転覆とは車両が裏返った状態をいう。
転覆事故は、車両が不安定であることと、活動及び要救助者への接触が困難になる。
救出前に安定化を最優先!

活動内容
【救助隊 活動内容】
- 周囲の安全確認
- パイロン等を使用し警戒区域作成
- 事故車両の確認 ※事故車両何台でオイル漏れ等ないか
- 負傷した乗員(要救助者)の確認 ※要救助者何人いて傷病程度は?
- 車両固定 輪留め ステップチョーク クリブ エアマット等使用し確実に固定
車両前後は可動しやすいためフロントとリアは特にきちんと安定化させる。
セダンやワゴン等の車は安定が悪いので、レスキューサポートやパワーショアを使用し安定化させるのも有効

上の写真のように、転覆車両はフロントが下がり、リアが上がることが多い。それはエンジンがフロントにあるため、車両前部が重くなるからです。
この場合、リアが可動しやすため車両後部の安定化を確実に実施する。
バックドアから救出する場合、 レスキューサポート等の位置は救出に支障をきたさないよう考慮する
最終的に下の図のような安定化の方法が最良です


- ドア開放扉の確認
- 隊員1名進入し要救助者接触、エンジン停止 可能であればエアバック防止
- 要救助者へ頸椎保護 ネックカラー装着 ※必要であれば酸素投与・防寒等
※要救助者の体勢が悪い場合、数人で体を仰臥位にする

- 救出方法の確認
車種や破損程度にもよるが、ワンボックス転覆の場合バックドアからが一番救助しやすい
リア側からの救出は、座席をフラットにする
スプレッターやレシプロソーを使用しドアを開放する場合、ガラス等が飛散するため要救助者を毛布等で保護は必須
参考ページ:交通事故の際、ドアの施錠や変形によってドアが開かないことがあります。そういった場合、救助隊は要救助者への接触や救出のために破壊活動をしなければなりません。ここでは車両破壊活動について記載します。
- バックボード差し込み 救出作業実施
- 全脊柱固定実施
- 「輸液の準備」「酸素投与」「呼吸管理」「止血」「骨折の固定」などの必要な救急処置を行う
- 救急車内収容
転覆した車から人を助けるときは、まず車の安定を確保するのが大事だよ。周りの安全を確認して、パイロンとかで警戒エリアを作るところから始めるんだ。それから事故車両の数やオイル漏れの有無を確認して、負傷者の人数やケガの状態もチェック。車を固定するには、輪留めやステップチョーク、エアマットを使って、フロントとリアを特に安定させるよ。セダンやワゴン車は安定しづらいから、レスキューサポートも有効だね。転覆車はエンジンの重さでフロントが下がりやすいから、リアをしっかり固定するのもポイント。ドアが開かない場合は、スプレッターやレシプロソーで開けるけど、ガラスが飛び散るから毛布で負傷者を守るよ。救出するときは、バックドアから入るとスムーズで、座席をフラットにするのがいい場合もある。最後はバックボードで負傷者を搬出し、全脊柱固定と救急処置をしてから救急車に収容する流れだよ。

車内拡張方法
車両の変形が激しい場合、要救助者がステアリングやダッシュボードに挟まれて動けないことがあります。その際、車内の拡張が必要となります。
・車両の安定化を実施する

・車両両側のBピラーとCピラーを切断

・運転席と助手席上部のフレームをカット

・ドアヒンジからドアを開放し、Aピラーを切断

・ラムシリンダーで拡張

参考動画
ロールオーバー技術
横転で運転手が負傷し、閉じ込められた場合、シートベルトで吊り下げられることがあります。 その際にホースを使用することで、患者を迅速かつ安全にバックボードに降ろすことができます。

参考ページ:SCI(脊髄損傷)の最も多い原因は自動車事故で、これは症例の40%強を占めます。ここではスパインボード(バックボード)による全身固定を解説します
転覆交通事故のチェックリスト
以下は転覆交通救助のためのチェックリストです。救助隊が効率的かつ安全に活動できるように、必要な手順をまとめています。
項目 | 詳細説明 |
---|---|
周囲の安全確認 | パイロンなどを使用し、警戒区域を確保する。 |
事故車両の確認 | 事故車両の台数やオイル漏れがないか確認する。 |
要救助者の確認 | 要救助者の人数と負傷程度を確認する。 |
車両の安定化 | 車両を輪止め、ステップチョーク、クリブ、エアマットなどで確実に固定する。特にフロントとリアを重点的に固定。 |
救助に適した安定化 | レスキューサポートやパワーショアを使用して車両の安定を確保する。 |
バックドア救出の準備 | バックドアから救出する場合、レスキューサポートの位置が救出に影響を与えないようにする。 |
ドア開放の確認 | ドアが開放できるか確認し、要救助者に接触。エンジン停止やエアバック防止が可能か確認する。 |
頸椎保護 | 要救助者にネックカラーを装着し、頸椎保護を実施。必要に応じて酸素投与や防寒対策を実施。 |
救出方法の確認 | 車両のタイプや破損状況に応じて、最適な救出方法を確認。リア側からの救出が一般的。 |
車両拡張の準備 | スプレッターやレシプロソーを使用してドアを開放する際、飛散するガラスから要救助者を保護。 |
バックボード差し込み | 全脊柱固定のため、バックボードを使用して要救助者を救出する。 |
必要な救急処置 | 輸液、酸素投与、呼吸管理、止血、骨折固定などの救急処置を実施する。 |
車両拡張の実施 | 必要に応じて、車内のステアリングやダッシュボードからの解放のため、車両を拡張する。 |
フレーム切断・拡張作業 | Bピラー、Cピラー、ドアヒンジ、Aピラーを切断し、ラムシリンダーを使用して車両内の空間を拡張する。 |
ロールオーバー技術の使用 | シートベルトで吊り下げられている要救助者を安全にバックボードに降ろすため、ホースを使用。 |
このチェックリストは、横転車両での救助作業を安全かつ効率的に行うためのガイドラインとして活用してください。
追加情報

転覆交通事故における救助活動において、さらに情報を提供します。これらの技術や知識は、特定のシナリオや特別な装備を使用する際に役立つでしょう。
1. 車両の動的荷重分布と安定化への影響
車両が転覆する際、動的荷重分布が変化し、特にエンジンの重量や重心が車両の動きに影響を与えます。エンジンが前部にある車両では、フロントエンドが重く、リアが軽くなるため、救助活動中に車両の後部が突然持ち上がったり、横に傾くリスクが高くなります。このため、リアの安定化は特に重要です。具体的には、リアに追加のウェッジ(木製または金属製)やスティッキィージャックスのような高荷重耐性の安定化ツールを用いることで、後部が動かないように固定します。
また、車両が転覆している場合でも横方向の荷重移動を考慮することが必要です。特に斜面で転覆した車両では、車両が横転後もさらなる傾斜により動く可能性があるため、荷重分散を考慮して前後左右からの安定化を行います。このとき、多方向からのストラットやパワーショアの使用が推奨され、斜面に対して90度に安定化ツールを設置するのが理想です。
2. エアバッグシステムの解除と高圧ガスの処理
現代の車両にはエアバッグが複数搭載されており、二次展開のリスクが救助活動中に問題となります。転覆車両では、エアバッグがまだ展開していない場合、二次的に展開することを防ぐために、エアバッグシステムの電源を遮断することが重要です。
しかし、単にバッテリーの端子を外すだけでは、エアバッグの作動を完全に防止することができません。エアバッグ展開のトリガーとなるセンサーは、車両のモジュール内にキャパシタ(蓄電装置)を備えており、バッテリーを切断しても数分間は作動可能な状態が続きます。救助隊員は、このキャパシタの電力が消耗するまで待機する必要があり、通常は約3~5分が推奨されます。
3. ガラス除去の技術(複層ガラスとラミネートガラス)
車両の窓ガラスには、サイドウィンドウが通常の強化ガラス(割れると小さな破片になる)であるのに対し、フロントウィンドウはラミネートガラス(中間にプラスチックフィルムが挟まれ、割れても形を保つ)である場合がほとんどです。
特にラミネートガラスの除去には、特別な技術とツールが必要です。通常のガラスブレーカーでは割ることが難しいため、レシプロソーやウインドウカッターの使用が推奨されます。レシプロソーを使用する場合、ガラスの端に沿ってゆっくりとカットすることで、フィルムが引っかからずに切断できます。
また、サイドウィンドウが割れる際に、破片が飛散しやすいため、ガラス飛散防止フィルムを事前に貼り付けてから割る技術もあります。このフィルムは、ガラス破片を捉え、要救助者に飛び散るリスクを減らします。
4. 車両内の特殊燃料(LPG、CNG、EVバッテリー)への対処
特に近年の車両には、ガソリンやディーゼルエンジン以外に、LPG(液化石油ガス)、CNG(圧縮天然ガス)、またはEV(電気自動車)のバッテリーが搭載されていることがあります。これらの車両に対する救助活動では、さらに高度な知識と対策が必要です。
LPGおよびCNG車両:
LPGおよびCNG車両には高圧ガスタンクが車両下部またはリアに搭載されています。このガスタンクが損傷すると、漏れたガスが火災や爆発の原因となる可能性があるため、常にガス漏れを確認します。ガス漏れが確認された場合は、タンクの手動シャットオフバルブを探し出し、閉じることが最優先です。また、救助中の火花や静電気により引火する可能性があるため、電動工具の使用には細心の注意を払います。

EV車両:
電気自動車やハイブリッド車では、高電圧バッテリーが問題となります。転覆状態であれば、バッテリーが損傷している可能性があり、感電や火災のリスクが増加します。救助活動中は、車両の高電圧部分(オレンジ色のケーブルなど)に触れないようにし、絶縁工具を使用することが推奨されます。
加えて、電気自動車のバッテリーからの熱暴走(サーマルランウェイ)が発生するリスクも考慮し、バッテリーが過熱している兆候がないか(煙や異臭など)を常に監視します。過熱が確認された場合、大量の水で冷却するか、車両全体を隔離して、安全が確認できるまで接近しないようにします。

5. カウンターバランス技術
転覆車両が救助中に傾きやすい場合、カウンターバランス技術を使用して、車両の重量分布を調整し安定化を図ることができます。これは、車両の片側におもりや追加のウェッジを配置し、重心を再分配する技術です。
特に、レスキュージャックスを使用する際、車両の反対側に重量をかけ、車両が救助作業中に逆方向に傾かないようにすることができます。このカウンターバランス技術は、傾斜地や不安定な地形での救助活動で非常に有効です。
コメント