はじめに:側面横転車両でのルーフ切断の重要性
交通事故現場では、車両が側面を下にして横転している状況がしばしば発生します。
こうした状況下で要救助者を迅速に救出するには、ソーゾールでの「ルーフの切断(ルーフ・エボリューション)」が非常に有効です。
この記事では、車両安定化からルーフ切断、患者搬送に至るまでの一連の流れを、消防士・救助隊員向けに詳しく解説します。
初動対応:車両の安定化とハザードサーベイ
安全第一!現場到着後すぐに行うべきこと
- ハザードチェック:燃料漏れ、バッテリー位置、安全装置(エアバッグ等)を確認
- 車両安定化:ダーティーサイド(接地側)を中心にクリビング材を使って固定
- 安定化が不十分だと、切断中に車両が動いて二次災害の恐れあり
救急隊による初期アクセスと患者保護
救助開始前に必要な処置とは?
- 救急隊員は片膝立ちで車内にアクセス(緊急退避のため両膝は不可)
- 呼吸確保のためO2マスク装着
- **頸部固定(頭部保持)**を行い、切断作業に備える
フロントガラス除去と切断準備
ガラス粉塵と切断軌道に注意!
- フロントガラスの取り外し:飛散防止のため防護具を着用し、顔は足で覆う
- ソーゾール使用時の監視役配置:救急隊との連携で刃先の軌道確認を常に行う

屋根切断(ルーフ・エボリューション)の実施手順
側面横転車両でのルーフ切断は、要救助者の迅速な搬送ルート確保のために非常に有効な手段です。
ただし、エアバッグの展開リスクや工具の刃先による二次被害など、重大な危険を伴う作業でもあります。以下の手順を正確に実行することで、安全かつ効果的に活動を行えます。
① 内張り(トリム)の除去
目的:サイドインパクトエアバッグの誤作動を防ぐ
- A・Bピラー周辺の内張り(トリム)を手やカッターで丁寧に剥がします。
- 剥がすことで、ピラー内部のガスインフレーターや配線の位置を目視で確認でき、エアバッグの誤作動を未然に防止できます。
- 内張り内に高圧ボンベや火薬式ガス装置がある車種もあるため、注意が必要です。
- トリムを除去する際は、ガラス片や鋭利なフレーム端部に注意し、厚手の耐切創グローブを着用します。
② A・Bピラーの切断
目的:屋根を「フラップダウン(前方に折りたたむ)」するための支点解除
- カッターやスプレッダーを用いてAピラー(運転席側前方)、Bピラー(運転席と後部座席の間)を切断します。
- ピラー内部には**サイドエアバッグ用のインフレーター(高圧容器)**があるため、切断位置を避ける配慮が必要です。
- 切断前には必ず救急隊と合図を取り、作業スペースに人がいないか再確認します。

③ ルーフ本体の切断(ソーゾール等使用)
目的:車両屋根を切開し、開放空間を確保する
- ソーゾール(レシプロソー)を用い、車両ルーフを横方向または対角線状に切断します。
- 作業時は、救急隊員が屋内で患者の頭部や体を保護していることを確認してから開始します。
- 刃先がルーフを貫通する際、車内に飛び出す可能性があるため、刃の進行方向を常に監視する補助者(セーフティ)が必須です。
- 火花や粉塵が発生するため、**目や気道を保護する装備(アイガード・N95マスクなど)**を装着します。

④ ハードプロテクションの設置
目的:患者と工具との直接接触を防ぎ、安全性を確保する
- 切断作業中、**患者のすぐ上または周囲に硬質保護板(スチールプレート・ハードシールド)**を配置します。
- この保護材がソーゾールの刃や飛散物の直撃から患者を守る役割を果たします。
- 簡易なプロテクションではなく、衝撃に耐えうる硬質素材を使用することが望ましいです。
- 設置後も、切断中に位置がズレていないか、常に補助員が確認します。
搬送経路の確保と安全な患者搬送
ルーフ解放後の注意と搬送技術
- 切断面にはエッジプロテクションを装着
- ロングボード使用で、頭部〜足が一直線になるよう配慮し搬送
- 体位変換の際は2名以上で丁寧にサポート

まとめ:安全・確実・迅速なルーフ切断を実践するために
側面横転車両におけるルーフ切断は、救助の要となる重要な作業です。
現場での安全性を高め、的確に対応するためには以下のポイントを徹底しましょう。
- 車両安定化とハザードチェックの徹底
- 救急隊との連携による安全な作業進行
- ソーゾール使用時の刃先管理とプロテクション装備
- エッジの保護と患者の身体的・心理的配慮
訓練・準備・連携が、現場の「命をつなぐ力」になります。
全国の救助隊の皆さんと共に、さらなる技術向上と安全意識の強化を目指しましょう。
参考動画一覧(YouTube)
- 【Auto X Training】Flap Down Roof – Side Resting Vehicle
▶️ https://www.youtube.com/watch?v=LafdpvCiHEw
内容:側面横転した車両に対するルーフ・フラップ(切断→前方に倒す)作業をステップごとに実演。安定化→トリム除去→ピラー切断→屋根開放→搬送の流れが明確です。 - 【Fire Training Toolbox】Vehicle Roof Flap – Extrication Techniques
▶️ https://www.youtube.com/watch?v=98c2AKkKX7Y
内容:ソーゾールを使用したピラー切断と、患者保護用ハードプロテクション配置の手順を丁寧に解説。安全対策の具体例も充実。 - 【Bergen County Fire Academy】Auto Extrication Side Resting Vehicle
▶️ https://www.youtube.com/watch?v=MTDxXkSsw8g
内容:実際の消防士による訓練シーン。車両安定化・ルーフ除去・患者搬送がリアルに再現されています。研修教材としても最適。









