メイデー(MAYDAY)事案を指揮するための訓練

セーフティ&サバイバル

― 隊員の即応力を高めるため、単一隊・複数隊訓練を計画する ―

消防活動における「メイデー事案」は、最も深刻で危険な瞬間です。指揮官や隊員が現場で成功するためには、個人訓練・隊レベル訓練・複数隊訓練を計画的に行い、いつ発生するか分からないメイデーに備える必要があります。


メイデーとは何か

メイデーとは、消防士自身が危険にさらされ、救助を必要とする状況を示す緊急無線です。火災現場では予測できないタイミングで発生するため、事前の徹底した訓練が生死を分けることになります。
特に指揮官は、メイデーを軽視せず、常に想定して準備することが求められます。


個人の責任とメイデー通信

調査データ(Project Maydayなど)によれば、倒れた消防士を最初に助けられるのはその場で活動している隊であるケースが多いとされています。
したがって、一人ひとりが「自分が助ける」という責任を持って訓練に臨む必要があります。

  • LUNAR通信(位置・所属隊・氏名・残圧・必要資器材)の反復練習
  • 「Who, What, Where」モデルでの簡潔な無線伝達
  • メイデー受信時の指揮官応答やRIT(迅速介入隊)出動のリハーサル

これらを日常的に習慣化することが重要です。


隊レベル訓練(Company Drills)の重要性

隊として訓練を重ねることで、実際に倒れた消防士を発見・救出する力が高まります。

訓練の要点

  • 要救助者の特定:階層・区画・部屋の情報から探索効率を高める
  • 進入経路の活用:裏口や側面ドア、VES戦術を用いる
  • 捜索補助:PASSアラーム・TIC・タグラインで位置を特定

除去技術の反復訓練

  • 床抜け救出など困難ケースの練習
  • 窓やはしごを使った救出
  • SCBAベルトやDRDを用いたドラッグ搬送

指揮官の役割とRIT訓練

指揮官は単なる管理者ではなく、現場の情報伝達を整理するリーダーとして機能しなければなりません。

  • 建物の特徴を無線で共有(階数・構造など)
  • 各隊員に「階層」と「外壁面(A/B/C/D)」を報告させる
  • LUNARや「Who, What, Where」モデルを繰り返し練習

通信の正確性が、救助活動全体の成否を左右します。


複数隊によるメイデー訓練

単一隊だけでなく、複数隊を動員して現実に近いシナリオ訓練を行うことが不可欠です。

  • 初期は「方向感覚を失った隊」など単純なケースからスタート
  • 徐々に複雑化し、複数RITや追加指揮官を必要とする大規模訓練へ発展
  • 実際の火災現場と同じ規模で管理する経験を積む

これにより、初動指揮官が現場で直面する本番さながらの判断力が養われます。


結論:真剣に取り組むことが成功の鍵

すべての消防士、特に指揮官は、メイデー訓練を軽視してはなりません。

  • 個人訓練で即応力を養う
  • 隊レベル訓練で連携力を高める
  • 複数隊訓練で現場規模に適応する

これらを積み重ねることで、現場の「その瞬間」に備え、自らと仲間を救う力を得ることができます。

著者について

✍️ 著者:炎月(えんげつ) ― S市消防本部 消防司令

経歴
消防士として25年以上勤務し、火災・救助・震災対応など幅広い分野で活動。特に大規模火災や風水害対応での現場指揮経験が豊富で、数々の困難な状況を乗り越えてきた。

専門分野
火災原因調査、都市型水害救助、ロープレスキュー戦術、車両事故対応。現場の実務と理論をつなぐ教育にも力を注ぎ、消防学校での研修プログラム開発にも携わる。

活動実績
火災・救助出動は延べ800件以上。消防学校や地域講習会で講師を務め、若手育成と市民防災教育の両面で成果を挙げる。

信念
「準備は最大の防御」を座右の銘とし、実戦に即した訓練と冷静な判断力を重視。現場だけでなく教育を通じて地域全体の安全意識を高めることを使命としている。

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