰り返し力を加えます。
ステップ3: 開放
- 正しく実行されれば、ドアは比較的簡単に開くはずです。この手法は一人で迅速に行うことが可能で、特に木枠の木製ドアやロックが1つだけ、または強度が弱いドアに最も効果的です。
このアプローチの利点は、最小限の道具(シングルツール)で迅速かつ簡単にドアを開けられることにあります。しかし、この方法はドアやフレームに損傷を与える可能性があるため、緊急時以外では慎重に使用する必要があります。また、この技術を使う際は、安全に配慮し、適切な手順を踏むことが重要です。

ギャップ – セット – フォース(ツーツールアプローチ
ギャップ – セット – フォース(ツーツールアプローチ)は、従来の強制開放技術で最も一般的な方法です。この技術は、「隙間を作る」「セットする」「動かす」の3つの主要なステップに分けられ、各ステップで特定の操作を行います。これらの基本原則を理解し実行すると、手順を迅速に進めることができます。
隙間を作る
- 挿入ポイントの設定: ドアやフレームに挿入ポイントを設けます。ハリガンツールのフォークをドアフレームのストッパーに約15センチ上または下に差し込みます。15センチルールは、ロック本体がハリガンの打撃を避けるためです。
- 隙間の拡大: 隙間が狭くフォークが入らない場合は、ハリガンツールのフラット部分を挿入し、上下に動かして十分な隙間を作ります。

セットする
- ツールの位置決め: ハリガンのフォークを隙間に挿入し、ロックの上または下約15センチの位置にセットします。フォークがロックに当たらないよう、適切な距離を保ちます。
- ツールの角度調整: ハリガンバーのフォークを斜めに挿し、外側のカーブをドアに合わせ、適切な角度でフレームに引っ掛けます。ハリガンバーを約90度の角度に保ち、アックスで打撃を加えます。

動かす
- 力の加え方: ハリガンバーをセットした後、ドアに力を加えて押し開けます。隊員はドアと向かい合うように位置を変え、より良い力の加え方をします。
- 安全確認: ドアを開ける前に、全員が準備ができているか確認します。ドアが突然開かないように、ドアノブを押さえるなどの措置を取ります。
- ドアのコントロール: ドアが開いたら、もう一人の隊員がドアをコントロールし続ける必要があります。特に、火災が発生している場合は、進入チームの安全を確保するため、ホースラインとノズルの準備を確認します。

この技術は、効果的なチームワークと正確なコミュニケーションを要求します。特に、ハリガンを持つ隊員とアックスで打撃を加える隊員の間では、連携と明確な号令が必要です。このアプローチは、ドアの強制開放を効率的かつ安全に行うための基本的な方法であり、適切な訓練と実践を通じて習得されます。
ドアへの打撃
ドアの強制開放には、さまざまな方法がありますが、「ドアを叩く」と「ドアを蹴破る」は、特に緊急時に役立つ技術です。
ドアを叩く
ハリガンバーを使用してドアを叩く方法は、ドアの「端」、特に鍵側の端を狙って叩くことが重要です。この部分はドアの中で最も強固な部分であり、他の箇所を叩くとドアのパネルが破損したり、中空コアのドアに穴が開いてしまう可能性があります。これは、開口部から熱、煙、火が排出され、進入が困難になる危険を伴います。そのため、ノズルが設置されていない限り、ドアのパネルに穴を開けるべきではありません。この方法は、特に住宅用の木枠ドアに有効です。
もしドアが弱い木枠にはめ込まれている場合、鍵側でドアを数回鋭く叩くことで、枠を割ることができることがあります。特に、ほぞ穴錠がある場合に効果的です。ほぞ穴錠はドアに作られた空洞にはめ込まれており、この部分を狙うことで、枠を割りやすくなります。ただし、スチールフレームの場合は、これが困難な場合があることに注意が必要です。

ドアを蹴破る
ドアを蹴破る方法は、工具を使用せずに進入しなければならない場合の最終手段です。この技術は、木製のドアとドア枠に限定されます。ドアから背を向け、ロック本体に近い側のドアをかかとで素早く蹴ります。これは一般に「ロバキック」と呼ばれ、正しい位置と力で蹴ることで、ドアのロックを破壊し開くことができます。
これらの方法を実行する際は、安全に十分注意し、ドアやフレームに不必要な損傷を与えないように慎重に行う必要があります。
電動工具を使ったドアの強制開錠
電動工具を使用したドアの強制開錠は、従来の手法での侵入に失敗した場合の有効な代替手段です。レスキュー・ソー(エンジンカッター)の使用が一般的ですが、状況に応じてチェーンソー、レシプロソー、ドリルなども選択肢に含まれます。
ロックの切断
- レスキュー・ソーやレシプロ・ソーを使用して、ドアとドア枠の間にあるロックやラッチを直接切断します。この方法は、ロックが隙間から見えている場合に特に効果的です。
錠前の周りをパイ型にカット
- 錠の周囲をパイ型にカットすることで、より頑丈なドアを開けることが可能です。このカットは、レスキュー・ソーやチェーンソーを使用して行われますが、作業を開始する前にドアの材質を確認し、適切な刃が装着されていることを確認することが重要です。

3辺ドアカット
切断順番

① 鍵穴近くに穴をあけるイメージを作り、初めに縦に切断する。
② ①の上部に交差するように斜めに切断する。
③ ①と②に交差するように横にカットする。
手が入る大きさの穴が開けば、サムターンを回し鍵を解錠する。

切断時の注意点
ドア手前とドア奥では切断範囲に違いが出るため、少し大きめに切断するように工夫する

全長カット
- 最後の手段として、レスキュー・ソーやチェーンソーを使用して、ドアの中央を縦に長く切ります。この方法は、他の方法で開錠できない場合に考慮されます。
電動工具を使用した開錠方法は、素早く強制的にドアを開けることが可能ですが、使用する際にはいくつかの注意点があります。特に、電動工具は騒音や火花を発生させるため、周囲の状況や安全性を考慮し、適切な保護具を着用することが必須です。また、ドアの材質に応じた適切な工具と刃を選択し、必要な場合は事前に材質のテストカットを行うことで、作業の効率と安全性を高めることができます。
よくある問題とその解決策
よくある問題とその解決策について、簡潔にまとめました。
ハリガンバーが動かなくなる問題
- フォークがドア枠に接触
- 解決策: ドアから離す角度を大きくして調整します。
- フォークがボルトやロックに当たっている
- 解決策: ハリガンバーの位置をロックの上か下に変更してください。
- フォークが狭いドアに挟まっている
- 解決策: ハリガンバーを左右に動かしてフリーにし、工具をもっと奥まで挿入します。
操作後、ドアが開かない問題
- ドアは曲がるが開かない
- 解決策: 斧や他の工具を使って隙間を維持します。斧(またはドア・チョック)をドアフレームの内側に挿入し、強行突入チームがハリガンバーを押し込むか引くことでドアを開けます。フォークがドアと枠の間にはまり込んだ場合は、斧で楔を打って隙間を開け、ドアから離します。
- 頑丈な鍵のため、ドアが部分的にしか開かない
- 解決策: ロックを直接攻撃します。ハリガンバーをロックに当ててドアから引き離します。必要に応じて斧で鋭い一撃を加え、錠前を固定しているネジを打ち抜きます。ドアを十分に押しつぶすことで、ロック装置や縦型デッドボルトタイプの錠前が見え、ストライカーを切り離すことが可能になります。
これらの解決策は、ハリガンバーを使った操作中によく遭遇する問題点に対処するための基本的な指針です。状況に応じて適切な方法を選択し、安全に作業を進めてください。
内開きドアの強制開放をするときは、まず鍵がかかっているかちゃんと確認しよう。もしかしたらドアが単に引っかかっているだけかも。もし管理者や警備員がいるなら、開けてもらえるか頼むのもアリだね。どうしても開かないときは、ハリガンツールや電動工具を使ってロックを破壊するんだけど、フォークをドア枠の隙間に差し込んでてこの原理でこじ開けると効果的だよ。電動工具を使う場合は、火花や音が出るから安全第一で。万が一、ハリガンバーが動かなくなったら角度を調整したり、斧で隙間を広げたりして、うまく調整してみて。

参考ページ:ヒューストン消防署では、強制進入(ドアエントリー)に際して体系的なアプローチを用いています。主な技術と手順を紹介します
ドア開放マニュアル 外開きドア
外開きドアを強制的に開ける方法には、主に以下の2つがあります。
- ハリガンツールを使用した強制開放(Two Tool Approach):
- この方法では、ハリガンバーとアックス(斧)の2つのツールを使用します。まず、ハリガンバーのフォーク(叉)の先端をドアの隙間に引っ掛けるようにしてセットします。この時、フォークの先端をドアのロック部分や蝶番がある側に向けて使用することが一般的です。
- ドアとドア枠の間に隙間を作るために、ハリガンバーをレバレッジ(てこの原理)を使って力を加えます。隙間が開いたら、ドアが外側に向かって開くようにさらに力を加えます。
- この方法は、主に消防隊員が緊急時に建物内へのアクセスを確保するために使用されますが、適切な訓練と技術が必要です。
- 電動工具を使用した方法:
- 電動工具を使用する方法には、レスキュー・ソー(救助用チェーンソー)やレシプロ・ソー(往復動ソー)などがあります。これらの工具を使って、ドアとドア枠の間のロック部分を直接切断することが可能です。
- ドアノブや蝶番の周囲を切り取る「パイカット」という技術を使用する場合もあります。これにより、ドアの開閉に関与する部品を無効化し、ドアを開けやすくします。
- 別の方法として、ドアを中央で切断し、そのままドアを開けるという方法もあります。これはドア自体が非常に頑丈で、他の方法では開けられない場合に有効です。
ハリガンツール(フォーク)を使用した外開きドア開放方法
外開きのドアをハリガンツール(フォーク)を使用して強制開放する方法は、主に以下のステップに分けられます。このプロセスは、特に緊急サービスのプロフェッショナルによって使用される技術です。
1. 隙間に挿入する
- ロックまたはヒンジ(蝶番)のすぐ上または下に、ハリガンバーのフォークの端を斜めに配置します。この時、フォークの側面(カーブの外側)がフレームに向かうようにします。
- ハリガンツールを前後に動かしながら、フォークをドアに引っ掛けます。この動作により、フォークがドアとドアフレームの間にしっかりと挿入されるようにします。

2. セットする
- ハリガンバーのフォークをセットするために、アックスやハンマーを使用して叩きます。フォークの「V」の部分がドアで見えなくなるまで力強く叩きます。
- フォークを前後に動かして、内側のフレームを越えるようにします。この時、ツールがドアの戸当たりに埋まらないように注意が必要です。

3. 強制開放する
- ドアの内側にフォークの先端をしっかりとセットしたら、ハリガンバーをドアから引き離す方向(壁側に向かって押す)に力を加えます。この力の加え方によって、ドアがフレームから外れて開くことを目指します。
- ハリガンバーをドアから離すためには、十分なスペースが必要になります。これは、ツールを使ってレバレッジ(てこの原理)を効果的に利用し、ドアを開けるためのものです。

ハリガンツール(フラット)を使用した外開きドア開放方法
垂直の壁に隣接している外開きドアを開ける際、ハリガンツールのフラットエンドを使用する方法は、狭いスペースでの作業に適しています。この方法は、ドアと壁の間に十分なスペースがない場合に特に有効です。
1. 隙間に挿入する
- まず、ハリガンバーのフラットエンドをドアとドアフレームの間に挿入します。ドアとフレームの間が狭すぎる場合は、ハンマーやアックスを使ってフラットエンドを叩き、隙間を作ります。
- 次に、ハリガンツールを上下に揺すりながら、ドアと枠の隙間を広げていきます。この動作は、フラットエンドがしっかりとドア内部に入るための準備です。

2. セットする
- アックスまたはハンマーを使用してハリガンバーのフラットエンドをさらにセットします。このとき、アッズ(ハリガンバーの一部)がドアとフレームの間にしっかりと入るようにします。フラットエンドが戸当たりやフレームに埋まらないように注意してください。
- フラットエンドをドアの内側に引っ掛かる程度に深くセットします。これにより、ドアをこじ開けるための支点が確保されます。

3. 強制開放する
- フラットエンドが隙間にしっかりとセットされたら、ドアを外側にこじ開けます。ドアがなかなか開かない場合は、ハリガンバーを下向きに押し込みつつ、外側に引く動作を行います。この動きにより、ドアとフレームの間に更なる隙間が生まれ、ロックがストライクプレートやキーパーから外れやすくなります。

蝶番
蝶番側からドアを開放する方法は、通常、他の入口方法が失敗した場合や緊急性が低い場合に限られます。蝶番からドアを取り外すことは、ドアの完全性を損なう可能性があるため、最後の手段として考えられるべきです。以下に、蝶番を利用したドアの開放方法を簡潔に説明します。
蝶番のピンを外す方法
- ピンの確認: まず、蝶番のピンが露出しているか、取り外し可能かを確認します。ピンが露出している場合は、ドライバーとハンマーを使用して、ピンを叩き出します。これにより、ドアをフレームから取り外すことができます。
- 密閉された蝶番: 密閉された蝶番にはキャップナットが付いたネジ棒が使用されていることがあります。このナットをチャンネルロックで外すか、スナップ式のキャップがある場合は、こじ開けてピンを露出させます。その後、ピンを叩き出して蝶番を分解します。
蝶番への強制開放テクニック
- 内開きドアの場合: ハリガンのフラットやフォークの先端を蝶番の下に置き、蝶番に直接力を加えます。目的は、蝶番を壊すか、ドアやドア枠から引き抜くことです。
- 外開きドアの場合: ハリガン・バーのフラットの先端を露出した蝶番の上に置き、左右にひねりながら蝶番の取り付けビスを壊すか緩め、ピンを外して蝶番を切り離します。

電動工具の使用
- 蝶番の切断: 蝶番が非常に頑丈で、従来の方法で開けられない場合は、レスキュー・ソーや他の電動工具を使用して蝶番を直接切断することができます。蝶番の周囲にV字カットを入れることも一つの方法です。
- バレル・ヒンジ: 商業施設や頑丈な門扉に使用されるバレル・ヒンジは、ピンとバレルで構成されており、非常に強力です。このタイプの蝶番は、レスキュー・ソーで蝶番の周囲を切断するか、蝶番自体を切断することで開放することができます。



外開きドアを無理やり開けるときは、まずハリガンツールとアックスを使った方法が基本だよ。ハリガンのフォークをドアの隙間に引っ掛けて、てこの原理で隙間を広げ、ドアをこじ開けるんだ。もしハリガンだけじゃ無理そうなら、レスキューソーなどの電動工具でロック部分や蝶番を直接切断する方法もあるよ。蝶番側から開けるなら、まずピンを叩き出して蝶番を外すんだけど、頑丈な蝶番の場合はレスキューソーで切断するのが早いかな。

スルー・ザ・ロック・エントリー
「スルー・ザ・ロック・エントリー」は、施錠されたドアやその枠にほとんどダメージを与えずに、鍵や錠前を直接操作または攻撃してドアを開ける方法です。この技術は、特に緊急時において被害を最小限に抑えながら迅速に建物内にアクセスする必要がある場合に用いられます。以下に、この方法の概要を説明します。
状況の評価
- 居住のタイプ、ドアのタイプ、ロックシリンダーの位置:ドアがどのような建物に設置されているか、どのようなタイプのドアであるか(木製、金属製など)、ロックシリンダーがどこに位置しているかを確認します。
- ドアが開く方向(内側または外側):ドアが内側に開くか外側に開くかを判断します。これは、ロックを解除するためのアクセス方法を決定するのに役立ちます。
- ドアに見られるもの(錠以外のもの)、異常のあるもの(ロックシリンダーがずれているなど):ドアの状態や、通常と異なる点がないかを確認します。
施錠装置の攻撃
- Kツールまたは打撃工具の使用:Kツールや打撃工具を使用して、ロックシリンダーを露出させます。これにより、ロック装置にアクセスしやすくなります。
- 鍵工具またはドライバーでの操作:露出したロックシリンダーを鍵工具やドライバーで操作し、錠前を開錠します。これにより、ドアを開けることができます。
注記
- 斧、ハリガンバー、スレッジハンマーの使用:これらの工具を使用してノブを打ち抜くことで、多くの錠前を簡単に強引に取り外すことが可能です。しかし、安価な錠前は壊れやすく、シリンダーを引き抜くのが困難な場合があります。その場合、別の方法を試す必要があります。
「スルー・ザ・ロック・エントリー」は、火災や緊急事態での損害を最小限に抑える方法として非常に有効ですが、正しい評価と適切な工具の使用が必要です。また、この方法は特定の状況や錠前の種類によっては適用できない場合があるため、現場の状況を正確に把握し、最も効果的なアクセス方法を選択することが重要です。
ロックの種類別開放方法
ロックの種類によって適切な開放方法は異なります。ここでは、キー&ノブ・ロックセット、デッドボルト、ほぞ穴とリムロックの三つの一般的なロックタイプに対する開放方法を簡単に説明します。
キー&ノブ・ロックセット
- 開放方法:
- 斧やスレッジハンマーを使用してノブを叩き、マイナスドライバーを半月型の穴に挿入します。
- マイナスドライバーを回してロックを解除することができます。
- ハリガンバーのフォークを使用してドアからノブをこじ開ける方法も有効です。

デッドボルト
- 識別方法:
- シリンダーがドアの外側に大きく突出しています。
- 開放方法:
- デッドボルトはドアの内側に向かってこじ開けることで取り外すことができます。
- ハリガンバーのフラットエンドを使用し、スレッジハンマーや斧でロック部分に打ち付けてから取り外します。
- 取り外した後、マイナスドライバーでボルトを回して開錠します。

ほぞ穴とリムロック
- 識別方法:
- シリンダーがドアから約1センチから2センチ突出しています。
- 開放方法:
- Kツールを使用して金属製のバッキングプレートからロックを引き抜くことで、効率的に取り外すことができます。
- Kツールがない場合は、ハリガンバーのピックを使用してドアを貫通させ、ロックを内側から操作します。
- 取り出した後、キーツールまたはドライバーでラッチを操作して開錠します。
南京錠

南京錠の破壊方法としては、さまざまな道具や手順が存在します。それぞれの方法は、南京錠の種類や設置環境に応じて選択されます。
南京錠は、様々な場所で使用される取り外し可能なロック装置で、スライド式または回転式のシャックル、ボディ、そして錠前の3つの主要部分から成り立っています。これらの部品の役割と構造についてわかりやすく説明します。
シャックル
- 定義: シャックルは、南京錠の「U」字型またはループ形状の部分で、物体をロックするために使用されます。
- 機能: 物体や金具に通して、ボディ部分に固定することで物を固定またはロックします。スライド式または回転式であり、鍵や組み合わせによって解除されます。
ボディ
- 定義: ボディは、南京錠の中心部で、シャックルが取り付けられ、錠前が収められている部分です。
- 機能: シャックルの一部を保持し、錠前メカニズムを内蔵しています。材質や形状は多岐にわたり、南京錠の強度や耐久性に大きく影響します。
錠前
- 定義: 錠前は、南京錠を開錠または施錠するためのメカニズムです。
- 機能: 鍵や数字の組み合わせによって操作され、シャックルの解放または固定を制御します。セキュリティレベルは、このメカニズムの複雑さによって異なります。
南京錠は、その携帯性と柔軟性から、集合住宅、商業施設、個人住宅、空きビル、地下鉄や鉄道の施設など、様々な場所で利用されています。外部だけでなく、内部のセキュリティ強化にも使われます。南京錠が使用される多様な状況に対応するため、その種類や取り付け方法を識別し、適切に扱えるようにすることが重要です。

レスキュー・ソーの使用
レスキュー・ソーは、金属切断用ブレードを備え、ロック、金具、アタッチメントの取り外しに主に使用されます。この方法は速く、打撃工具を使用するよりも比較的安全です。シャックルが露出している場合、回転させて切断位置を確保し、両方のシャックルを同時に切断することが推奨されます。
ボルト・カッター(クリッパー)の使用
ボルト・カッターは、南京錠や軽荷重用チェーン、ケーブル、ハードウェアの切断に適しています。頑丈な南京錠を切断する際には、ボルト・カッターの刃を損傷するリスクがあるため、注意が必要です。ボルト・カッターを最大限に開いて使用し、片方のハンドルを壁や地面にしっかりと支えてから、両手でハンドルを押して金具を切断します。可能であれば、南京錠ではなく、ロックに最も近いチェーン・リンクを切断することで、ロックを保存し、後で敷地の安全を確保できます。
ハリガンバーとアックスの使用
軽量および頑丈な南京錠には、ハリガンを使った開放方法が適用可能です。ケースハードニングが施された頑丈なロックは、圧縮強度が高いためボルトカッターでの切断が困難ですが、引張強度には弱点があります。ハリガンを使って南京錠に力を加える方法は2つあります。
- ハリガンバーのフォークをロックのシャックルに当ててひねる。
- ハリガン・バーのピックを錠のシャックル部分に通し、アックスを使用して下方向に強制的に打つ。
これらの手法は、特に火災や緊急事態で迅速なアクセスが必要な場合に有効です。隊員は、使用する道具や方法を選択する際に、南京錠の種類や設置状況を考慮する必要があります。
U字ロック解除法

ピーピー紐を使えば、扉のU字ロックを破壊せずに解除できます。

ピーピー紐をU字ロックに結ぶ

扉の上を通し、U字ロックと逆方向に引っ張る
「スルー・ザ・ロック・エントリー」をやるときは、ドアやロックにあまりダメージを与えないのがポイントだよ。まず、ロックの種類や位置を確認して、Kツールやドライバーを使ってシリンダーを引き出したり回してロックを外すんだ。南京錠の場合は、レスキュー・ソーやボルトカッターを使ってシャックルを切断するか、ハリガンバーとアックスでひねって外す方法が効果的。U字ロックはピーピー紐で引っ掛けて逆方向に引っ張ると簡単に解除できるよ。

デッドボルト破壊の高度テクニック
デッドボルトは強固なロック機構の一つですが、以下の高度なテクニックを使えば、より効率的に破壊できます。
- デッドボルトへの斜め打撃:ハリガンツールをドア枠とデッドボルトの隙間に挿入する際、斜め方向に強く押し込むと効果的です。この「カッティングモーション」により、デッドボルトを変形させてロック解除を容易にします。
- ピボットリフト:デッドボルトが複数ある場合、最も弱い上部または下部にあるボルトを狙い、ハリガンツールを90度の角度で持ち上げるように押し込みます。この動作により、ドアフレームが持ち上がり、全体の強度が弱まって開放しやすくなります。
電動工具によるパワーカット技法
電動工具を使用する際、ただ切断するだけではなく、特定のテクニックを駆使することで、より短時間で安全に開放が可能です。
- 二段階カッティングモーション:レスキューソーを使用する際に、「プレカット」と「フルカット」を行うことで、より正確かつ効率的にドアを開放します。プレカットで表面を浅くカットし、内部構造を確認した後、フルカットで深く切断します。これにより、内部のロックやボルトの配置を把握し、無駄なエネルギーを使わずに開放が可能です。
- 「スパークロック」への対処法:ロック部品が高強度合金で作られている場合、レスキューソーが火花を多く発生し「スパークロック」を引き起こすことがあります。火花が発生すると、ツールの刃先が摩耗しやすくなるため、直角または斜めに動かす「ジグザグカッティング」を採用します。これにより、スパークロックを最小限に抑えつつ効率的に切断できます。

U字ロックの高度な解除技法
消防や救助活動で登場するU字ロックの解除には、以下のような高度な技法があります。
- ピーピー紐による解除:U字ロックに細い「ピーピー紐」を結び、ドアの上部を通してU字ロックと逆方向に強く引く方法です。この方法により、U字ロックを外部から破壊せずに解除できるため、住居や商業施設での損傷を最小限に抑えた進入が可能です。
- 「ジャミングトリック」:U字ロックのシャックルが通常よりも太い場合、強引に力をかけても外れにくいことがあります。この場合、U字ロックのシャックルとボディの間に専用のウェッジを挿入し、角度を変えながら「ジャミング(詰まり)」を起こしてシャックルを開放する技術が有効です。
ドアタイプ別の開放テクニック
特殊なドアタイプに応じたテクニックもあります。
- フレンチドア:二重ドアになっている「フレンチドア」は、片方のドアのみがロックされている場合が多いため、ロックされていないドアを「リフティングメソッド」で少し持ち上げて押し込むことで簡単に開放できます。
- 防火扉のリベットプレート解除:防火扉の多くには、リベットで固定された金属プレートがついており、これが強度を保っています。リベットの隙間にハリガンツールを挿入し、「プレートシフティング」と呼ばれるテクニックでプレートを少しずつずらしていくことで、扉全体が開放しやすくなります。
- 強化ガラスドアの「スパイダーマン」アプローチ:強化ガラスを使用したドアは破損が困難なため、ガラスを割るよりも隙間を広げてロック機構にアクセスするのが効率的です。ガラス表面にタオルや布を当て、ハリガンツールで静かに隙間を広げる「スパイダーマン」アプローチが役立ちます。
バールピボットとリリーフカット
- バールピボット法:バール(大型のハリガンツール)をドアのヒンジまたはデッドボルトにセットし、てこの原理を用いてドアフレームを外側に引き出す方法です。これにより、ヒンジ部分が破損し、ドアをわずかに浮かせることができます。このテクニックは、鋼鉄製ドアフレームに特に有効です。
- リリーフカット:ドア枠に対する圧力を解放するために行うカットで、ドアの隅や中央に小さな切断を加えることで、枠が少しずつ弛み、ドアの開放が容易になります。
コメント
動画での投稿をもっと増やして欲しいです
ハリガンツールを中心に