ロープ
ロープの種類
近年はカーンマントル構造のスタティックロープが消防で多く採用され、従来の三つ打ちロープが救助現場から消滅しつつあります。
スタティックロープと三つ打ちロープの大きな違いはロープの伸び率です。
NFPA基準
・スタティックロープ…伸び率1%~6%未満(@最小破断強度の10%負荷)
・ローストレッチロープ…伸び率6%~10%(@最小破断強度の10%負荷)
この2パターンに分かれています。
ライフセーフティーロープの基準は
ゼネラルユース 刻印は”G”
・最小破断強度は40kN以上
・伸び率は1%~10%(@最小破断強度の10%負荷時)
・直径は11mm~16mm
テクニカルユース 刻印は”T”
・最小破断強度は20kN以上
・伸び率は1%~10%(@最小破断強度の10%負荷時)
・直径は9.5mm~12.5mm
JIS(日本工業規格)基準
JISL2704三つ打ちナイロンロープ…伸び率35~45%未満
三つ打ちロープのデメリットは伸び率の高さによる効率の悪さです。伸び率の高いロープは持ち上げにもロープ登高にも不向きです。 そしてもっと大きな問題は三つ打ちロープ単体の性能の問題ではなく、ロープレスキュー用の資機材の多くが海外製であるために三つ打ちロープで使用することが出来ないことです。 ロープレスキューで使われる主な下降器、制動器、アッセンダー等は全て、EN規格のスタティックロープのみに対応しており、三つ打ちロープには対応していません。
スタティックロープのメリット
スタティックロープは適切な資器材を使うことで労力を減らし、2人分の荷重を支え、落下の衝撃も安全に受け止めます。例えば、倍力を使って、2人で2人を引き上げたり、仮固定して姿勢を変えたり、とっさに手を離すこともできます。メインの支持物が崩壊したりして隊員が転落しても、安全に確実に静止できます。隊員が宙吊りになっている間、他の隊員が動けなくなることもありません。三つ打ちでできることはより簡単安全に、三つ打ちでできないこともできるのがメリットです。
カラビナ
カラビナは、従来の三つ打ち救助でも使用してきた支点設定や自己確保などに使用する消防士なら馴染み深い器具です。
本来は、銃をベルトに下げるための器具であり、Karabinerhaken = Karabiner(カービン銃)+ Haken(フック)というのが語源。
カラビナの名称
スパイン:直訳すると「脊柱」の意味で、この方向が最も強度が高い
ゲート:カラビナの開閉する部分
ノーズ:ゲートとボディが接する部分
カラビナの種類
左から
オーバル型:カラビナの初期の形状です。文字通り楕円の形をしております。
真下に荷重がかかる場合や、1対1で荷重がかかる場合にはオーバル型が良いです。
オフセットD型:衝撃に強く、強度を高めて軽量化しやるいのでカラビナの主流モデルです。一般的に良くみるモデル。
ロープなどの荷重を1か所に集めるタイプとなります。
HMS型:上下で幅が大きく異なりゲートが大きく開き、ロープを出し入れしやすいタイプです。洋ナシのような形をしているカラビナです。
強度
カラビナの強度は、本体に直接記載。上記画像の場合【kN⇔23 ⇕8】と書かれていて、①の方向に23キロニュートン(約2トン)、②の方向に8キロニュートン(約0.8トン)の強度があるということが読み取れます。
その隣にかかれているマークは、ゲートが開いた状態での強度を示しています。上記画像の場合は8キロニュートン(約0.8トン)で、ゲートが閉まっている場合の23キロニュートンの約1/3となってしまうのです。
その為、大きな荷重がかかる状況ではロック機構付きのカラビナを使用することが一般的。
禁止行為
オープンゲート
前述のとおり、カラビナのゲートが開いていれば、破断する可能性がある
横荷重
横荷重も同じく破断強度が落ちる
カラビナ同士の連結
ひねる力がかかったときに破断する可能性がある
トリプルアクセス
カラビナは斜めの力に弱い
テープスリング
スリングは強度に優れた万能紐で、カラビナとセットで使うケースが一般的です。
スリングの使い道は、あげればキリがありません。 使い方はアイデア次第で無限大です。
スリングの素材
テープスリングの素材は、ナイロン製とダイニーマ製の2つです。
素材については、それぞれに特徴があります。
ナイロン素材
ダイニーマーに比べ、大きく重いナイロン製スリングですが、握りやすさや熱に強い面があります。
ダイニーマーより若干衝撃吸収に優れるので支点で利用することに向いています。
ダイニーマー素材
ナイロンに比べ、軽く強度もあり携帯性に優れています。
ただし、熱に弱い(摩擦熱)、細くてツルツルしているので掴みにくい、細いので精神的な不安など、ナイロンより優位になれない部分もあります。
テープスリングを使用した支点作成例
2バイト 22kN→44kN
4バイト 22kN→88kN
1ラウンドターン 22kN→44kN
ガースヒッチ 22kN→16kN
注意点
テープスリングは縫製部分の強度が一番弱く、破断強度は縫製部分の強度です。使用する際は、縫製部分が支持物やカラビナに干渉しないようにしましょう。
- 繊維への砂の混入している
- 紫外線で劣化している(経年劣化)
- 荷重がかかった時に鋭角に接している
上記の例は、通常の状態に比べて破損しやすいです。メンテナンスをしっかりやりましょう。
プルージックコード
プルージックコードは、ロープに巻き付け、負荷がかかると締め付けられ、解放されると緩む資器材です。
救助活動では、ロードリリースデバイス、プーリーシステムのラチェット、アンカーシステム、タンデムプルジクビレイとして機能します。これらの汎用性の高いコードは、懸垂下降のバックアップ、固定ラインの安全テザー、およびロープでの移動中にも使用されます。
強度
コードの引張強度は、メーカーや直径によって大きく異なりますが、一般に、7〜10mmコードの場合は6.0〜7.0kNの範囲になります。
1.0kNを超えると、巻き付いたプルージックコードがロープを滑る可能性があります。
タンデムプルジクビレイ
タンデムプルジクビレイは、 救助活動時に下げるとき使用します、適切な作業をすることにより、プルージックがロープをつかみ、救助者が 手を傷つけることはありません。指の巻き付けによる負傷を回避するため、常に救助者の親指が ロープの外側にあり、上を向いている必要があります。
レスキュープーリー
レスキュー・プーリーには回転するサイド・プレートがあり、シーブ(車輪)をベアリングに取り付けた構造になっています。
シーブ(車輪)がベアリングやブッシュに取り付けられています。救助用プーリーは、ブッシングを使用したものよりも優れている。
プーリーを方向指示器として使用する場合は、プーリー・アンカーにかかる力がロープにかかる力の2倍になることを念頭に置いてください。
プーリーのシーブ(ロープが横たわる部分)のトレッド径は重要です。
効率を考えると、最適なレスキュープーリーのサイズは、トレッドの直径がロープの直径の少なくとも3倍以上でなければならない。
メーカーによっては、外径(OD)を明記している場合もあるが、これは誤解を招く恐れがあるので注意すること。
スイベル
スイベルは密閉構造で、ベアリングのねじれを防ぐためにロープ救助に使用できます。
吊り荷が回転しているときだけでなく、危険なトルクを軽減するために接続ポイントを反対側に置くことができます。
ウエビング
ウェビングは、安全なアンカー・タイを作ることができる汎用性の高さから、救助現場で定期的に使用されています。
チューブラー・ウェビングは、 中が空洞のチューブ状になっているため、見分けやすいです。
このウェビングは、簡単に結び目を作ることができ、扱いやすく、色も豊富です。
レスキュー隊が使用しているウェビングは、25 mm(1インチ)のチューブ状ナイロン・ウェビング (ニードル織機構造)です。
このウェビングは軍用仕様に 従って製造されており、最低17.93 kNの破断強度が要求されています。
チューブラー・ウェビングは、シャトル織機またはニードル織機での構造があります。
これらの呼称は、ウェビングそのものというよりも、ウェビングを織る機械の種類を指しています。
シャトル織機
ウェビングは、「クリティカルユース」を要求される軍用仕様に対応するためクラス1、つまりシャトル織機で織られていました。
製造工程では、「フィルヤーン」のスプールがシャトルで端から端まで運ばれ(ミシンのボビンホルダーに似ている)充填糸は「らせん織り」を形成します。
長年にわたりシャトル織機構造だけが軍の仕様を満たしていました。
ニードル織機
技術の向上により、シャトルより効率的でコスト効率の高いニードル・ルーム製法が開発されました。
ニードル織機は、通常湾曲した「針」によって充填糸を前後に運びます。
ニードルの最初の工程では、平らなナイロンの織物が作られ、端に沿ってチェーンステッチで仕上げる。
このチェーンステッチは、ほつれる可能性があるため、重要な用途や生命維持には適さないことが判明した。さらに改良が加えられ、クラス1Aウェビングは、ロックステッチを施したエッジを採用し、軍用に求められる仕様を満たしています。
ニードルルーム・ウェビングは現在、より一般的なものとなっている。
この製織工程の効率性と信頼性により、MilW-5625K.38 に適合しています。
フラット・ウェビングはより太く、より強く、摩耗に強いため、苛酷で摩耗しやすい環境、テクニカル・レスキューでの使用に適しています、
フラット・ウェビングはナイロンを多く含むためチューブラーよりも重量が重くなり、扱いにくくなります。
ウェビング製品
ウェビング製品アンカーストラップ、デイジーチェーン、エトリアはすべて、艤装品に使用される縫製ウェビング製品です。
デイジーチェーンとは、ウェビングの長さを複数のポケットで構成したもので、ポケットはウェビングをバータックで縫い付けたり、織り込んだりすることで作られます。
イェーツギアが製造する標準的なデイジーチェーンは、11/16インチナイロン・スーパーテープ・チューブラー・ウェビングで構成されています。
定格強度は22.2kN(5000lbf)、個々のポケットの強度は5.3 kN (1200 lbf) です。
OMNI-SlingTMは、レスキュー・システムズ社製のリギング・ポケット付きナイロン製デイジーチェーンです。これは、2インチの長さのスロットを1インチのしっかりしたウェビングで区切った構造になっています。
全体の破断強度は44 kN(10,000 Ibf)。スロットの破断強度は22kN(5,000Ibf)。このスタイルのスリングに張力がかかると、個々のポケットはカラビナでクリップするのが難しい場合があります。
縫い付けテザーには限界があり、危険な誤用もあり得ます。
サザン・ウィービング・カンパニー・レスキューは、「デイジー・チェーンとその他のランヤード」と題した比較分析を作成しました。
ランヤードをアンカーに取り付ける手段として使用する場合、ランヤードから不必要なるみをなくすことで、潜在的な墜落要因を低く抑えることができる。潜在的な落下要因を低く保つことが重要です。
伸度が非常に低いため、HMPE(ダイニーマ® またはスペクトラ®) のランナーは、弛みが生じない用途にのみ使用すること。
アセンダー
アセンダー(ascender)とは、登高器のことでロープにセットすれば一方向にしか動きません。
メカニカルアセンダー
救助者が短時間で登るためのリバーシブル・ホールシステムではメカニカルアセンダーはプルージックよりも優れています。
柄付きアセンダーは、ロープに簡単に着脱できるように設計されています。
テクニカルアセンダーはメーカーによる定格は一人用のみです。
いくつかの市販メーカーががあり、ハンドル付きアセンダーには、ペツル・アセンション(Petzl Ascension)、CMIUltrascender、ISC Ultrasafe Hand Ascenderなどがあります。
非ハンドル型には、CMIロープウォーカー、ギブスアセンダー、ペッツルアセンダーなどがあります。
ペツル・レスキューアセンダー(Petzl Rescucender)
レスキューアセンダーはメカニカルロープグラブデバイスでロックエグゾティカが独自に開発しました。
ロープとの接触面積を増やし、衝撃でロープが破損する可能性を大幅に減らします。
レスキュセンダーは、直径9mm~13mmのロープに対応します。
メーカーが推奨する最小の直径は10mm です。
リギング・プレート
リギング・プレートを使用することで、アンカー・システムの中心点を整理することができます。
これにより、一箇所で複数の作業や接続を行うことが簡素化され、ラインを整然と保つことができる。
ロック・エキゾチカは、1990年頃から、広く利用されるようになった最初のリギング・プレートで、CNC(コンピューター数値制御)フライス加工で、エッジは丸みを帯びています。
現在では、数多くのサイズのリギング・プレートが市販されており、様々なニーズに対応するため、多数の接続ポイント構成されている。
使用する場合は、1つの穴の安全使用荷重を超えないようにしてください。特に張力が解放され、
その後再び張力がかかる場合、カラビナがリギング・プレートを破損する可能性がありま
す。
この危険な出来事に注意し、使用中はすべてのリギングに目を配りってください。
CMCクラッチ
クラッチは、一方向にのみ回転するプーリーとディセンダーが内蔵されており、一台でロープシステムの上げ下ろしを機材の切り替えをすることなく行うことができます。
クラッチをアンカーに取り付けたままでロープの脱着することができます。
ロープをセットして、ロープの屈曲抵抗とコントロールハンドルの操作で速度を調整しながら下ろすことができ、手を離したらロープは即時に停止します。
下ろす際に操作するコントロールハンドルを握り込んだ場合は、アンチパニックブレーキが作動し、ロープは停止します。
クラッチ 11mm は、リードクライマーをビレイする際に使用されるダイナミックロープにも対応しています。
ダブルクラッチ・降下システム
救助者の数が限られている場合は、ダブルクラッチシステムを使用して降下することができます。クラッチは、一人の隊員が操作できます。二人分の荷重用に設計されたバックアップ装置とショックアブソーバーが、それぞれのクラッチバケットにカラビナで接続し、クラッチのテンション側に取り付けます。一人の隊員が両方のクラッチ・ハンドルと両方のロープ・テールをコントロールする。
このテクニックでは2人で操作する場合の負荷の調整問題がなくなる。2人で操作した場合、負荷を均等にバランスよく降下させることが難しい。
TTRS : ツイン テンション ロープ システム
メインとビレイに荷重を 50%ずつ分担し、いづれか破綻した時に残りのラインに与える衝
撃とロープの伸びを少なく抑えることができる。
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