ブリーチングの概要
ブリーチングとは、床や壁などの鉄筋コンクリートを破壊して開口部を作り出す救助技術を指します。大規模地震などによって建物が倒壊し、既存の開口部が失われた場合、要救助者への進入路を確保するために必要不可欠な手法です。
この技術は特に都市型災害救助において重要視されており、消防やUSAR(Urban Search and Rescue)チームによって用いられています。

ブリーチングの種類
ダーティーブリーチング
開口部設置予定場所に要救助者がいない場合に行う方法です。迅速さを重視し、コンクリートや鉄筋を効率よく破壊して進入路を作成します。災害現場で時間との戦いとなる場面で有効です。
参考ページ:バーチカルダーティーブリーチングの手順と指揮官が意識すべき安全対策を解説。迅速な救助を実現するためのポイントや適切なチームマネジメントを詳しく紹介します。
クリーンブリーチング
開口部付近に要救助者がいる場合に用いられる方法です。切断片が落下して要救助者に危険が及ばないよう、空間をクリーンな状態に保ちながら作業を行います。床面で実施する場合は、コンクリートの落下防止措置が不可欠です。

ダーティーブリーチング(要救助者が近傍にいない前提)
目的と前提
- 迅速に開口部を作り進入・搬出経路を確保する。
- 要救助者が開口予定位置近傍にいないことを確認済み。
1. 準備(サイズアップ/安全)
- PPE:ヘルメット、アイプロ、耳栓、P3相当マスク、耐切創手袋、安全靴。
- 環境:送排風機で正圧→負圧を意識し粉塵を外へ。火花着火物・ガスを排除。
- 退路:進入路と代替退路を設定。消火器・流水確保。
- 指揮:担当割当(カット手、ドリル手、換気・養生、見張り、安全管理、搬送)。
- 内部確認:
- サーチングホール(φ16〜20mm、貫通1〜数孔)で空隙・配筋・空間を把握。
- ガス検知/酸素濃度、厚さ計測(メジャー・針金探り)。
- 配線・配管・PC鋼材等の切断禁止要素がないか確認。
2. マーキング
- サーチングホール中心に一辺約90cmの正三角形をチョークで描く。
- 辺と角に“逃げ線”(短い補助ライン)を追加すると割りやすい。
- 梁・柱・スラブ端からの離隔を確保(構造体を損なわない位置)。
3. 切り込み(エンジンカッター)
- 乾式なら粉塵管理・湿式なら漏電対策。
- **1回で深追いしない。**浅く入れて→2〜3回で徐々に深く。
- 角部は止め切り(角で刃を回さず、外側から別カットでつなぐ)。
- 火花方向は人・可燃物・要救助者側を避ける。
4. 斫り(ハンマードリル+鉄ハンマー)
- マーキング内の弱化帯を重点にチッピング。
- 鉄筋が露出するまでドリル→ハンマーでコンクリートを割り、鉄筋だけの状態へ。
- 角から中心へ、応力を逃がしながら破砕する。
5. 鉄筋処理(クリッパー/油圧カッター)
- 支えの残る位置を最後に切る(保持→落下防止)。
- 切断後の鉄筋端部は内側へ折り曲げ、テープやホースで養生して鋭縁をなくす。
6. 開口の取り外し
- パネル状に残るコンクリートは外側からこじり、下支えしつつ撤去。
- 落下の可能性がある場合はロープで係留してコントロール。
7. 仕上げ・通行化
- 縁のバリをチッピングして搬送幅を確保。
- 養生板・コンパネで開口縁を保護、鋭利部ゼロ化。
- 粉塵回収、視認性向上(蛍光テープ、矢印マーキング)。
- 最終安全点検(上・下・側面のはらみ/二次崩落の兆候確認)。
よくあるNGと対処
- 角を一気に切る → 刃が跳ね、クラック予測不能。止め切りで分割。
- 配筋想定せず切る → 刃損耗・跳ね。サーチングホールと探りを徹底。
- 換気不足 → 視界不良・健康被害。正圧送気+局所排気を常に維持。
時短のコツ(並行作業)
- 切削中に別員が弱化用の穿孔列を先行。
- 換気・養生・機材交換は別ラインで同時進行。
- 消耗品(刃・ビット・燃料・水)を前倒し補給。

クリーンブリーチング(要救助者が近傍にいる前提)
目的と前提
- 要救助者へ落下物・粉塵・火花の影響をゼロ化しつつ開口を作る。
- 必要に応じ要救助者上に防護(ブランケット、コンパネ、簡易シェルター、正圧エア)。
1. 準備(保護と換気を先行)
- 要救助者の気道保護(マスク/湿潤タオル)、頭上防護、アイコンタクト/声かけ。
- 正圧送気で粉塵を救助者から遠ざけ、排気は反対側へ。
- 火花・粉塵の遮蔽カーテン(耐火シート)をセット。
2. マーキング
- ダーティーと同形だが、予定開口線の内側10cmにオフセットして描く。
- 目的:切断片が**要救助者側へ落下しない“受け代”**を確保。
- 追加の係留点(既存鉄筋やアンカー)位置を決定。
3. 落下防止システムの構築(床・壁で変える)
- 床面:
- サーチングホールの露出鉄筋や穿孔部にロープを結着し、開口片を吊る。
- 下方に担架/コンパネ+吸収材で受け台を設置。
- 壁面:
- 上側鉄筋を最後に残す前提で下・側を先行切断。
- 開口片を2点以上で係留し、片側からゆっくり倒す。
4. 切り込み(火花・粉塵の制御優先)
- 火花は遮蔽方向へ、要救助者側は濡れタオルや難燃シートで覆う。
- 刃は浅入れ→段階切り。救助者側に刃先を抜かないよう角で止め切り。
5. 斫り(静穏・低衝撃を意識)
- 救助者側へ振動・飛散が行かないよう、小刻みのチッピング。
- 弱化孔を密にして、ハンマー強打を減らす。
- 鉄筋露出後は切断前に端部を結束(タイング)して飛び出し防止。
6. 鉄筋処理と開口確保
- 上→側→下の順で切断(壁)。最後に保持が残るよう設計。
- 切断片は係留ロープで荷重管理し、合図でゆっくりコントロール。
- 取り外し後、要救助者に落下物ゼロを確認してから養生。
7. 仕上げ・通行化
- 縁の面取りと鋭縁養生(ホース・テープ)。
- 粉塵除去→バキューム回収(乾式清掃は最小限)。
- 開口周囲に緩衝材、搬送ラインを視覚化(テープ・矢印)。
追加の安全ポイント
- 会話継続:要救助者の反応・症状を常に把握。
- 騒音管理:交代で耳栓の適正装着確認、声かけは合図+タッチで補助。
- 熱管理:切削熱で煙・臭気が出たら直ちに送風増強・冷却。
よくあるNGと対処
- 救助者真上での無遮蔽切断 → 必ず遮蔽+係留+受け台を先行。
- 粉塵の逆流 → 送風方向を救助者→外部に統一、短気道を作る。
- 最後の一カ所を勢いで破断 → 係留状態で合図し、ゆっくり解放。

各ブリーチング写真とイラストでの説明
準備
個人装備品(PPE)の着装 ※耳栓 マスクは確実に着装
退路の確保
送排風機等により換気できるようにする
内部確認
ドリルを使用しサーチングホールを設定する

内部状況及び要救助者が開口部設置付近にいないことを確認する
ガス検知器で環境測定し、メジャーを使用して壁厚・床厚の測定を行う
マーキング
サーチングホールを中心に1辺約90cmの三角形をチョークやペンで書く

マーキングに沿ってエンジンカッターで切り込みを入れる
ダーティーブリーチング1

上のようなマーキングを書き、エンジンカッターで切り込みを入れる


水色部分をドリルで鉄筋が見えるまで斫る

鉄筋を避けて、ドリルでコンクリートの強度を下げるために穴を開ける

鉄ハンマーを使用してコンクリートを叩き割り、鉄筋だけの状態にする
エンジンカッター等を使用して鉄筋をカットする
カットした鉄筋を鉄ハンマーで曲げた後、テープ等で養生

ダーティーブリーチング2

上のようなマーキングを書き、エンジンカッターで切り込みを入れる


水色部分をドリルで鉄筋が見えるまで斫る

鉄筋を避けて、ドリルでコンクリートの強度を下げるために穴を開ける

鉄ハンマーを使用してコンクリートを叩き割り、鉄筋だけの状態にする
エンジンカッター等を使用して鉄筋をカットする
カットした鉄筋を鉄ハンマーで曲げた後、テープ等で養生
クリーンブリーチング

上のようなマーキングを内側10cmの位置に書き、エンジンカッターで切り込みを入れる

水色部分をドリルで鉄筋が見えるまで斫る

床面でのブリーチング場合はコンクリートの落下防止が必要となる
棒等にロープを付け、サーチングホールの鉄筋に括り付ける
再度斫り作業やドリルで穴をあける作業を実施し、溝内を鉄筋だけの状態にする

クリッパー等を使用して鉄筋をカットする
カットした鉄筋を鉄ハンマーで曲げた後、テープ等で養生
これらは、一つの手技ですのであくまでも参考にしてください。
鉄筋コンクリート壁の構造
鉄筋コンクリート壁は、外装から内部まで複数の層で構成されており、それぞれが異なる役割を持っています。以下に主要な構成要素を解説します。
1. 仕上げ材(約6mm)
壁の最表面を覆う仕上げ層です。塗装や壁紙の下地として施工され、室内の美観を整えるとともに、コンクリートとの間の空気層を遮断します。これにより結露や劣化を防止する役割も果たします。
2. クロス(壁紙)
室内側にはビニールクロスやノンホルマリン系クロスが用いられます。これにより人体への安全性と耐久性が確保され、仕上がりの快適性を向上させます。
3. 断熱材(約55mm)
壁内部にはグラスウールなどの断熱材が充填されます。密度(10kg/m³)や厚さによって断熱性能が左右され、外気の熱や冷気を遮断する効果があります。断熱材により省エネ性や結露防止も実現されます。
4. コンクリート(約180mm)
鉄筋コンクリート造の主要構造体部分です。木造住宅の約1.5倍の厚みを持つ堅固な壁で、耐震性・耐火性・遮音性に優れています。火災時には約2時間程度の耐火性能を発揮します。
5. 構造用鉄筋
コンクリート内部には縦横に鉄筋が格子状に配置されています。鉄筋はコンクリートの引張強度を補い、建物全体の強度を高めます。鉄筋の配置間隔や径は構造計算に基づき設計され、地震や荷重に対する耐力を担保しています。

ブリーチングに使用されるツールの詳細

ブリーチング作業は、さまざまな専用ツールを用いて実施されます。以下に代表的なツールとその役割をまとめます。
- エンジンカッター
- 主にコンクリートや鉄筋を切断するために使用されます。エンジンカッターは非常に強力で、迅速な作業を可能にしますが、扱いには十分な注意が必要です。
- ハンマードリル
- ドリルは、コンクリートの硬度を下げたり、鉄筋にアクセスするためのサーチングホール(調査用穴)を設定するために使用されます。
- 鉄ハンマー
- 鉄ハンマーは、コンクリートを破壊し、鉄筋を露出させるために用いられます。ハンマードリルでコンクリートを削った後、鉄ハンマーでコンクリートをさらに破壊していきます。
- クリッパー
- 鉄筋を切断するための工具です。強力な鋼製の刃で鉄筋を効率的にカットすることができます。
- ガス検知器
- 環境の安全確認のため、特に密閉された空間ではガス漏れのリスクが高まります。ガス検知器を用いることで、酸欠や有害ガスの存在を確認し、作業者の安全を確保します。
ブリーチング作業時の安全管理
ブリーチング作業は非常に危険な場合が多く、以下の安全対策が必要です。
- 個人保護具(PPE)の使用
- 耳栓、保護マスク、ヘルメット、防塵ゴーグルなどの着用は必須です。特に、コンクリートを切断する際の粉塵や騒音は作業者の健康に影響を与えるため、しっかりとした装備が重要です。
- 換気の確保
- 特に閉鎖空間では換気が重要です。送排風機を使って新鮮な空気を確保することが推奨されます。
- 退路の確保
- 緊急時に迅速に避難できるよう、作業前に退路を明確にしておくことが重要です。
ブリーチング時の環境管理
作業現場の状況をしっかりと確認し、慎重に行動することが求められます。特に、以下の点を確認して作業を進めます。
- 要救助者の位置確認
- サーチングホールやマーキングの設定時には、必ず要救助者が近くにいないかを確認します。これにより、作業中の振動や落下物が要救助者に影響を与えないようにします。
- 環境測定
- ガス検知器やメジャーを使って、壁や床の厚さ、周囲の空気環境を確認し、適切な対応を取ります。










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