バスケットラッシング

ロープレスキュー

救助活動において、患者の安全は最優先事項です。ラッシングとは、患者を救助担架に固定する技術のことを指します。この技術によって、患者を安全に搬送し、二次的な怪我を防ぐことができます。この記事では、ラッシングの基本から具体的な手順まで詳しく解説します。

基本的な安全策

救助活動において、患者の安全な固定は極めて重要です。患者を安全に固定するために必要な基本的な装備とテクニカルな地形での固定方法について具体的に解説します。

必要な安全装備

  1. ウエビングハーネス:患者を安定させ、移動中の落下やズレを防ぐためには、体をしっかりとサポートするハーネスが必要です。
  2. ヘルメット:頭部を保護するためには、認証された安全性の高いヘルメットの装着が必須です。特に岩がちな地形や落下物のリスクがある環境では、患者の頭部を守ることが重要です。
  3. アイプロテクション:目を保護するためのアイウェアも同様に重要です。飛散する小石や塵、強風等から患者の目を守るために、安全なゴーグルや保護メガネを用いることが推奨されます。

テクニカルな地形での固定方法

  1. ラッシングの技術:テクニカルな地形では、ハーネスが患者の負傷を悪化させないよう、特別なラッシング技術が必要です。この技術では、ハーネスの圧力が均等に分散されるよう調整し、さらなる外傷を防ぎます。
  2. 地形に応じた調整:岩場や崖など、特定の地形においては、ハーネスの位置や固定方法を微調整する必要があります。これにより、患者が固定具による追加的な圧迫や摩擦から保護されます。

注意点

  • ラッシングの位置:患者を固定する際は、特に下部に位置するレールを使用し、上部のレールの使用は避けることが推奨されます。これは、上部レールを使用すると、患者が岩にこすれて怪我をする可能性があるためです。
  • 圧迫の防止:患者の解剖学的な構造を考慮して、過度の圧迫がないように注意します。適切なパディングの使用は、室内圧縮症候群を防ぐためにも重要です。

これらの基本的な固定方法と装備を適切に使用することで、患者は救助活動中に最大限の安全を確保することができます。

詳細な手順

救助活動において、ラッシングは患者を安全に固定し、搬送中の危険から守るための重要なプロセスです。以下に、ラッシングの際の具体的な手順を詳しく説明します。

1. 避難計画の説明

  • 情報共有:救助にあたり、まず患者に避難計画を説明し、次のステップについて理解してもらいます。これは患者が不安を感じないようにするため、また協力を得るために重要です。

2. 担架の準備と安全確認

  • 担架の選定:使用する担架が分解可能なタイプの場合、各部分が正しく組み立てられているかを確認します。
  • 接続ポイントの確保:担架の接続ポイントを一つ一つチェックし、固定具がしっかりと締められていることを確認します。これにより、搬送中の担架の破損や患者の転落を防ぎます。

3. ラッシングの実施

  • 最低レールへの固定:前述のとおり患者を担架に置いた後、ラッシングを最も低いレールに確実に固定します。これは患者が担架から滑り落ちるのを防ぐためです。
  • 患者の動きの制限:患者をしっかりと包み込むようにウェビングやストラップを使用し、不必要な動きを最小限に抑えます。上部レールの使用は避けることが望ましいです。これは、上部での固定が患者を岩などに擦れさせる原因となり、怪我をさらに悪化させる可能性があるからです。

4. 圧迫防止と快適性の確保

  • 適切なパディングの使用:前述のとおり患者の解剖学的な構造に配慮し、圧迫を避けるためにパディングを適切に配置します。特に圧迫による室内圧縮症候群を防ぐため、重要な圧力点には特に注意を払います。
  • 体温調整:パディングの他に、患者の体温調整も重要です。特に寒冷地や冷たい環境下では、患者の体温が急速に下がることを防ぐために、断熱材や緊急用の保温ブランケットを用いることが推奨されます。

5. 安全チェックと最終確認

  • ラッシングの再確認:全ての固定が終わった後、もう一度、各固定ポイントを確認し、緩みがないかチェックします。
  • 患者の状態の再確認:ラッシングのプロセスが終了した後、患者の体調と快適性を再度確認し、問題がないことを確認します。

これらの手順を実行することで、患者を安全に固定し、救助活動を円滑に進めることができます。

ストークスバスケットの使用準備

ストークスバスケットは、垂直または水平の持ち上げを行う際に使用します。胸部ハーネスと骨盤ハーネスは、それぞれ患者が上または下に滑らないようにするためのもの。8m(30フィート)のウェビングを用いて外部ラッシングを行い、これにより患者はバスケット内でしっかりと固定されます。

詳細なラッシング方法

救助活動における患者の固定は、安全かつ迅速に行われるべきです。以下に、胸部ハーネスと骨盤ハーネスを用いた固定方法について、具体的な手順を紹介します。

胸部ハーネスの設置(チェストハーネス)

  1. ハーネスの準備:胸部ハーネス用のウェビングを18インチのループにします。このループは、患者の胸の中心に位置するように設定します。
  2. ループの配置:ループを患者の頭上から下ろし、胸の中心に位置づけます。その後、ループの両端を患者の脇の下を通過させ、胸の前で結びます。
  3. ウェビングの調整:ウェビングを締めて、患者がバスケット内で上に滑り上がるのを防ぎます。ラウンド・ターン&ハーフ・ヒッチで固定することが多いです。

骨盤ハーネスの設置(シットハーネス)

  1. ウェビングの準備:骨盤ハーネス用のウェビングを同様に中央でループを作ります。
  2. ループの配置:このループを患者の腰部に合わせ、ループの一端を足の周りに回して、もう一端は反対側の足を回ります。
  3. ウェビングの固定:ウェビングの端をループの下を通し、骨盤の上部でラウンド・ターン&ハーフ・ヒッチで固定します。これにより、患者が下に滑り落ちるのを防ぎます。

エクステリアラッシングの実施

  1. ウェビングの配置:8m(30フィート)のウェビングを使用し、バスケット内で患者をX字形に固定します。ウェビングは患者の上部と下部に平行に走らせ、重要なポイントを確実に固定します。
  2. ウェビングの結び方:ウェビングをバスケットの垂直メンバーにラウンドターンと2つのハーフヒッチで固定します。これにより、患者は移動中にバスケット内で動かないように確実に保持されます。

これらの手順を通じて、患者はバスケット内でしっかりと固定され、持ち上げや移動中の安全が確保されます。救助隊員はこれらの技術を習得し、実際の救助現場で効果的に活用することが求められます。

フットループの設置手順

フットループは、特に垂直移動の際に患者の快適性と安全性を高めるために使用されます。ConterraのRick Lipkeが提案している「レッグラッシュ」の方法をわかりやすく説明します。

1. ウェビングの準備

  • 使用するウェビングは、長さ約6メートル(20フィート)です。
  • ウェビングの一端を、患者の膝の下にある担架のレールに固定します。これがフットループの基点となります。

2. 足のループの作成

  • ウェビングを患者の足から反対側へと巻き付け、足の外側にループを形成します。
  • その後、ウェビングを担架の反対側のレールに回し、再び足の間を通して足の下のウェビングをキャッチします。これにより、両足を支えるループが完成します。

3. テールの固定

  • ウェビングを引き締めて、始点に戻ります。ここで、しっかりと固定し、ウェビングの緩みがないようにします。
  • ウェビングの残りの部分(テール)を再度引き締め、始めに固定したレールに固定します。

4. 安全対策の追加

  • 操作が急勾配で行われる場合、患者の膝を保護するために擦り切れ防止パッド(例えばSAMスプリントやスライダーロープガード)の使用を検討します。これは、摩擦による損傷を防ぐために重要です。

簡易版フットループの作成

  • さらに簡単な方法として、足を結ぶ代わりに、ウェビングで単純な結び目を作ることができます。この方法では、ウェビングを足の周りに一度巻きつけてから、担架のレールに固定するだけです。これは迅速な設置が必要な状況で特に役立ちます。

最後に

ラッシング技術は救助活動において不可欠であり、正しく行うことで患者の安全を守ります。今回の記事で紹介した内容をもとに、救助隊員はより効果的な救助活動を展開できるようになることでしょう。安全な救助を行うためにも、常に最新の技術を学び、実践に活かすことが大切です。

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