【フェンス刺突事故の救助方法】安全な対応手順と切断・搬送のポイント

救助

フェンスのピケットや鉄柵が人体に刺さる「刺突事故」は、発生頻度は低いものの、極めて危険で慎重な救助活動が必要です。無理に引き抜くと、重大な出血や臓器損傷を招く恐れがあるため、刺さったままの状態で安全に搬送することが鉄則です。ここでは、消防士・救助隊員が知っておくべきフェンス刺突事故の初動対応から搬送までの流れを、解説します。


1. 初動対応:PPE着用と状況確認が最優先

現場到着後、まず行うべきは隊員自身と患者の安全確保です。
PPE(Personal Protective Equipment:個人防護具)として、防火衣、ヘルメット、作業用手袋を着用します。その下には医療用手袋(EMSグローブ)を装着し、血液や体液への二次感染を防ぎます。

次に、刺突の状況を把握します。事故原因(作業中の転倒、落下など)や刺さった角度、深さを確認します。これは後の切断や搬送計画に直結します。あわせて現場周囲の危険物や不安定な構造物がないかも確認します。


2. 測定作業:搬送経路と刺突物の長さを把握

搬送経路の確保は救助の成功に直結します。
まず、室内や建物内の場合はドア幅(一般的に約80cm)、救急車後部ドア幅、ストレッチャーの寸法を確認し、患者をどの向きで搬出できるかを計画します。

続いて、刺さっているフェンスピケットの長さを測定します。例えば、通常のピケットが約100cmで、刺突後に残っている長さが約80.0cmであれば、およそ20cmが体内にあると推測できます。この情報は医師が損傷範囲を判断する重要なデータです。

可能であれば、切断した刺突物の一部を医療機関へ持参します。材質(鉄、アルミなど)、重量、中空か実体かの違いは、手術計画や感染リスク評価に役立ちます。


3. 患者の体重支持:上下からの安定確保

刺突事故では、患者の自重が刺さった物をさらに押し込む危険があります。そのため、上下からの確実な体重支持が不可欠です。

  • 下からの支持
    EMS用ロングボードやプラットフォームなどで下方から身体を支え、刺突物への荷重を減らします。
  • 上からの支持
    梯子や車両のクレーンを利用し、腕の下にスリングを通して吊るす方法があります。

この上下二重の支持体制により、切断作業や搬送時の二次損傷を防ぎます。


4. 切断方法:バンドソーまたはペトロゲンで安全に処理

刺突物の除去にはバンドソーが第一選択として推奨されます。バンドソーは火花や熱の発生が少なく、患者や周囲の安全確保に適しています。
しかし、フェンスの設置位置や材質、形状によってはバンドソーが使用困難な場合があります。その際はペトロゲン(酸素加熱切断機)を使用することも可能です。

バンドソー使用時のポイント

  • フェンスに沿わせ、振動を最小限に抑える
  • 全長の約3/4(75%)まで切断したら一度停止し、誰が支えを持つかを確認
  • 切断完了と同時に、支持要員が荷重を確実に受けられる体制を整える

ペトロゲン使用時のポイント

  • 火花や高温が発生するため、患者や周囲を耐熱シートや防炎カバーで保護
  • 火災の危険があるため、必ず消火器や水バケツを準備
  • 切断時は短時間で処理し、金属が熱を持ちすぎないよう注意
  • 切断後は刺突物が高温になるため、冷却処置を行ってから搬送

選択の目安

  • バンドソー:火花が危険な環境や患者に熱影響を与えたくない場合に適する
  • ペトロゲン:分厚い鋼材やバンドソーが入らない位置の切断に有効

5. まとめと注意点

フェンス刺突事故では、以下の原則を必ず守りましょう。

  • 無理に引き抜かない
  • 上下から体重を支持し、二次損傷を防ぐ
  • 搬送経路の測定と確保を最優先
  • バンドソーで安全に切断する
  • 医療機関へ刺突物の情報とサンプルを提供する

この対応によって、患者の救命率向上と二次被害防止が期待できます。

参考動画

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