車両救出テクニック 救出ポイント作成 その2

交通救助

ドアの取り外し

車両からの救出活動において、ガラスの取り外し後も車内の人にアクセスできない場合、救助隊はさらなる手段を講じる必要があります。特に、ドアが施錠されていて開かない状況に直面したときの対応策を以下に簡単に説明します。

ドアのアクセス方法

  1. ドアロックの解除: 最初に、窓の開口部を通じてドアのロックを解除しようとします。これには、特殊な道具を使用してロック機構にアクセスし、解錠する方法が含まれます。
  2. ドアのこじ開け: ドアロックが解除されたにも関わらずドアが開かない場合、救助隊はドアをこじ開ける必要があります。これにはレバレッジツール(てこ)を使い、ドアと車体の間に挿入してドアを強制的に開けます。
  3. ドアの取り外し: さらに、ドアが完全に動かない場合は、ドアそのものを車体から取り外すことが必要になる場合があります。これには、ヒンジやドアを支える部分を特殊な切断ツールで切り離す作業が含まれます。

安全上の注意

  • エアバッグやシートベルトプリテンショナーの作動: 救助隊は、ドアを強制的に開けたり取り外したりする際に、車両内のエアバッグシステムやシートベルトプリテンショナーが意図せず作動する可能性があることを常に意識する必要があります。これらのシステムが作動すると、救助者や車内の人に追加的な危険が生じる可能性があります。

これらの手順を踏むことで、救助隊は車内に閉じ込められた人へのアクセスを確保し、安全に救出活動を進めることができます。作業中は常に安全を最優先し、適切な保護具の使用と周囲の状況に注意を払いながら進めることが重要です。

車両のドアが開かない場合、救助隊は被害者にアクセスするためにドアを強制的に開けるか取り除く必要があります。以下に、救助隊が実行できる主な方法をわかりやすく説明します。

1. スプレッダーおよびカッターの使用

  • スプレッダー: 救助用の油圧ツールで、ドアの隙間に挿入し、力をかけてドアを開くために使用します。このツールはドアや車体の金属部分を広げるのに効果的です。
  • カッター: 強力な油圧式のはさみのようなツールで、ドアのヒンジやロック機構を切断してドアを取り外すのに使用します。

2. サイドウォールの完全な取り外しまたはサイドアウト

  • この方法では、両方のドアとBポスト(前後のドアを分ける中央の柱)を一緒に取り外します。これにより、車両の側面全体が開き、救助者が容易にアクセスできるようになります。

3. ドアヒンジのボルト取り外し

  • ラチェットレンチやパワーインパクトドライバーなどの工具を使用して、ドアを支えているヒンジのボルトを取り外します。これにより、ドアを車体から取り除くことができます。

4. サードドアの作成

  • 特に2ドア車において、ドア開口部を拡大するために新しい「サードドア」を作成します。これは、車体を切断して救助に必要なスペースを作り出す方法です。

車両からの救出活動において、ドアを取り外す前の準備として、「ピール・アンド・ピーク」(剥がして覗く)という手順が非常に重要です。このプロセスを通じて、救助隊は車両の安全装置の位置を特定し、救出作業中に発生する可能性のある危険から被害者と救助者を保護します。以下に、この活動のステップをわかりやすく説明します。

ピール・アンド・ピークの手順

1. 内部ドア周辺のプラスチック部品の剥がし

  • 救助隊はまず、取り外すドアの周囲にある内部のプラスチック部品を慎重に剥がします。これにより、ドアの内部構造や隠された安全装置、例えばシートベルトプリテンショナーやエアバッグのガスシリンダーなどが露わになります。

2. 安全装置の位置の特定

  • プラスチック部品を取り除いた後、救助隊は内部を覗き込んで、シートベルトプリテンショナーやエアバッグシステムなど、救出活動中に損傷すると危険な安全装置の正確な位置を特定します。これにより、作業中の安全装置の誤作動や部品の飛散による怪我を防ぐことができます。

3. ドアのコントロール

  • ドアを取り外す際、救助隊員はドアをしっかりとコントロールする必要があります。これを実現するために、ウェビング、ロープ、またはチェーンをドアに結びつけます。これらの道具を使用して、ドアにかかる張力を維持し、取り外しや移動中にドアが不意に動くことがないようにします。

安全への配慮

このプロセスでは、救助隊員が常にドアの動きをコントロールし続けることで、救出作業中にドアが突然閉じたり、救助者や被害者に怪我をさせるリスクを最小限に抑えます。救助活動では、これらの手順に従うことで、救出作業の安全性と効率性が大幅に向上します。

ドアのコントロール

車両の救出活動におけるドアの取り外しプロセスは、安全を確保しながら効率的に行われる必要があります。特に、ドアにエアバッグが装備されている場合、以下のステップで慎重に作業を進めます。

エアバッグ付きドアの取り外し手順

1. エアバッグシステムの電源切断

  • 最初に、車両のバッテリーを切断し、エアバッグの予備電力を消費させます。これは、エアバッグが誤って作動し、救助隊や被害者を負傷させるのを防ぐためです。

2. 黄色のワイヤーの取り扱い

  • ドアとAポスト(ドアの前端にある車体の柱)の間にある黄色のワイヤー(これはエアバッグシステムを制御するワイヤーです)を露出させます。バッテリー切断後、この黄色のワイヤーを1本ずつ慎重に切断し、分離します。

3. 離脱ポイントの作成

  • 救助隊員は、ドアを開けるために選んだ道具を使用するための離脱ポイントを作成します。これは、ドアを効果的に取り外すための初期アクセスポイントです。

離脱ポイント作成のためのツール

  • 油圧スプレッダー: これは最も一般的に使用されるツールで、ドアのヒンジやラッチを広げるために使用されます。
  • ハリガンツールまたはバール: 手動で操作するツールで、特に狭いスペースでの作業や、油圧スプレッダーが使用できない場合に便利です。

ドアの取り外し方向

  • 救助隊員は、事故の状況や車両の損傷、被害者の位置に応じて、ヒンジ側からかラッチ側からかを決定し、破壊を開始します。

この一連のステップを通じて、救助隊は車両のドアを安全に取り外し、効率的に被害者へのアクセスを確保することができます。重要なのは、各ステップを慎重に実行し、救助者や被害者の安全を常に最優先に考えることです。

ヒンジの破壊やドアの取り外しにおいて、フェンダークラッシュテクニックは救助活動で有効な手段です。このテクニックを使うことで、フェンダーとドアの間に隙間を作り、ドアヒンジにアクセスしやすくします。以下は、このプロセスを簡単に説明したものです。

フェンダークラッシュテクニックの手順

1. スプレッダーの準備

  • 救助者は油圧スプレッダーを取り、フロントフェンダーのホイールウェルに片方のアームを挿入します。もう一方のアームはフェンダーの上部に置きます。

2. フェンダーの変形

  • スプレッダーを閉じます。これによりフェンダーが外側に押し広げられ、つぶれることでドアとフェンダーの間に隙間が生まれます。

3. ヒンジへのアクセス

  • 隙間ができると、ヒンジが露出します。救助者はこの露出したヒンジを切断するか、さらに広げてドアを取り外すことができます。

実践時のポイント

  • 事前練習: このテクニックを実際に使う前に、事前に練習を重ねることが重要です。スプレッダーがフェンダーを正確につぶす技術を身につけることで、現場での作業効率が向上します。
  • スプレッダーの位置: スプレッダーの先端をフェンダーとボンネットの間のスペースにしっかりとはめ込むことで、スプレッダーが滑り落ちるのを防ぎます。
  • スプレッダーの角度: スプレッダーの後端を90度より少し高くすることで、アームがフェンダーにしっかりと噛み付き、滑るのを防ぎます。

これらの手順とポイントに注意を払うことで、救助隊は安全かつ効果的にフェンダークラッシュテクニックを実行し、救出活動をスムーズに進めることができます。

フェンダークラッシュテクニック


救助活動において、ドアが開かない場合には、スプレッダーを用いた「クラッシュダウン」技術が有効です。これは、ドアを物理的に開けるために窓の開口部にスプレッダーを使用し、ドアの上部と下部を車両のルーフレールやポストから離す方法です。以下に、このテクニックをわかりやすく説明します。

クラッシュダウンテクニックの手順

1. スプレッダーの配置

  • 救助者は、スプレッダーを窓の開口部に挿入します。目的は、ドアの上部をルーフレールやサイドポストから離すことです。

2. 垂直拡散

  • スプレッダーを慎重に操作して、ドアの上部と下部を車両の構造体から離します。スプレッダーを垂直に使い、ドアの端をルーフレールやポストから引き離します。

3. ドアの開放

  • この垂直拡散のアクションにより、ドアは強制的に開くことが可能になります。この方法では、スプレッダーの位置を変えたり、他の道具を使うことなく、効率的にドアを開けることができます。

このテクニックの利点

  • 効率性: スプレッダーの位置を変えることなく、迅速にドアを開けることができます。
  • 安全性: ドアを物理的に開ける過程で、救助者や被害者に追加的な危険を及ぼす可能性が低くなります。
  • 簡潔性: 複数の道具を用いる必要がなく、スプレッダー一つで作業を完了できます。

救助隊は、このクラッシュダウンテクニックを事前に練習し、実際の救助活動での使用に備えることが推奨されます。この方法を適切に実行することで、救助活動の効率と安全性を大幅に向上させることができます。

クラッシュダウンテクニック

車両のドアを取り外す方法は多岐にわたり、救助隊が状況に応じて選択する必要があります。ここで、主要なドア取り外し手法を簡潔に説明します。

1. ハリガンツールやバールの使用

  • 手順: ハリガンのフラット部分をドアのヒンジ側ではドアとフェンダーの間に、ラッチ側ではドアとポストの間に差し込みます。その後、ツールを上下に回転させて、ドアを開けるための開口部を作ります。
  • 用途: 手動操作が可能で、簡単に離脱ポイントを作成できます。

2. 油圧ジャッキの使用

  • 具体例: ヒドララムやラビットツールなどの油圧ジャッキを使用して、開口部を作成します。
  • 手順: スプレッダーの先端をドアとフェンダーやトランクの隙間に入れ、ハンドルを手動でポンピングして開口部を大きくします。
  • 用途: 車両のドアやボンネット、トランクの開放に適しており、家のドアに強制進入する際にも使用されます。

3. ボルト取り外し

  • 手順: 電動ラチェット、電動インパクトレンチ、または手動ソケットを使用して、ドアヒンジのボルトを取り外します。ヒンジを外し、ドアのラッチを操作してフックを外します。
  • 用途: 破壊を行わずにドアを取り外すことができるため、エアバッグ装備車に有効です。

4. 油圧スプレッダーでの開放

  • 手順: スプレッダーの先端をドアとBポストの継ぎ目に差し込み、スプレッダーを下向きと外向きに開いてドア・ラッチを外し、ドアを開けます。
  • 用途: 開放不能のドアを強制的に開けたり外したりすることができ、多くの救助隊に使用されています。

ドアコントロール

  • どの方法を使用する場合でも、ウェビング、ロープ、チェーンなどを使ってドアをコントロールし続けることが重要です。これにより、作業中の安全を確保し、不意の動きによる怪我を防ぎます。

これらの手法を適切に使用することで、救助隊は効率的かつ安全に車両からのドア取り外しを実行できます。

ヒドララム


ドアリムーブテクニック

工具を使用してのヒンジボルトの取り外し

車両のドアを取り外す際にヒンジボルトを外す方法は、特にエアバッグが装備されている車両で有効です。ここでは、その手順を簡単に説明します。

ステップ1: ドアヒンジへのアクセス

  • 最初に、ドアのヒンジ側にアクセスします。これには、ドアを可能な限り開けるか、または車両の側面にアクセスする必要があります。

ステップ2: ボルトの確認

  • ドアヒンジを固定しているボルトの種類とサイズを確認します。これには、ヒンジがどのように車両に取り付けられているかを理解することも含まれます。

ステップ3: 適切な工具の選択

  • 確認したボルトのサイズに合わせて、適切な工具を選びます。これには、通常、ソケットレンチやスパナが使用されます。

ステップ4: ボルトの取り外し

  • ボルトを緩めてヒンジを外します。ボルトが緩む場合は、完全に取り外してください。ボルトが固くて緩まない場合は、ボルトを折って外すことも検討してください。

ステップ5: ドアの取り外し

  • ドアレバー(ハンドル)を操作してドアを開きます。ドアのラッチが正常に機能する場合は、ドアを取り外します。ラッチが外れない場合は、ドアを適度に曲げて取り外しを試みてください。

このプロセスを通じて、ドアに損傷を最小限に抑えつつ、安全に取り外すことができます。特に、エアバッグの誤作動を避けるためには、ボルトを取り外す際の注意が必要です。また、ドアを取り外す作業は、救助隊員の安全を確保しつつ慎重に行う必要があります。

油圧スプレッダードア開放テクニック(後部ドア)

油圧スプレッダーを使用して車両の後部ドアを開放するテクニックは、緊急時に被害者へのアクセスを確保するための効果的な方法です。以下にその手順を簡潔に説明します。

ステップ1: 離脱ポイントの作成

  • ドアの端、特にラッチがある近くに、離脱ポイントを作ります。

ステップ2: スプレッダーの配置

  • スプレッダーの先端をドアロックの少し上に差し込み、ドアを外側に押すようにします。

ステップ3: ドアの制御

  • ストラップ、ロープ、チェーン、ウェビングなどを使用して、ドアが人にぶつかることがないように制御します。

ステップ4: ドアの開放

  • ドアが開くまでスプレッダーアームを開きます。ラッチを外すためには、スプレッダーの先端の位置を調整する必要があるかもしれません。ドア材が破れ始めたら、カッターを使用してラッチ部を切断します。

ステップ5: ヒンジへのアクセス

  • ヒンジにスプレッダー先端を挿入します。

ステップ6: ヒンジの破壊

  • 最初のヒンジを破壊するか、切断できるまでスプレッダーを開きます。

ステップ7: 二つ目のヒンジの処理

  • 一番上のヒンジが最初に破壊されたら、スプレッダーの位置を変えずに2つ目のヒンジも破壊します。不可能な場合は、スプレッダーの位置を調整し、再度開いて一番下のヒンジを破壊します。

ステップ8: ヒンジの破壊順

  • 下ヒンジが先に破壊されていた場合、スプレッダーを上ヒンジの上に置き、それが破壊できるまでスプレッダーを開きます。

ステップ9: ドアの取り外し

  • すべてのヒンジが破壊されたら、ドアを取り外します。

このテクニックを用いることで、救助隊は迅速かつ安全にドアを開放し、車両内部へのアクセスを確保することができます。操作中は常に周囲の安全に注意し、適切な保護装備の着用を忘れないでください。

参考動画

クラッシュダウンテクニック

フェンダークラッシュテクニック

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