【救助技術】Vストラップを活用した「パイク&ピボット」テクニックでリッターをエッジ越えに引き上げる方法

ロープレスキュー

ロープレスキューの現場では、ハイディレクショナル(高所支点)が設置できない状況に直面することがあります。そんな時に役立つのが、パイク&ピボット技術とVストラップの組み合わせです。

この記事では、エッジ越えでのリッター(担架)の引き上げを補助する方法を、現場に即したリギングの考え方とともに詳しく解説します。


パイク&ピボットとは?

「パイク&ピボット(Pike & Pivot)」は、リッターがビルや崖のエッジを通過する際にテコの原理を活用してスムーズに持ち上げる技法です。

通常、リッターの頭部だけを引き上げようとすると、下半身が引っかかり、ロープに過剰なテンションがかかります。これでは救助効率が低下する上、リッターや隊員の安全性にもリスクが生じます。


Vストラップとは?|特徴と基本構成

Vストラップは、軽量かつ柔軟な補助リギングツールで、以下のような特徴があります。

  • 構成:直径8mm前後・長さ約30ft(9m程度)の補助ロープ
  • 形状:「V字」構造で中央にフィギュアエイトオンアバイト、両端にカラビナ
  • 接続方法:中央部をMAやアズテックに接続し、両端をリッターの重心付近に取り付け
  • ルート必ずメインとビレイロープの下を通して配置すること

このVストラップにより、頭からではなく重心下部から持ち上げる力が働くため、ヒンジ動作(pivot)によってリッターを滑らかにエッジ越えさせることが可能になります。


ハイディレクショナルがない現場での実践方法

状況設定

  • メインライン(主索):黄色
  • ビレイライン(補助索):赤色
  • MA(メカニカルアドバンテージ):すでに設置済みの3:1または5:1の引き上げシステム
  • 高所支点なし(もしくは使用できない)

課題

  • リッターをそのまま頭から持ち上げると、テコの作用で大きな負荷がかかる
  • MAがリッターと一直線に構成されていないため、直接のリギングが難しい

解決策:アズテック×Vストラップの併用

本方法では、既存のMAをそのまま維持(オートロック)しながら、Vストラップに別途アズテック(4:1や5:1)を接続して、リッターのエッジ越え部分だけを補助的に引き上げます。

手順の流れ(簡易)

  1. リッターの重心部にVストラップ両端を取り付け
  2. Vストラップ中央部にアズテックを接続(MPDやプーリー)
  3. アズテックを手動で操作し、リッターの下部から引き上げる
  4. メインロープはトレイル(追従)させる形で支える
  5. 頭部がエッジを超えたら自然とピボット(回転)して全身を引き上げ可能に

Vストラップ装着後、パイク&ピボット動作に入る前に、アテンドしているレスキュアー(付き添い救助者)はリッターより先に上部(エッジの内側)へ移動しておくことが重要です。


メリットと注意点

メリット

  • ハイディレクショナル不要の引き上げ補助が可能
  • テコの作用を抑え、少ない力でスムーズに操作できる
  • Vストラップはコンパクトで軽量なため携行性も高い

注意点

  • Vストラップがビレイやメインの上を通ると干渉する可能性があるため、必ず下を通す
  • MAに直接接続すると利得が1つ減る(例:5:1→4:1)点を理解しておく

まとめ|Vストラップ×パイク&ピボットは「現場で使える武器」

この技術は、全てのロープレスキュー隊員が身につけるべき「引き上げの基礎応用テクニック」です。ハイディレクショナルが使えない場面でも、柔軟な発想と小型ギア(アズテック)を使うことで、安全で効果的なエッジ越えが可能になります。

現場ではマニュアル通りにいかないことの方が多い。だからこそ、「こうすればいける」という引き出しを多く持つことが大切です。

参考動画

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