高度なRITトレーニング:リアルなメイデイドリルで消防士の実力を鍛える方法

セーフティ&サバイバル

消防士にとって、Rapid Intervention Team(RIT:救助介入チーム)の役割は仲間を守る最後の砦です。
しかし、現場の過酷さに比べると、従来のRIT訓練は「安全すぎる」「現実性が足りない」と言われることが少なくありません。この記事では、実際の火災現場に近い環境を再現し、体力・判断力・連携力を高めるための高度なメイデイドリル
を紹介します。


ホースラインを読む力を養う

火災現場では、ホースカップリング(接合部)を手がかりに出口方向を判断できるスキルが不可欠です。
訓練ではあえてホースを見失ったり、逆方向に進んでしまうシナリオを作成し、ゼロ可視環境で「触覚による情報」を頼りに脱出ルートを導き出します。

この技術を体得すれば、煙で視界ゼロの状況でも迅速な判断が可能となり、仲間や自分の命を守る確率が飛躍的に高まります。


「楽な救出」ではなく「素早い救出」を

近年のRIT訓練は、安全性を優先するあまり、実際の火災現場にある緊張感や厳しさが不足しています。
重要なのは最新機材に頼ることではなく、短いウェビング(スリング)と消防士自身の体力とスピードで迅速に仲間を救出できる力です。

新人教育では成功体験を重ねる環境も必要ですが、それで終わらず「現場に近い負荷の高い訓練」へ進化させることが求められます。


過酷なステージ設定

このドリルの目的は、5分以上「不快で厳しい環境」に身を置く耐性をつけることです。

必要な要素

  • 攻撃隊・検索隊・RIT(可能ならバックアップチームも追加)
  • ブラックアウトマスクによるゼロ可視環境
  • 低残圧(残り空気が少ない状態)
  • 建物崩落を想定した障害物
  • 通信障害
  • 負傷者や隊員の救出ミッション

廃屋や訓練施設が理想ですが、資材を組み合わせた即席の崩落プロップでも実施可能です。


訓練の流れと応用

  1. 開始:攻撃隊が前進、検索隊が捜索を実施。
  2. メイデイ発令:指揮官が崩落を宣言し、攻撃隊または検索隊を遭難隊とする。
  3. 対応:残存チームが救出に動き、同時にRITを別入口から投入。
  4. 追加アレンジ例
    • 指揮官がリーダーを抜き取り、欠員に気づくか検証。
    • 無関係な任務を与えた別隊を混ぜ、意図的に通信混乱を発生させる。
    • 全員の空気残量を操作し、ローレベルアラームが鳴る状況で救出を実施。
    • 元の進入口を封鎖し、別の出口を探させる
    • チームリーダーは「来て」「そこ」ではなく、実際に手で誘導する。

RITバッグ操作の徹底

遭難隊を発見した際には、ゼロ可視環境下でRITバッグを展開しボンベ充填を行います。
全員がこの操作を繰り返し体験することで、緊急時に素早く正確に接続できるスキルが身につきます。

重要なのは「誰が先に見つけるか」ではなく、訓練通りに迅速な搬出を遂行することです。


常識を忘れない

過酷な訓練であっても、シンプルかつ合理的な判断が基本です。
次回のメイデイドリルには、この記事で紹介した要素を取り入れ、実際の火災現場に即した高度なRITトレーニングを実施してください。


✅ ポイントまとめ

  • 短いウェビング+体力とスピードで救出を優先
  • ゼロ可視+低残圧+通信障害で現実的な緊張感を再現
  • リーダー不在や別任務隊の交錯で混乱を演出
  • RITバッグ操作とホースライン読解を徹底訓練
  • 進入口の変更・封鎖で柔軟な対応力を養う
  • 常識を持ちつつ「素早い救出」を最優先する

著者について

✍️ 著者:レスキューゴリラ(A市消防本部 消防司令補)

  • 経歴:消防士として約20年の現場経験を有し、火災・救助・災害対応に幅広く従事。特にRIT(救助介入チーム)訓練高所・低所救助の専門知識を持つ。
  • 専門分野:火災原因調査、ロープレスキュー、車両火災対応、RIT戦術の教育・指導。
  • 活動実績:数百件以上の火災出動経験を持ち、救助技術指導や消防学校での講師経験もあり。現場だけでなく教育の分野でも消防力の底上げに貢献。
  • 信念:最新機材よりも「体力・技術・チームワーク」を重視し、実際の火災現場で役立つシンプルかつ効果的な戦術を追求している。

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