林野火災

消防

日本は国土面積の約67パーセントが山林で占められているため、林野火災発生の危険性が高い国です。貴重な環境資源である森林は、一度焼失すると再生するまでに数十年の歳月がかかります。
ここでは、林野火災の消火活動について記載します。

林野・原野火災

装備品

消防隊員は、すべての林野火災に防火衣や呼吸器等完全なPPEを着用する必要があります。

地形・風向き気象などにより、火勢が急変することから状況判断が難しく、隊員の活動危険が高くなります。そのため、PPEは消防士の安全に常に不可欠です。

活動内容

車両停車位置

消防車両の停車位置は、最先着消防隊は直近部署を原則としてください。
林野火災で重要なことが、迅速な放水です。

延焼速度は、時速4~7km/hで草丈の高いススキなどの密生地では、風の状況によっては時速10km/hにもなります。そのため、延焼範囲が小さなうちに消火することが重要です。

サイズアップ

おおよその風速と風向きを確認する。
隊員を風下に配置しないように予測してください。

飛び火で延焼していないか確認する。
火の勢いが強く、延焼速度も強風時には時速15km/hで進むとされ、風に吹かれ飛火して延焼拡大することも多くあります。
なお、飛火の飛散範囲は100mから1000mに及ぶことがあるとされています。

ホースラインの作成

水槽付きの消防ポンプ自動車が直近部署することが基本的な活動なので、水の節約を心がける。
水槽付きの消防ポンプ自動車では基本的に1500L以上の水を積載しているので、放水ができる時間は3~5分です。

林野火災や原野火災は中継放水までに時間を要しやすい。

65mmホースを10本延長=63L×10本=630L
65mmを10本延長すると約630L使用しますので、放水できる水量が1000L未満になってしまいます。

ホースは40mmを使用するなど、無駄なホース延長は行わない。
40mmの場合、摩擦損失注意

40mmホース戦術 に対する画像結果

ノズル操作

林野火災では、側面挟撃消火戦術を基本的に行ってください。
側面挟撃消火戦術は、林野火災で最も有効な戦法で、急激に上昇延焼する斜面の火災を側面から攻める戦術です。
 延焼火線の幅を狭めるようにして、尾根に追い上げ、必要により尾根付近に防火線又は防ぎょ線を設定することにより火勢が弱まったところを制圧します。

https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college//movie/03senmon/05shobodanin/04_3kiso_06_2.mp4

林野火災や雑草火災で共通する消火戦術は、少流量で放水することと燃焼部を放水しないことです。

林野火災での一番のリスクは、水の枯渇です。

前述でも触れたとおり、 水槽付きの消防ポンプ自動車では基本的に1500L以上の水を積載していないため大量放水は行えません。

なので、少ない放水量で延焼が予測される箇所をまんべんなく、放水することが重要なのです。
燃えてしまった箇所は、無理に消火しないようにしてください。
燃焼箇所の端及び延焼予想箇所を放水しましょう。

風の向きによって、すぐに延焼方向が変わるため注意が必要です。

残火処理

残火処理は、主火災が鎮火しても安心せずに区域ごとに隊を指定して、火たたき・覆土・放水などを繰り返し行なって、小さな火種を見逃すことなく完全消火に努めましょう。

風速や風向きに注意!

少量の放水で延焼を阻止する

残火処理は確実に行う



大規模林野火災(山火事)

大規模な林野火災は、貴重な森林資源を大量に焼失するおそれのほか、家屋等への被害、市町村・都府県境を越えた拡大などが懸念されます。
地上消火活動は多くの人員が必要となり、資器材の搬送や長時間の放水活動で消防隊員の体力は疲労困憊します。ヘリコプターによる情報収集と空中消火は、広域応援や地上の消火活動との連携による消火活動を実施するために欠かせない消防戦術であり、都道府県や消防機関が保有する消防防災ヘリコプターや都道府県知事からの災害派遣要請を受けて出動する自衛隊ヘリコプターにより実施されています。

 ファイアラインの編成

火災の燃料の切れ目のことをファイアラインといいます。ファイアラインは可燃物の切断や水で湿らすことで作成します。

森林火災のあらゆるレベルで安全で効果的な運用を確保するには、優れたリーダーシップとチームワークが必要です。優れた組織の基本原則は、指揮系統と制御範囲です。

指揮隊長

指揮隊長は火災の責任者であり、すべての活動を管理する完全な権限を持っている必要があります。小さな火事では、火災抑制を調整するのは彼らの責任です。消防士の数が増えると火災がより複雑になり制御範囲を維持するために、他の部隊長に権限を委任する必要があります。

規模に関係なく、すべての火災には常に指揮隊長がいます。火災が拡大し続ける場合でも、最終的な決定は指揮隊長によって行われますが、隊員のパフォーマンスに影響を与える決定(例:ホースの配置、ポンプのセットアップなど)は、小隊長の責任になります。
しかし、全体的な活動に影響を与える最終的な決定は、指揮隊長によって行われます。そのためパフォーマンスに影響を与える決定に対してすべての責任を負います。

ファイアラインの場所

以下は、ファイアラインの位置に関するいくつかの一般原則です。

ファイアラインをファイアエッジのできるだけ近くに配置します。これは消防士により安全性に直接攻撃をすることを可能にします。

火に囲まれるのを防ぐために、常にファイアラインを安全な制御ラインに固定するようにしてください。
ファイアラインに障壁があるとベストです。
例.道路、トレイル、川、湖、岩。

火が急速に広がっている場合、または直接攻撃するには熱すぎる場合は、 火の端から十分に後ろからファイアラインを作成してください。

下の図のように真下に火がある下り坂のファイアラインの作成は避けてください。火災時の下り坂のファイアライン作成時、あなたの真下に火があるのは危険です 火は急速に上り坂に広がります。

安全のため下から上に、風上から風下へ攻める

森林火災抑制ツール

シャベル

シャベルは次の目的で使用できます。

活動の障害になる小さな枝を切ることができます。

間接攻撃で塹壕を掘ったり、落ち葉等の可燃物を掘り出したりします。

直接攻撃で火を叩き消すことができます。砂や土をかけて窒息消火をすることもできます。
シャベでの直接攻撃は、火の高さが2m未満のときにしてください。

シャベルは、バックタンクまたはホースから水をかけることができるように、深く燃える残り火を露出させるためにも使用されます。水が利用できない場合は、シャベルを使用して、露出した残り火を土と混合させて消火できます。

シャベルには制限があります。火災の激しさにより、隊員は土を火に投げ込むのに十分な距離で作業することができない場合があります。シャベルで土を投げるための有効範囲は約5メートルです。

ファイアライン付近に置いているシャベルは、土に差し込まれて垂直状態であるか、木にもたれかかっている必要があります。これにより、それを見つけやすくなり、消防隊員の怪我のリスクが軽減されます。

可搬消防ポンプ

消防隊は林野火災において可搬消防ポンプを使用します。人力で搬送できる可搬消防ポンプは、消防用車両が進入できないような狭いところでも消火活動を可能にします。
火災規模によれば10機以上使用することもあります。消火活動の生命線になると考えてください。

以下の点に注意してください。

定期的に稼働させており、有事の際使用できるようにしておく。

燃料の残量をチェックしておく。林野火災では、長時間稼働させるため予備燃料は常時用意しておく。エンジンオイル等も

吸管に亀裂等異常がないか確認しておく。

ホースライン100mから200m間隔に設置するのが望ましい

簡易組立水槽

消防団が操法大会で使用する水槽です。
山火事では必須となります。特に水利から火事現場が遠い場合や、大量放水が必要と予想する場合設置します。

ホースラインイメージ図

大規模林野火災必要資器材

  • 無線・トランシーバー
  • 可搬消防ポンプ
  • 分岐管
  • ポンプ燃料
  • 簡易組立水槽
  • シャベル(スコップ)
  • ホース
  • ノズル
  • ロープ
  • ノコギリ、チェーンソー
  • 飲料、食料
  • 山林地図
  • 軽トラック

活動内容

効率よく火災を最小サイズにうまく封じ込めることが、消防隊の全体的な目標です。これは、さまざまな方法と資器材を使用して達成できますが、すべての火災には独自の特性があり、使用される方法は毎回異なります。消火の目標を達成するためには、火災の存続期間を通じて、状況の評価を最初に定期的に実施する必要があります。この評価はサイズアップと呼ばれます。

サイズアップは、火災周辺の状況を継続的に評価することであり、最初に行われる最も重要な決定事項は、活動の取り組みに大きな影響を与えます。火災に関する知識を得るために情報を収集する必要があります。

周囲に確立されたホースラインは、常に熱源のない場所に配置する必要があります。熱源に近すぎると、配置されたホースラインが破裂する可能性があり、消火現場で水に依存している隊員の安全が損なわれます。

森林火災の抑制には、間接攻撃と直接攻撃の2つの方法があります。どちらの方法が使用されるかどうかは、さまざまな状況によって異なりますが、火災レベル、拡散率、利用可能な初期資器材の種類によって選択が決まります。

直接攻撃
燃焼物のすぐ隣で火を攻撃する方法。この方法の最も一般的な例は、隊員または機械が火の縁のすぐ横で放水及び除去作業をすることです。この方法を使用するには、消防士が火の端に近づくのに適度な燃焼状況である必要があります。前述したように、ホースラインまたはシャベルが直接攻撃によく使用されます

間接攻撃
この攻撃方法では、燃料である木々等は接近する火の経路から分離されます。この方法は通常、消防士が熱や煙の状態のために火の前に近づくことができない高強度の火災に適用されます。例としては、重機で切断ライン(空地)を作成し、火を燃え尽きさせます。

3人用ノズルクルー
この方法では、1人のノズルマン、1人のホースマン、1人のバックアップがあります。小隊長は、ラインをどこに敷設するかを決定します。ノズルマンは放水し、ラインの延焼速度を制御します。バックアップは、ホースを移動するときにノズルマンを補助し、ホースを結合または分離し、ホースを取り扱うことでノズルマンを支援します。乗組員の3人目はホースマンであり、ホースを設定し、必要に応じてホースを取り扱い、必要に応じてホースが利用可能であることを確認する責任があります。

3人用ノズルクルー – 1 ノズルマン – 1 ホースマン -1 バックアップ

 4人用ノズルクルー
このシステムは3人用ノズルクルーと同じですが、ホースの移動/操作を支援する追加のバックアップを備えています。

4人用ノズルクルー – 1 ノズルマン – 2 バックアップ – 1 ホースマン

モップアップ

モップアップ(残火処理)は、火が鎮圧、放水が不要になったときに行います。モップアップは、地面の表面の水分レベルが重要になります。火災鎮圧後は、地面の状態は濡れており、ほとんどの熱源が表面にあるため、モップアップの作業が簡単になります。地面の状態が乾燥し、熱が数日、数週間、さらには数か月間、燃焼できる物質が地表の下に移動し始めると、作業ははるかに困難になります。

モップアップを完了するには、さまざまな方法があります。

・煙を探す
煙は熱源の兆候です。水を入れて熱源を冷やします。

・熱画像直視装置
電子機器(赤外線スキャナー)を使用して、地面または空中から表面下の熱源を見つけます。スキャンは早朝に実行するのがよいです。昼間に放射熱が表面の物体を暖め、必要のない熱画像を検知するのを防ぐ必要があります。スキャンは太陽によって加熱された岩、または表面の下で燃える残り火など、すべての熱源を選択してしまいます。

シャベル、バックタンク、ホースを装備した消防士は、熱の兆候を整然と消していきます。モップアップには、消火を徹底的に実行するための規律と時間が必要です。見過ごされた熱の1つのスポットが残っている場合、火が表面に再燃し、再び燃え続ける可能性があります。厚い奥深くに埋められくすぶっている残り火は、見つけて消すのが難しい場合があるため、忍耐強さが必要です。

適切なモップアップの手順は次のとおりです。

  1. ファイアエッジの外側の境界でモップアップを開始します。
  2. 熱源を確認しながらゆっくりと中央に向かって作業します。
  3. すべての火が消えるようにするための目と手と資器材を使用します。
  4. 一日を通して目に見える煙の兆候を探してください。
  5. ホットスポットは、火が燃え上がらないように、水で完全に浸す必要があります。
  6. 指揮隊長は、正式に火災鎮火を宣言できる唯一の人物です。

空中消火

林野火災の空中消火は、ヘリコプターにより水又は消火薬液を空中から火災地点又はその周辺に散布して行う林野火災の防ぎょです。

林野火災の場合、地上での防ぎょ活動が困難な場合が多いことから、空中消火の有効性が認識されています。火災発生を覚知した場合、早期に空中消火の実施体制を整えることが被害軽減に役立ちます。

消防・防災ヘリコプターの要請にあたって提供すべき情報

(ア)要請先市町村
(イ)要請者・要請日時
(ウ)災害発生日時・場所・概要
(エ)必要な応援の概要
また、要請側市町村の消防長は、要請後できるだけ速やかに、次の事項を応援側市町村の消防長及び要請側都道府県の知事に提供する。
(ア)必要とする応援の具体的内容
(イ)応援活動に必要な資機材等
(ウ)離発着可能な場所及び給油体制
(エ)災害現場の最高指揮者の職・氏名及び無線による連絡の方法
(オ)離発着場における資機材の準備状況
(カ)現場付近で活動中の他機関の航空機及びヘリコプターの活動状況
(キ)他にヘリコプターの応援を要請している場合における、ヘリコプター保有市町村消防本部名または都道府県名
(ク)気象状況
(ケ)ヘリコプターの誘導方法
(コ)要請側消防本部の連絡先
(サ)その他必要な事項

ヘリコプター受入体制

ア.離着陸場
離着陸場は、事前に候補地を選定しておき、これらのなかから林野火災の発生場所、要請したヘリコプターの機数や機種に応じて適地を使用する。その際には、以下の事項に留意する。
(ア) 火災現場に近いこと。
(イ) 周囲に立木、送電線、鉄塔等の飛行障害物がないこと。
(ウ) 民家、果樹園、牧場等の近隣を避けること。
(エ) 気流が安定した場所とすること。
(オ) 消防・防災ヘリコプターと自衛隊ヘリコプターの離着陸場をできる限り別に確保すること。
(カ) ヘリコプターの大きさに合わせて、所要の広さを確保すること。概ね、消防・防災ヘリコプターの場合30m×30m程度、自衛隊中型ヘリコプターの場合50m×50m程度、自衛隊大型ヘリコプターの場合100m×100m程度の広さが望ましい。なお、補給作業を行う場合は、必要な広さ(30m×30m程度)を確保すること。
(キ) できる限り平坦な場所で、舗装面または芝地・草地とすること。
イ.給水場所
給水方法に関しては、自然水利からの自己給水とポンプ車等による地上給水があるが、前者の方が消火作業効率がよいため、できる限りこれを優先する。
また、以下の事項に留意して場所を決定する。
(ア)ヘリコプターの大きさに合わせて、自己給水ポイントの水深を考慮し選定すること。
(イ)消防・防災ヘリコプターと自衛隊大型ヘリコプターの給水場所をできる限り別に確保すること。
(ウ)多くのヘリコプターが活動する場合は、上空での待機や機体の錯綜を防ぐため、できる限り複数の給水場所を選定すること。
(エ)ア.離着陸場(ア)~(ウ)を参考にすること。
ウ.給油場所等
給油場所や燃料について、燃料の調達は急を要するため、事前に緊急時の調達及び輸送について関係者と調整しておく。その際、以下の事項に留意する。
(ア)離着陸場に給油場所を設けるか、または最寄の飛行場で給油できるようにすること。
(イ)安全性や効率を考慮すると、ドラム缶よりタンクローリーによる給油の方が望ましい。
(ウ)タンクローリー給油の場合は、車両のアクセスを考慮すること。

森林情報の共有

林野火災防ぎょに必要な各種情報を掲載した林野火災防ぎょ図を、消防部局及び林野部局ほか関係部局で共有し、常に最新の情報のもとに、その活用を図る。特に、GIS(地理情報システム)を活用し、道路や水利施設、飛行障害物等のほか、過去の火災情報など最新のデータを反映して利用することが望ましいです。

グリッド図
林野火災では、ヘリの活動エリア、陸上部隊の活動エリア、火点の状況、水利の状況等を記載したグリッド図を掲示し、共有する。

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